阿呆なこと【木.カヤ】
【木曜日】
==カヤ==
「はぁ」
「カヤ、どした?」
「ううん何もないよ」
「困ったことがあったらミサお姉さんになんでも言ってね。さっきのテストの点でも悪かった?」
「そういうミサお姉さんはどうだった?」
「82点」
「90点」
「負けたー」
「勝ったー」
ミサと私がそうやってくだらない雑談を繰り広げていると、ポケットから振動が伝わる。わずかに持ち上げて画面を一瞥すると、センパイがメッセージを送ってきたのだとわかった。
ポケットにしまい、再度ため息を吐いてしまう。
「本当に大丈夫?」
「ああ、ごめん。ちょっと疲れがたまってるのかも」
「ああほんと? まあ、先週テストあったしねー」
「だね」
こんなに疲労感を感じているのに、昨夜はオーケーしてしまってよかったんだろうかなんて、今更ながら思ってしまう。
メッセージのやりとりと、週末のデートをするだけの簡単なアルバイトで、時給も割りがいい。彼女のフリをするだけなのと、センパイのヘタレぶりを考えると、手を出されることにも安心できる。いいことづくめのアルバイトなのに、どこか腑に落ちない。
今朝起きてから、私の中ではずっとこの問答が巡っている。
私は、とてつもなく阿呆なことをやっているんじゃないか?