契約の終わりと【水.カヤ】
【水曜日】
==カヤ==
「今日で終わりですね」
今の時間帯の業務が一通り終わり、センパイに話しかける。
「ああ、そうだな。そうなるのか」
ふわふわとした返答が返ってくる。気の抜けたもので、本当に忘れていたように思える。それじゃあ、一昨日の落ち込み具合はなんだったんだろう。思い詰めていたんじゃないのか。
「てっきりトリプルデートで終わったものだと」
「いや、センパイ。一週間延長するって言ってましたよ」
「俺が?」
「私が延長した一週間とセンパイが延長した一週間で、貸し借りなしみたいなことを」
「言っ、たような気がする」
「言いましたって」
うんうん唸って記憶を探ってるだろうセンパイを見て苦笑する。
「別に追加でお金を払うわけじゃないですし、いいじゃないですか」
「だな」
「私が言いたかったのは、今日で契約は終わりですよね、って確認したかっただけです」
「ああ、なるほど。いや、今日までありがとうな、助かったよ」
「私が言わなかったら有耶無耶になってましたよ」
「お、おう」
「契約なんですから、終わりまでしっかり確認しないと」
「そりゃそうか。あとから一応雇用契約? だから終わらせないと残業代請求されるかもしれんしな」
「そのほうが良かったかもしれませんね。私的には」
「おい」
お互い噴き出して笑いだす。
もうすぐ私のシフトも終わりの時間だ。それはつまり、センパイとの恋人契約も終わりの時間ということだ。
「センパイ」
「ん?」
終わる前に、言っておくことがある。
「改めて、恋人契約を結びませんか?」




