「カフカの証書」第三章 卒業証書授与05
<秋人>
「……参った」
(ひとつ)
(一つだけなら、それっぽい仮説を立てられない事もない。だが、これはいくらなんでも)
(……我ながら、酷い空想だ)
「……ぷふー」
(榎本の証書にだけ見られた異常性……)
(正式な証書のずさんな保管状態……)
(一つの大束にまとめられた、五つの束……)
(裏面に書かれていた、校歌の歌詞……)
(それ以外にも。この仮説を裏付けられそうな『状況』だけなら、嫌という程にゴロゴロ転がっている)
(だが、だとして……実際に在り得るのか、こんなこと?)
「分からん。気味が悪いくらいに、理解できんぞ?」
(いっそ、D組の担任とやらがチェックにかこつけて──なんて話の方が、精神衛生上は実に好ましいくらいだ)
(もう、それでいくか?)
(……いや)
『この辺りのやり方は毎年同じでな。そこまでの段取りなどは手馴れたものだったよ』
(不可能ではない)
(手段もあり、チャンスもあり、知識もあった。ああそうだ。その気になれば、できることだ)
「とは言ってもなぁ……」
(そんな奴が本当に、存在なんてしているのか? いたとして、そいつはどんな神経してんだ? そもそも、そこまでして何をしたかった?)
(…………)
(分からない。どうにも分からない)
「クソッたれめ」




