デート・後編【土.カヤ】
【土曜日】
==カヤ==
「行きたいところってゲームセンターかよ」
「文句言わないでください。行きたいところならいいんですよね?」
「文句は言ってねえよ」
センパイを先行し、アーケードゲームを見て回る。様々な種類のゲームが揃えてあるらしく、どれも面白そうだ。どれから始めるか悩ましくて、楽しい。
「わりとゲーセンくるの?」
「いえ。いつもは友達とプリクラ撮るくらいです。でもその時に傍目にちらちらとゲームが映るんですよ。それで」
「あーなるほど。自分もやってみたくなったと」
「そうです。女の子だけじゃ、来にくいんですよ、ここ」
「そう? 割と女子だけの客もちらほら見えるけど」
「そうですね、ミサ達とあんまりゲーセン行こうってならないだけかも」
一通り歩いて、簡単そうなシューティングゲームの椅子に座った。かわいいキャラクターと難易度が選べる仕様に釣られてしまったのだ。早速100円を入れて、ゲームを始める。
「最初は、よし。ああこれボタンずっと押してたら弾がずっと出るんだ、簡単」
「お手並み拝見だな」
「相手の弾も簡単によけれる。うわー凄い」
「あ、ほらアイテム取れアイテム」
「ア、アイテム?」
「あのEって書いてる赤いやつ」
「ああこれ。えっ、どうやってとれば」
「ああもう、こうして機体で振れてしまえばとれるんだよ」
「えっ」
センパイは私の手に手を覆いかぶせ、コントローラーを操作する。画面内の宇宙船がそれに合わせて動き、敵の攻撃を避けつつ、緩やかな流れでアイテムを手に入れる。
手、大きい。
「な、こうやってアイテムをとっていくと機体が強化されてどんどん強くなっていくんだよ」
「なるほど」
なよなよとしたセンパイのはずなのに、私の手より十分に大きかった。
「ある程度進めたらボスが出てくるから、頑張れよ」
「ありがとうございます。やってみます」
集中しよう。集中。何に集中だっけ。目の前の画面に集中だ。この小さい宇宙船を動かして、攻撃を避けるんだ。どうやって動かすんだ。この、手を動かして。まだ、この手の甲に熱が残っている。
ああもう。
「全部の敵を、打ち滅ぼします!」
私たちこのあと、滅茶苦茶ゲームをして、初めてのデートを終えた。