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どうにもしようはないけれど【月.カヤ】

【月曜日】

==カヤ==


 今日のセンパイは落ち込んでいるように見える。

 いつもひょろっとだらっとしているけれど、それにもまして覇気がない。

 心配な部分もあるけれど、その状態で働かれるのはお客様に対しても一緒に働く者としてもよくない。

「どうしたんです?」

 店内の客足が落ち着いたのを見て声をかける。


「どうもしてねえよ。顔色悪そうに見える?」

「ええ。この世の終わりみたいな」

「そんなにか」

「もっとシャキッとしてください。ほら、背筋伸ばして」

「お、おお」

 私がセンパイの背中に手をやると、先輩は胸を張って姿勢を正した。


「姿勢よくするだけで気分も好調するものですよ」

「悪いな」

 さっきよりは明るくなったけれど、まだ陰りは残っている。

 もしかすると、これは私のせいかもしれない。

「バレたんですか?」

「えっ?」

「デートの件で、嘘の恋人だとバレたから落ち込んで? そうだとしたらごめんなさい」

「ああ、違う違う。汐田はよくやってくれたよ。それにバレたわけじゃない」

「そうなんですね、それは良かった」


「ただなあ」

「ただ?」

「カップルがいるフリをするってのがめちゃくちゃみじめに思えてきてな」

「今更ですか?」

 自然と口をついて出ていた。追い詰めるような言葉だ。しまったと思うけど、次の言葉が続かない。

「いや、その通りだよ」

「えっ」

「今更気づいたんだ。馬鹿だよなあ」


 どう言葉をかければいいかわからず、困惑する。笑い飛ばすことも慰めることも正しい気がするし、間違っている気がした。

 周りから見たら阿保らしいけれど、センパイにとっては真剣なものだったんだと改めて思った。

「今回のことはいい勉強になったよ。勉強代はちゃんと払うから、少し待っててくれ」

「わかりました」


 そう返すのが今の精いっぱいだった。


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