「8%の悪意」第三章 内容考察01
<泉 まゆか>
「……あ」
<牧 双葉>
「やっと戻ってきた」
<伊達 秋人>
「おう。で、そっちは何か進展あったか?」
<双葉>
「それがね。どうにもこうにも……」
<秋人>
(……だわな)
<双葉>
「とでも言うと思った?」
<秋人>
「? どういうこった?」
<霧島 聖司>
「それがですね。ひとつ、貴重な情報が見つかりそうでして」
「丁度今ごろ、こちらへ向かっている最中だと思いますよ」
<秋人>
「情報? 向かっている? 何だそりゃ話が見えんぞ」
<水城 優希>
「とにかく座っていただこう。説明はそれからだ」
<秋人>
「あ、ああ」
<双葉>
「ふっふっふ」
<秋人>
(何だこの、薄ら気味悪い笑いは……)
「で、貴重な情報が向かってくるってのは、結局どういう事なんだよ?」
<双葉>
「見つかったのよ」
<秋人>
「何が?」
<双葉>
「流出したテスト問題。それを……」
<秋人>
「盗み出した奴がか!? まさか、自首しにくるのか!? 問題解決なのか!?」
(なんという、ハッピー! お役ごめんだな! 神よありがとう!)
<双葉>
「んな分けないでしょ。犯人が、そうほいほいと自首してたまるもんですか」
<秋人>
「……ぬぐ」
(俺としては、そういう展開も“あり”だと思うんだが)
「んじゃ、何が向かってくるんだよ」
<双葉>
「ようするに。あんたがタバコを吸いに行ったすぐ後、携帯に返信が来たのよ」
「ほら、まずこのメール」
<秋人>
「ん? なになに……」
『あ~それってよひょっとしてテストの問題と関係ある?』
<秋人>
「何だこれ? SNSだかラインだとかって言うやつか?」
<双葉>
「そ。あたし、日曜日を全部使って、情報収集したって言ったでしょ?」
<秋人>
「おお」
<双葉>
「で。学校の知ってる友達みんなに、片っ端から『何か知らないか』って、連絡しまくってたのよ」
<秋人>
「お前まさか、手当たり次第にテストが流出したこと触れ回ってたんじゃねーだろな」
<双葉>
「はぁ? んな真似してるの先生に知られたら、それこそ心象最悪じゃない」
「一応、私もまゆかも件については先生から口止めされてたんだし、情報源なんてすぐばれちゃう」
「あたしがそんな馬鹿な事すると思う?」
<秋人>
(激しくそう思います)
<双葉>
「だから。『今回のテスト、何かヘンな噂とか聞かなかった?』って、そう漠然とした言い回しで聞きまわったのよ。賢いでしょ?」
<秋人>
(うーん。それもどうかと思うんだが)
<双葉>
「それで、やっとよ。今さっきこの返事がきた」
「これまでずっと、何の情報も入ってこなかったから困ってたんだけど」
<秋人>
「何も……日曜日潰して収穫ゼロとか言ってたな」
<双葉>
「そうよ、悪い?」
<秋人>
「いや、悪くはねーけど……」
<双葉>
「ほんと、なーーーーんにも。噂ばなし程度の情報なら、すぐ集まると思ってたのに。綺麗さっぱり」
「つーかさ。みんなして『何があったのか教えて?』って逆に聞いてくる始末よ」
<秋人>
(しかし、それにしても何もないとは)
<双葉>
「とかで、もう情報収集は諦めてたら、ほらこれこの通り。大逆転で大勝利だわ」
「ってゆーか、雅也ももっと早く返事よこせっつーの」
<秋人>
「まさや……クラスメイトか?」
<双葉>
「残念ハズレ、今は違うクラスよ。あいつとは1年のとき同じクラスだっただけ」
<秋人>
「ふ~ん」
<双葉>
「んでぇ、次はこれ。すぐに返信した私のやつ」
『関係あるある。あんた何か知ってる?』
「で、向こうからの返事が……」
『そういや俺テスト前にヘンなの見たぜ』
「と、こうきたわけよ。当然私は、こう返したわ」
『ヘンなのって何?』
『なんつーか期末テストの問題っぽい奴』
『まじ!? どんなのだった?』
『二年の奴っぽかった』
『すぐに来い』
『なんで?』
『口答えするな。いいからこい。これは命令よ』
「と、こういう経緯なわけよ」
<秋人>
「で、今こっちに向かってると」
<双葉>
「そゆこと」
<秋人>
「ええと、雅也だっけ? そいつどんな奴なんだ?」
<優希>
「ふん。二年A組、飯島 雅也。奴を一言で言い表すなら、当校きっての問題児だ」
<秋人>
(問題児。なんだこの親近感の沸く単語は……)
<双葉>
「問題児って言うか……馬鹿ね」
<聖司>
「ああ、問題児っていうより、そっちの方がしっくりきますね」
<秋人>
(凄い言われようだな。どんな奴なんだ?)
<双葉>
「何にしても。見たか私の情報源。双葉ちゃんネットワークの力。きっとこれで、大きく一歩前進できるわ」
<まゆか>
「ありがとうね、双葉ちゃん」
<双葉>
「なんのなんの、たやすい事ですよ。ほっほっほ」
<優希>
「もっとも、あいつが持つ情報にどれだけの価値があるかは、これから判断することだがな」
<秋人>
「だとさ。あんまり浮かれるなって、会長様からのクギが刺さったぞ」
<双葉>
「……うう」
<まゆか>
「あ、来たみたい」