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第二章 無限の虚無編 五話 ~本物VS偽者~

「……はぁ……はぁ……」


 息を切らし、全身傷を負いながら目の前にいる自分(・・)に苦戦する。


「くそっ!!一体何なんだお前は!!」


 唸るような、吠えるような声で叫ぶ灯火流は、彼の分身が応える。


「何度も言わせるな、俺は俺だ。お前と同じ存在」


 ――訳がわからない!


 ――姿を見れば、どっからどう見ても俺だ。

 けど、何かが違うと主張する灯火流は、彼の次の一言で気づく。


「なのに、何で……何故……お前は、そこまで動ける(・・・・・・・)、そこまでして……」


 言葉を切らし、無表情のままで感情溢れる大粒の涙を流した。


 ――ああ、そっか……


 何かに気づいた灯火流は、彼のに近づく。

 身体は、ボロボロ。

 動けるのもやっとのその身体で、尚も分身に近づく。


 ――昔の俺だ。友香に出会う前の俺だ……


 ※※※※


《数分前》


 草原を駆け走っていた灯火流は、数百メートル先に人影を見た。

 加速を上げ、近づいていくうちに、急速にその速度を下げていった。


「何だ?」


 目の前にいる何者かを視認した時、一言でその人を表した。


「……俺?」


 同じ姿、いや、もはや同じ存在の分身を目の前に全身が固まった灯火流をもう一人の自分が語りだす。


「この先には、行かさない」


 何もに筈の平地、しかし、通せん坊する分身。


「道に迷っていると思ったが、どうやらあってたみてぇだな」


 この先に何かがある。

 それを確信してか、灯火流は笑みを浮かべて続ける。


「俺だか何だかしらねぇけど、ここを通らせてもらうぜ」

「行かさないよ!!」


 戦闘態勢に移行して、灯火流(ニセモノ)は、手を翳し、叫んだ。


()でよ、彼の地に生まれし伝説の焔鳥(えんちょう)の鳳凰、()


 巻き起こされた炎の渦の中から大きさにして六メートルの高さを誇る六つの翼を持つ巨大な鳥が現れた。

 だが、その姿は以前見た、紅の姿ではなかった。

 宿す炎は黒く、自我が感じさせなかった。


「なら、俺も……」


 灯火流(ほんもの)も手を天に掲げ、叫んだ。


「天を焦がす(ほむら)よ、大地を制す紅蓮の炎よ。如何ならぬその光焔(こうえん)で全ての敵を焼き尽くせ、紅」


 灯火流(ほんもの)の後ろに炎の渦が出現し、目の前の巨大鳥と同等の高さで輝かし赤銅の六つの翼を広げて熱風を引き起こす。


「直接会うのは久しぶりだね、紅」

『ふん、抜かせ、小僧。それより、これは、一体どういう状況だ!!』


 手短く説明すると紅は、流石の切れ者で頷き一つ返すと空高く飛びついた。

 その動作を瞬時に察知した向こうの紅も空高く飛んだ。


「聞こう、何故そこまでする?」


 まるで理解できない顔で灯火流(ほんもの)は、問い返す。


「一体何のことだ?」


 こいつは、一体誰だと問うように――だが、灯火流(ニセモノ)は、尚も問う。


「何故そこまで必死になれるんだ?」


 ――何を言ってるんだ?

 友香を助ける以外に何があると主張する表情で最初の一手を繰り出す。

 右拳によるストレートを火力で威力、速度を強化するが、ニセモノにあっさりとかわされ、その上で更に右足でわき腹を蹴り上げた。


「かはっ!」


 俊敏性が高くかつ攻撃の連携に最適さを加えた一撃。

 その威力は凄まじいが、驚くのはその点に関してではない。

 自分自身である以上、ある程度の癖や攻撃手法は、熟知していることは当然。

 けど、今の攻撃での判断力。

 自分自身でも見出せていないカウンターアタック。

 対応する速度が半端なく優れている。


「こりゃ、出し惜しみしている場合じゃないね、炎の鎧」


 電樹戦で使って以来の防御性皆無の攻撃型鎧。

 その動きを見て、ニセモノは、立ち止まって、ぽつりと零す。


「バカじゃないの!?」


 小声で【来い、村雨】と言い放ち、続けて言った。


「その技は、素手で戦う相手にしか使えない。刀を持つ俺等(・・)には無意味」


 苦笑を零し、息を荒げながら灯火流は、身に纏う炎をに触れて言う。


「それは、どうかな……」


 一斉に駆け出し、一直線に突っ走る。


「愚かな、自分から接近をするなんて……」


 掲げた村雨を直撃間近の距離で思いっきり振り落とし、灯火流を斬って―――


「――ッ!!」


 手ごたえは――なかった。

 唯一感じ取れたのは、背中から感じる直撃。


「……な、に……?」


 スローモーションの如き時間の中で、灯火流(ニセモノ)は、子供のような無邪気な笑顔を見せる灯火流(ほんもの)のみ。


 数メートルまで吹き飛ばされたニセモノは、すぐさま立ち直る。


「貴様……」


 納得する様子でニセモノは、目の前に起きた事実を細かく分析する。

 まず、何が起きた?――斬った筈の敵が消えていた。

 それは、何故か?――答えは、簡単。


「――その為に、鎧を……」


 利用した鎧は、気休めの防御の為でもなく、ましてや攻撃の為でもない。

 あの一瞬、笑みを浮かべる灯火流(ほんもの)の顔を見て理解する。

 意表を突き、その隙を狙って本命を繰り出す。


「なるほど、いい手だった(・・・)……けど、もう二度と使えない。この一撃で倒せなかったことを後悔するといい」

「ちっ、マジかよ。割と本気でいったんだけどな」


 軽く舌打ちし、灯火流は、ニセモノと同じく村雨を呼び出しら。


「こっからが勝負だ、ニセモノ!!」

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