テストに備えて【火.ヨウスケ】
【火曜日】
==ヨウスケ==
「おっす」
「お、今日はぎりぎりじゃないんだな」
「うるせー」
挨拶まじりに軽口をたたき合い、その友達の隣の席に座る。堕落した俺にとっては、昼からの講義でもいつもいささか余裕がない。
「今日はテスト前最後の講義だから、頭から余裕を持って聞かないとと思ってよ」
「いつも余裕を持って聞いとけよ」
「単位をとれれば俺にとっては問題ねえ」
「問題あるって」
いつものようにタカシと冗談を言い合いながら、講義開始までの時間をつぶす。
タカシは、俺が彼女を作ろうと思うようになった原因の一人だ。タカシは俺と違って本物の彼女がいて、写真の彼女を見たときは可愛らしくてとても悔しかったのを覚えている。彼女は顔が幼く見えたが、高校の同級生の時から付き合っているらしく、同年齢だ。
その当時は、ロリコンなんて茶化した記憶があるが、今の俺には今は口が裂けても言えない。
汐田は少し大人びた雰囲気を持っているから、幼いようには見えないかもしれないけれど。
「そろそろ時間だ、サキ、起きろ」
タカシが隣に座っている女子に声をかける。しかし反応がなく、タカシは肩を揺すって起こしにかかった。
「もう時間? まだねみーわね」
短い茶髪を掻きながら、サキが顔を上げる。
「ヨウスケもいる。もう時間じゃん」
「うるせーよ」
目を擦りながら彼女は体を起こした。
サキにも彼氏がいる。サキの彼氏とは友達で、俺はその3人とつるんでいることが多いが、俺以外彼氏彼女持ちなのは、とてもつらい。サキも見た目遊んでそうに見えて、これまた高校の時には付き合っていたというから猶のことだ。
大学生までに彼氏彼女が出来るのは当然という噂を目の前で証明されては、仮でも作っておこうと焦って変な行動をしてしまうのは仕方がないんじゃないだろうか。仮の恋人だからそんな気持ちは誰にも言うわけにはいかないけれど、誰かには共感してほしい。
このどうしようもない思いを、共有したい。
それよりもまず、目の前の問題を処理しなければいけないのだが。
「なあ」
俺は二人に相談を持ち掛ける。
「日曜、一緒にテスト勉強しねえ?」