恋人の証拠【日.ヨウスケ】
【日曜日】
==ヨウスケ==
「あー……」
全身を気怠さが襲い、体を起こすのも面倒だ。寝汗でべたつく肌にうっとうしさを感じつつも、起きることへの面倒さが勝っている。枕元に置いてあった携帯電話を取り、画面を見やる。
「昼の一時。今日も寝すぎた」
早起きせねばと思いはするが、授業や遊ぶ日以外は午前に起きることは少ない。大学生の特権ではあるが、権利を無駄に消費している気がしないでもない。
片手で画面を操作し、寝ている間に来ていた通知に軽く目を通した。その中に今朝送られた汐田からの通知を見つけ、開いてみる。
「汐田は毎日早起きしてるのすげーなー」
彼女から送られてきたのは数点の画像ファイルだった。「恋人っぽく見える写真がありましたので」という一文と一緒に、昨日のデートの一部を撮ったものが添付されていた。
「ありがたい」
自分で撮った写真に加え、彼女の送ってくれた写真を合わせれば、恋人のいる証拠として成り立ちそうだ。ここまで気を使ってくれることを含め、汐田に頼んでよかったと思う。恋人のフリを引き受けてくれただけでも十分すぎるのに、だ。
しっかり者だから高校では同級生にモテていそうだ、とふと考える。いや、逆に嫌煙される性格なのかもしれない。実際高校でどんな振る舞いをしているかはわからないが。
「そんなことより」
彼女にお礼の連絡をし、送られてきた写真を保存する。そしてSNSアプリを開き、写真を投稿する。
「昨日は楽しかった、っと」
投稿したのは、ピースサインをしている自分と汐田の手だけを映した写真だった。汐田の助言曰く、二人のツーショットよりも体の一部の写真ほうが「恋人がいる雰囲気」を醸し出せるとのことだった。
「よし、これで証拠はばっちりと残した」
これで、周りからは彼女いない歴イコール年齢の奴とは見えにくくなるはずだ。
汐田との契約は一週間だから、まだ残り3日ある。その間に巷でよく聞くカップルあるあるを存分に疑似体験してみよう。