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デート・前編【土.ヨウスケ】

【土曜日】

==ヨウスケ==

 太陽が照り付けて暑苦しい天気だが、晴れてることだけに目を向ければデート日和だと言えなくもない。雲が出るか風が吹くかしてくれないと、待ち合わせだけで疲れてしまいそうだ。

 昨夜のバイト中に汐田とデートの約束をとりつけ、最寄りの駅の一つとなりの駅で今日待ち合わせをすることにしていた。腕時計に目を落とすと、待ち合わせ時刻の5分前だがまだくる気配ない。


「しかし、まだ来ねえな。寝坊でもしてるんじゃねえだろうな」

 しっかり者の印象がある汐田は10分前には駅前で待っているだろうと想定していたことと、上がっていく昼の蒸し暑さがイライラを募らせていく。そんな俺を慰めるように、雲が太陽を遮り、熱が少しだけ和らいだ。

「ありませんよ。センパイじゃありませんし」

 背後から声に体を向けると、汐田が駅の階段から降りてきていた。襟付きの半袖トップスにジーンズといったシンプルな格好で、頭にはハンチング帽を被り、長い髪を隠してしまっている。

いつも見る学校帰りの制服とは違う格好に驚いたが、できる限り平静を装って彼女に言葉を返す。

「おっ、いつ来た」

「センパイが来る前に。センパイが宣言通り30分前に来るのか、そこで涼みながら眺めてました」

 彼女は後方にある駅内の喫茶店を指さして白い歯を見せる。


「それなら早く出て来いよ」

「だって日焼けするの嫌じゃないですか?」

「理由になってる?」

「なってませんね」

「いい性格してるな」

「ありがとうございます」


 彼女は下から俺の顔を覗き込み、上目遣い気味に訊ねてきた。

「今日はどこに案内してくれるんです?」

「汐田の行きたいところにいこう」

「えっ」

 汐田は肩を下ろし、キッと体を起こすと人差しを俺に突き付けてきた。

「いいですか? 昨日、エスコートの準備しておいてくださいって忠告しておきましたよね? デートの証拠になりそうなとこ、ちゃんと考えておいてくださいって」

「わかってるって。ただ改めて考えてみるとさ、デートの証拠って結局写真になると思うわけよ」

「はい」

「そしたら場所はどこでもいいなあって。そしたら、俺に付き合ってくれる汐田に悪いし、汐田の行きたいところに任せたほうがいいってわけ」

 彼女は逡巡したのち、嘆息をついた。


「センパイは論理的な馬鹿ですね」

「論理的な馬鹿ってなんだ。俺はお前と一緒ならどこだっていけるぜ」

「そういうのは本当の彼女が出来てから言ってあげてくださいね」

「で、行きたいところはある?」

「そうですね」

 彼女は顎に手を当てて、しばし考え込む。そして少し恥ずかしそうに口を開いた。



「あそこに行ってもいいですか?」


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