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フリーターの異世界転職記  作者: 小松 篤久
2/2

序章:日常から非日常へ  第二話

前回の第1話を、お読みになった方々お待たせしました。

前回ご感想、評価すごく励みになりました。

前回をお読みになられてない方は是非1話からお読みになってください!!


誤字脱字多く読みにづらいかも知れませんが気づき次第なおしていきますのでご了承ください!

__第2話___異世界でのrestart__

 職業:フリーター



 「どうしたの、なにか発見したの?ちょっと通してっ!!」

奥から大柄の男の群れを割いて出てきたのは薄いエメラルドグリーンの瞳をした、綺麗なブロンドの髪をなびかせた女の子だった。彼女は救世主だと俺は思えた。


「貴方お名前は?」

「み、しろたくや。です」   

単純に綺麗だと、そういう言葉しかその瞬間の俺には思いつかなかった。

そんなことに現を抜かす俺には、気を止めず。話を進める。

「彼の名前、名簿にあったかしら?」

彼女の後を続くように現れた一人の男に聞く

「ないでありますな。」

聞かれた男がなにやら紙を見ながらそう答える

その男は周りの大男が着ている無骨な鎧とは違い、細かな金の装飾などがされよく手入れが行き届いていそうな甲冑を着ていた。

次の瞬間、彼女はすごく周りの大男達にに向けて一言を言い放つ。

「確保しなさい」

「え?」

一瞬のことで解らなかったが、次の瞬間に痛みと地面の感触を味わった。俺の上に多い被さる形で大男達の下にいた。そんな状況が読み取れない俺は彼女を見上げた。

「なんですか?言い訳でしたら、後でお聞きます。ヘンに暴れないほうがいいですよ。彼ら、少々荒っぽいから死にたくはないでしょう?」


 救世主?あれは気のせいだった。いや、あのときの見間違いだったのだろう。彼女は阿修羅かはたまた閻魔の方が正しかった。




:地下室

職業:_捕虜_


 拝啓:母さんへ

俺は、暗く冷たい地下に閉じ込められています。

そして今閻魔と二人きりで尋問されています。

ここは寒いです。こんな場所で死ぬかもしれません。

もし死んだらパソコンは一切電源をつけずに粉々にしてください。特にハードディスクあたりを重点的に…


死んだとは決まったわけではないのに、拓弥は頭の中で遺書を綴っていると


 「あっあのっ‼ちゃんと聞いてます?」

目の前にいる閻魔はうわの空で居る拓弥に聞き返す。

「…へ?」

拓弥は不抜けた声をだした。彼は脳内で遺書を作成するのに精一杯で恐れ多くも眼の前に鎮座している閻魔の話など耳にはいって来ていなかった。

「……はぁ、あなたはご自分の立場を理解してらっしゃいますか?」

「あはは、は……す、すみません……」

今の彼女は目線が鋭く、まるで獲物を狙う獣の用だとも言える。拓弥は背筋に冷ややかな汗が流れるのを感じていた。

ど、どうしよう、現実逃避してほとんど聴いてなかった。怒らせたか、いきなりし、死刑とか言われないよな。

「では、改めお話をお聞きします。嘘を付かないでください。まだ、貴方だって死にたくないでしょ?」

目の前の彼女はコホンと、小さく咳払いをして声色を整える。

あ、あぶねぇー良かったまだ生きれられそうだ。でもどうしようこの緊張感でお腹が痛くなってきた。

「もう一度説明しますが。まず、あの遺跡は一般の方が無断に入っていい場所ではございません。それを理解してはいられたんですか?」

彼女の声はすごく丁寧なのだが拓弥に対する態度は単調で彼女はずっと疑惑の眼差しを絶えずこちらに向けて来ている。

「し、知りません。でした」

拓弥は彼女の圧に情けなくもだんだんと縮こまってしまう。

 本当に閻魔に裁判されてる程怖い。閻魔なんて実際拝んだことなんかないけど。ただ、俺はバイトに向かっていただけなのに、ホントどうなってるの、罰とかですかね、罰ゲームにしては、手が込みすぎてるし。緊迫感がリアル過ぎるし、女の子と部屋に二人きりといえば聞こえはいいが薄暗く空気がひんやりとした牢獄みたいなとこで尋問されてるとなれば話は別だろう。今まで感じたことがない死を近くに感じているし、とりあえず帰らせてはくれないですよね。

拓弥の脳内では長文ができあがっているみたいだが、彼女からの質問は続いていく。

「見たところ、服装からしてルリード領の領民ではなさそうですね?他の国からでしょう?アスモリス連合王国からか、もしくはトニシェ公国から?それとも……」

と彼女は虎視眈々とねらう獣のように、鋭い目で質問を続けている。

ル、ルリード領?アスモリス?トニシェ?えーっと聞いたことなんかないんですが。

そして日本ではないんですね、まぁそうじゃないかってうすうすは気づいてたんですけど、さすがに知らない国は予想していなかった。ってことは別世界?いやそれとも、死後の世界というやつか。そうか、そういうことにしよう、その方が今一番一番納得できるな。よし、ここは死後の世界ってことで……あれ、俺は死んでも不幸なことに遭っているのか。それじゃあ、今ここで遺書なんて思い浮かべてもしょうがないな。まぁそもそも届くはずもないものだけどさ、そっかー電車を降りた時点で亡くなってるってことかー…はぁ~ぁどうなるんだろうな…もう何にもしないで死ぬのは一度きりにしたいなぁ。

「あの!本当に貴方は私の話を聞いているんですか!先ほどからぼっーとしてるんですか」

彼女は俺の態度に苛立ちを覚えていた。

「は、はい、すみません!!に、日本から来ましたっ!!」

つい、大きな声で返事してしまう、他に人が居なくて助かった。居たら相当恥ずかしい思いをしただろうな。

「…ニホン?そんな名前の領地あったかしら?」

彼女は疑いの目をこちらに向けてくる。彼女の態度伺い見るにホントに日本を知らないんだな

「え、えっと日本は国です」

「…国ですか?えーっとちょっと聞いたことないですね。」

メアは、頭の上にハテナを浮かべてるのかの用にきょとんした顔で小首をかしげる。その顔もまた画になるツイ見とれしまいそうになる。しかし日本知らないとなると、ここはちょっと誤魔化した方がいいかも、どうせ気づかれないだろうし。

「えぇーっとここからずぅーっと東の方にある島国でして…」

「…島国から?なるほど、だから見慣れない服装をなされているんですね。」

よし。こんな感じで誤魔化していけるかもしれない。

「でも、そんな遠くから旅してこられたにしては、荷物が少ないように見えますがどこかに馬車でも停めてましたか?」

やっぱり誤魔化していけないかもしれない。確かにリュック一つで商人なんてするやついるわけないですよね。どうしようその場しのぎの嘘で東にある国から来た商人だなんて言わなきゃよかった。な、なんてごまかそう…やばいなんか言わないとまた疑われるぞ。

「えっ、いや、それは…えっと…」

「どうしました?心配じゃないですか?盗まれたら大変ですし、すぐ使いを出して屋敷までお連れしときますよ?」

俺の戸惑いを見抜いているのか彼女の言い方は語尾が少々強めだ。ますますヤバめだ。ますますめんどくさくしてしまった…

「……また、だんまりですか。はぁ、それじゃ自分で自分の首をしめているだけすよ?嘘はやめませんか」

彼女の眼が鋭く俺の心に突き刺さってくる。

かぁーっ、しっかし、どうすればいいんだ死んで、またすぐに死ぬなんて死ぬに死にきれないぞ…あれ何回死なんて言ったっけ?

ってそんなことを考えてるなら、もっとましな返しがでてこいよ。

「では、違う質問をいたしましょう。あなたの本当のご職業は何でしょうか?」

ここは本当のことを言おう。嘘なんてついて後でばれたらそれはそれでどうなるか分からないもんな。

「ふ、フリーターです」

「ふりーたー…?それは同様なお仕事なのでしょうか?」

「えーっと、あはは、は、は」

「もしかして、無職ですか?」

彼女は訝る。彼女は眼光を鋭く研ぎ澄ませる。

「いや、ちゃんとし、仕事はしています…い、一応接客業を」

「ではやはり商人ということでよろしいですか?もしかして旅商人などをその、日本という国ではふ、ふりーたー?と言うのですね」

「えーっと。は、はい」

対応に困ったので、つい嘘を重ねてしまった。

「うーん困りましたね。身分を証明出来る物をお持ちではないようですのでこれ以上確認のしようがない」

「ふぅ、一旦休憩にしましょうか。待っててくださいこちらに暖かい飲み物をお持ちします」


ところかわり彼女、一人しか居ない暗闇

その暗闇の中で彼女はテレビのような画面を食い入るようにのぞき込む。

 うーん、彼は本当に運がないというか人との会話に経験値がないというか、全くダメ。駄目駄目だなぁ。君はもう少し嘘をついた方がいいな。自分を守るためにもね。

さて、このままでは折角連れてきたというのにこのままではいけないね。うーん、彼には干渉しないつもりだったけどこれは助けに行くしかないよね。ボクの世界に来たばっかりでココでゲームオーバは面白くない、ボク的な話だけどさ。


ところ戻り地下室

 メアが休憩と部屋を出てからどれくらいの時間がたったか、五分か十分はたまた一時間もすぎたかもしれない。この地下室では時が分かる物は何一つなくて時間感覚が狂い始める。

ふぅでも、やっと一時的とはいえ休息が出来た。さて、ここからどうすれば最善策なんだろうか、ここは地下で出入り口は目の前にある扉だけ、扉を出た先には確か警護の一人もいなかったはず。ん、これはチャンスじゃないか、逃げられるじゃん!

「よし…いや、まてよ」

カギがかかってるんじゃないか?そうだよ、監視に誰も居ないのだからそんな不用心な事はしないだろう。

「で、でも、もしかしたらって可能性もあるしな」

扉に手をかけるとそのドアには不用心な事にカギはかかっておらず、簡単に開いてしまった。

「あっ、あ、あいてますよー」

小さな声で忠告したが扉の周りには誰もおらず、なんの返答も返ってくることはないことを確認し薄暗い上と続くであろう階段を壁をつたいながら上っていく。

「くらいな、携帯があれば」

階段には灯りがなく先ほどいた部屋か漏れる光では頼りにならない。

階段はそこまで長くはなくある程度すぐに出口であろう扉にたどり着く事ができた。

「うわっ、まぶしい」

扉を開けると先ほどまでの薄暗いところから、うって変わり目を背けたくなるくらいに明るい場所にでた、そこは日ざしの差し込む大きな窓を配置された廊下の途中で屋敷の大きさを容易に想像できた。

「よし、に、逃げよう!」

廊下にも遺跡に居たような騎士などは居ないようだしこのまま逃げられそうだ。

さて、どちらに行けば出口なのだろうか、左右の廊下の先があんな遠くに見える。屋敷の人に気付かれず逃げなくてはいけないが、この長い廊下には、隠れられそうな場所やドアはなど見当たらない。

「ココは勘で右側に行こう」

と右側の廊下に歩いて行くと、その先の角から運悪く閻魔が、いやメアが歩いてきていた。

「や、やばっ」

とどこかに隠れようとするが近くには隠れられるような場所も、逃げ込める扉も見当たらない。しかし幸いな事にメアはこちらには気付かず、彼女の横に居る女の子と談笑していた。

これは、チャンスと一度先ほどの地下に戻ろうと回れ右をしようとしたとき横に居た女の子が俺に気付いてしまった。もう逃げれないと覚悟した、その瞬間だった。

「あ、お兄ちゃん!」

「へ?」

唐突に、投げかけられた聞き慣れない言葉にすっとんきょな声が漏れる。

俺には、妹など居ないし、目の前に居る子に見覚えもなかった。俺は誰ですかと聞こうとした瞬間その子は、俺に向かって飛び込んできた。

「もう!おにいちゃん心配したんだからね」

飛びかかられた俺は受け止めきれずよろけて転んでしまう。状況をますます理解が出来なくて頭が真っ白になっている俺にその子はメアに気付かれないように耳打ちをしてきた。

「ここから、助けてあげるから口裏合わせてね」

「えっ、なんで?」

「まぁまぁ、いいから、いいから」

俺の事をお兄ちゃんと呼ぶ目の前の子に起きるのを手助けしてもらい、怪しさに少し悩んだがここから助かるには、今はこの子の言うとおりにしといたほうがいいのではないかと思い口裏を合わせることにした。

「もう急に居なくなるから心配したじゃん、もー」

「ご、ごめんごめん、ちょっとね」

したこともない演技でぎこちない会話になる。こんな会話でこの閻魔をだますことが出来るのか不安だったがそんな事は杞憂のようで

「今、妹さんから貴方の身分確認ができたのでもう大丈夫ですよ。次からは証書は必ず持っていてくださいね」

「す、すみません」

あっさりと問題が解決してしまう。

これまたあっさりと解放されてしまった。

解放され屋敷の外に出て林道を歩いていた。なんだかんだここに来て。外の空気を味わうのは初めてで、なんだか空気が、澄んでいて風は清らかに感じるのは緊張感から解放されたからだろうか。

もう何が何だか分からないが隣にいる俺をお兄ちゃんと呼ぶこの子をおかげで助かった。命の危機から脱することが出来た俺にとってこの子は神様だと思った。

「いやー、あ、ありがとうございます。」

「いいよいいよ、おにいちゃん」

「…えっーと、いつまで演技を続ければ?」

屋敷を出てもこの子は、演技を続けていた。

「んー、この先に止めてある馬車に乗るまでかな、あとちょっとだから我慢して」

確かに、少し進むと開けた場所に馬2匹つれた荷馬車が止まっていた。この子が操るには不相応なほど立派なものだった。

「ねぇ、ホントにこの馬車、あなたのですか?」

「何言ってるの、おにいちゃんの馬車でしょ?さっ早く乗って乗って」

そう言われ馬車に乗せられた。

「しばらくはだまってたほうがいいよ」

そう言うと女の子は手慣れた手つきで手綱を握り馬車を走らせ始めた。


林道:馬車の中

 馬車が走り始めて、しばらくお互い何も話さずにいたのだが、とうとう俺はしびれを切らしというかこの空間に耐えきれなくなり話しかけることにした。

「ねぇもういいですかね?」

「あぁ、そうだねもういいよ」

女の子の話し方が先ほどとは違いワントーン低くくつい年下に見える女の子に敬語をつかってしまう。

「どうして助けてくれたのか聞きたいんですけど…」

「そんな事はいいじゃないか。それより、お腹すいてないかい?」

一番の疑問を投げ返るがこの子は助けた理由をはぐらかされた。

「ま、まぁ少しは?」

ここに来てどのくらいすぎたか分からないが、多分半日が過ぎたぐらいだろうか、おなかが空いていたのたしかだった。

「じゃ、街に行こうかそこでご飯と今日の宿を探すことにしようじゃないか。」

「あ、あぁはい」

その後特に会話することがなく、女の子に連れられ街を目指すことになった。


:ミーシア

 「さぁ、街に着いたよ」

「すごい、大きい街だ…」

「この街はね、流通の中継点となる街なんだ。ココから国の中心に運ばれるし他国に運ばれる。この街ならある程度のものがそろうから冒険なんかを始めるならこの町からだろうね」

「た、確かにいろいろな荷馬車がいきかってる」

いつか写真で見たヨーロッパの建築のような建物が建ち並んでいる。

適当な宿を彼女が探して日の高い内に止まるところを確保した何から何まで年の下の女の子に頼るというのは周りからみて情けなく映っているだろうが、何も分からない自分にとって頼らせてもらうほか無かった。

「一人部屋にしては広くて立派な部屋だな…お金はどうしよう」

宿屋に通された部屋は一人で使うには広く細やか装飾一つ一つが綺麗で高そうな部屋だった。

この世界の通貨など持ち合わせてなどいない拓弥にとって宿泊代が気が気ではなかった。

「ま、まさか、このまま売り飛ばされたりなんかするんじゃ…いやいやまさか、さすがに疑りすぎかでもできすぎてるし…」

とベットに腰掛けたり部屋を歩き回ったり一人ブツブツと妄想をくり広げていると。

コンコン

扉をノックし女の子が部屋に入ってきた。

「部屋はどうだい、気に入ったかい。って何してるんだい君」

部屋に入ってきた彼女が見た光景は部屋をぐるぐると歩き回る拓弥の姿だった。

「い、いやこれはつ、ついく、癖で、あはは…どうしました?」

「まぁいいけど、ご飯にいこうかと思ってね」

宿を出てしばらく歩いてると大衆食堂のような雰囲気で賑わっているお店が目についた

「ココにするかい?」

と聞く女の子に、美味しそうな匂いにつられてつい、即答してしまった。

「はい!」


:食堂内

中に入ると、そこは丸テーブルの席が多数あり、カウンターの席もわずかだがあるようだった。

「あそこの席でいいか」

と入り口から一番遠い端の席を指を指す

「はっ、はい」

あたりを見渡してみるとまだ日が昇って居る時間だと言うのにお酒を飲んで盛り上がってるグループや、

小さな子供を連れている家族連れなど客層は様々なようだった。お酒を飲んでるグループは防具や剣、盾などを片脇に置いてるのを見ると彼らは冒険者かなにかなのであろう。

「なんでも、好きな物を頼むといい?」

シセルはそう言うと木の板を差し出してきた。その木の板には、黒く何か書かれているようだが読めそうにない。しかしたぶんメニューだと思うが、しかし拓弥にはそこに書かれているであろう文字を読めずどうしたものかと当惑してしまった。

「えっーと……ま、迷うのでなにがおすすめですかね?」

この窮地を脱するためための質問が浮かばず彼女も初めて入っただろうにバカな質問をしてしまった。

「うーんそうだね、僕もここは初めてでね。適当に頼もうか?」

「あ、あぁお願いします」

という女の子の助け船に、ありがたく同調させてもらうことにした。

「まかせといてくれ。すいませーん」

女の子はそう言うと店員に注文を始めた。

料理を2、3品頼むとまた二人は向かい合って静粛してしまう。

料理が来るのを待つ間、聞きそびれていたことを思いだし尋ねた。

「ここまで来てなんなんですけど、あなたの名前は?」

ここまで助けてくれたこの子だがこの瞬間まですっかり名前を聞くのを忘れていた。

「あー、そういえばそうか名乗っていなかったね。うーんとね、そうだね。僕の名前シセルでいいよ」

目の前の女の子、シセルは少し悩む素振り見せそう答えた。

その姿に、拓弥は少し疑問を感じたが、ここまでの間、疑問だらけだったので気にしないことにした。

「シセルさん、今日は助けてもらってありがとございます、僕の名前は」

あいさつを返そうとする声を遮った。

「あぁ知ってるからいいよ三皎拓弥君」

「なんで僕の名前を知ってるんですか?」

今日会ってからここまでの間、一言も名前を出していないし、名前の書かれた物を見せた訳でもない。もしかしてあの屋敷にいたときにあの閻魔、いやメアから聞き出したのか?

とそんな風に考えていたその姿は顔をしかめていたのだろうか彼女はこちらを見て嗤笑しながらたしなめる。

「まぁそんな顔しない?そんなことはまぁいいじゃないか気にしない気にしない」

しかし、そうなると疑問がふって湧いてくる。シセルに聞いてみた。

「シセルさんとは初めましてですよ?」

「そうだね」

「それなのに、なn」

疑問の回答を求める拓弥の言葉を遮るようにシセルは言葉を重ねてくる。彼女は

「ははっ、まぁあそこから助かったんだそんなこと気にしなくていいんじゃない」

「ま、まぁそこには感謝してますが…」

「大丈夫さ別に君を取って食おうと言うわけでも、奴隷にして売り飛ばそうと考えているわけでもないさ、企みなんか何もしていない」

彼女は笑っていたがその笑みに拓弥は複雑な感情を抱いたのだった。そうこうしていると、店員が両手に料理を抱え拓弥達のテーブルに料理を並べていった。それを見たシセルは問いかけを遮るようにうながす。

「まぁ今は、食べようじゃないか。せっかく、こんなにも美味しそうなんだ!もったいないだろ?」

そんな感じで結局食事の際にも理由は聞けずじまいだった。

ある程度食事を終え、お茶を飲んで食後を満喫しているとシセルから話しかけてきた。

「君は、これからどうするんだい?」

確かにそうだった、助けてもらったのはいいが、この先のことを拓弥は何一つ考えていなかった。

「なるほど、なにも考えてなかったのかい」

しまった。顔に出ていただろうか、うかつに嘘をついたらばれそう、だからといって返す言葉もない。

黙る僕にそれを見透かしたようにシセルは問いを続ける

「君、国に帰れるのかい?無理だろ?」

シエルは答えを知っているかのような口調で拓弥に問いかけてくる。その表情はどこか、意地の悪さがにじみ出るような笑顔であった。

「いや、まだそれは分からないです」

確かに、この世界から変える方法はちっとも分からないしこの世界の事さえ分からない状況だったがシセルのその笑顔に嫌悪を感じ返す言葉に怒気がこぼれる。

「あはは、確か日本だっけ?それはどこにあるんだい?あのお嬢さんから聞いたときは、笑いそうだったよ。必死に誤魔化したんだぜ?」

起こった拓弥を見てもシセルは相も変わらず、ますます拓弥を茶化すように面白がる。

「…それは、すみませんでした」

その姿を見て勝てないと見込んだ拓弥は臍を曲げあからさまに不機嫌になった。

「あはは、すまなかった。君の気分を害するつもりはなかったんだ」

シセルは謝ってはいるが相変わらず笑顔を崩さずいる。

この二人の席以外は入った時と変わらず賑やかで騒がしくも感じる。それに反してこの二人の席は静寂に感じるほど空気がよどんでいるようだった。

「別に…気にしてないです、」

「そうは見えないけどね。まぁいい、でも帰り方も分からないんじゃどうしようもないだろう?」

シセルは全て見透かし理解した上で余裕を見せる姿に、気に食わないと感じる拓弥であった

「じゃあどうだろう、先ほどのお嬢さんには、僕と一緒に商人をしているということにしといてある。僕の旅に加わるのはどうだろうか?」

わざとらしく、大きな素振りで手を叩きながら拓弥にシセルは提案する。

「…さっき、何も企んでいないっていってませんでしたか?」

虫の居所の直らない拓弥は先ほど自分で企んでいないとい言ってた言葉との矛盾を突きつける。

「いやいや、これは企みじゃない。ただの提案さ」

拓弥はシセルの発言に眉をひそめる、なにが違うんだと拓弥思ったがシセルはそんなことなど気にせず提案を話続ける。

「君は今は帰り方も行く当てもないわけだ、お金も住まいも仕事も君には今ない。であるのであれば、僕の仕事を手伝って欲しい。」

「…仕事って、何をすれば」

怪しくはあるがしかしここまで助けてくれたのはシセルなので一応聞くことにした。

「すごく簡単だ先ほどの荷馬車の荷物を届けに王都に向かうだけさ。王都に向かう間は仕事も住まいにも困らないし、王都に着いたらお給金もだそうじゃないか」

シセルの出した提案はすごく今の自分にとって魅力的な話ではあるが魅力的な話しすぎて疑わしくなる。

「…なんでそこまでしてくれるんですか?」

「いやただ単に、人でが欲しくてね。怪しいなら断ってくれて構わないさ」

とだけシセルは答えるその口調や表情からは真相をうかがい知ることはできなかった。

拓弥にとってシセルからの提案はすごく魅力的な提案で心惹かれるが、ここまで助けてもらったあげくこれ以上シセルから何かをもらうのは申し訳ないと思い断ろうとした。

「…助けてくれたのはありがた」

「でも、君ここの食事代はらえるのかな?」

またもやシセルは拓弥の言葉を遮りお金をない事を知っていて尋ねる。

断れば今までかかった料金を払えと言わんばかりに笑顔崩さずシセルは拓弥の目を見る

「は、払えません」

ここまでで、かかったお金は宿にココのご飯代だ、こちらの通貨の金額にすればたいした事はないのだろうが、今の自分には払えるお金など持ち合わせていなかった。払えないと答えるしかなく必然的にその後の答えも決まってしまった。

「だよねっ、じゃあ答えは一つしかないと思うけどどうかな」

シセルは相も変わらず笑顔でこちらを見ながら首をかしげ、聞いてくる。

そろそろ彼女の笑顔が逆に怖くなってきた。そんな俺が導き出せる返答はただ一つ

「………働かせてください」

だけだった。

シセルは、よろしいと一言返すと満足そうに懐からお金をだし会計を済ませた。


:宿への帰り道

「いやーおいしかったねーあそこのご飯は」

シセルは気分がいいのか鼻歌交じりで宿に戻る道を歩く。

正直味などもう覚えていない、どこからシセルの作戦だったのか、もしくは最初から策略にはまっていたのかそういったことで頭いっぱいいっぱいだ。これからの事はきまったが、ここまでうまく物事が旨く行きすぎているのも怖いし。

そんな不安も抱えつつ、シセルの後をついて行くのだった。


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