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第一章 永久の桜編 第一話

ゴッドコード ~神世界の開門~の続編です。

多少の文法に支障ありかもしれませんが、暖かい目でスルーして下さい。

   1


 ――……

 ――――――……―――――――


「部を立ち上げますわよ」


 ――……?


 唐突に結晶が宣言した言葉に瞠若(どうじゃく)な眼差しを向けながら灯火流は、硬直状態に陥っていた。


「い、今なんと……言った?」


 ―――落ち着け、今の状況を分析しろ。何があった?何故こんな話を聞かされたのか、よく考えて一つずつ、順を追って思い出すんだ!

 ジクからの試練を乗り越えてから早二ヶ月が過ぎていた。

 そして、この頃になってやっと神隠し(・・・)事件から話題の的にされていた神力使いのメンバー達への騒動も落ち着きを取り戻していた。


「ですから、(わたくし)達、神力者で部を立ち上げるのです」


 再び告げられた結晶の発言に灯火流は、顔をしかめる。


「突然何を言い出すかと思えば、何でまた部を立ち上げるという発想に辿りつく……しかし残念だったねクリスタ(・・・・)……」

「……な、何ですの、得意げそうな笑みを浮かべて……」


 動揺の素振りを見せた結晶を観て灯火流は宣言した。


「この神隠高校での部活の立ち上げは、(えら)く厳しくてな。新学年で新入生を募集する時の二ヶ月間、この時期を過ぎると入部も部活を作ることさえできなくなる。だから……君の提案は、教師に話した所で却下されるだけだ」


 灯火流が言い終えると彼の後ろからトンと肩を叩かれる。


「いかんで~、そんな風にレディーに怒鳴ったら。最終的には嫌われるで、灯火流はん~♪」

「風真。しかしだな、折角取り戻した平和だぞ。この部活が出来たら否応なくまた学園中から注目を浴びることになる!」

「それで良えやんか。その方が面白(おもろ)いやろ?」

「何を話しているんですか?」


 前方から現れた長い黒髪の生徒。


「おう、天月はん。いや~、実に面白い話、クリスタ(・・・・)ちゃんがおいら達で部活を作ろうと提案してくれはると言おうるんや」


 天磨は、両手を合わせ顔を赤らめながら呟いた。


「まあ~それは、素敵な提案ですね。私も賛成です」

 

 ――なっ!いや待て、この流れは、マズイ。

 部活を立ち上げるのには、幾つかの条件が必要だ。

 まず第一、部員数が最低でも四人が必要。

 もしこの場で電樹や鏡が現れたら、躊躇(ちゅうちょ)なく入部する可能性が高い。もし興味を持たず拒否しても他のクラスの大地や鉄平、一年にいる種と真白が承諾すれば問題はない。

 ――だが学園の規律がある以上は、部活を作るなど不可能だ。

 しかし胸を奥に潜むざわめきは、一体何だ?


 そう考え込んでいる間に結晶が教室を抜け出していた。


「おい、クリスタ(・・・・)は、何処に向かった?」

「部活を立ち上ると担任の先生に宣言すると言って、真っ直ぐ職員室まで走り去って行きました」

「どうせ、無理でしょう。放って置いてもしけた面で戻ってくるに違いない」

「またそんなこと言うんや、灯火流はんは……」


 呆れ顔で椅子に背中を任せ後ろに身を倒す灯火流。

 どうせ無理だ。教師が規律を破る訳がない、そう確信を持ってにやりと笑っていた。


 ガラガラと教室のドアを開ける結晶。

 彼女は、顔を俯かせながら灯火流の元へ近づいた。


「おう、クリスタ(・・・・)。きっぱり部活を諦めろって教師達から言われたか……」


 結晶(クリスタ)は、未だに俯いたまま何かぶつぶつと囁いていた。


「―――れましたわ……」

「うんうん、きっぱり断れましたわ(・・・・・)……でしょ」


 その直後にクリスタは、飛び跳ねり叫んだ。


「承諾してくれましたわ~♪」


 灯火流の表情は見る見ると色を失っていった。

 怯えた声でクリスタ(・・・・)に尋ねる。


「……いいいいい、一体……ど、ど、ど、どんな手を使って……教師達を説得した……?」


 そう尋ねた灯火流に、クリスタ(・・・・)は、一言も言わずに親指と人差し指で輪を作った。


「――金かよ!お前本当に教師を買収したのか」


 クリスタ(・・・・)は、ため息一つ零し事実を告げた。


「冗談ですわ―――私は、ただ先生方に優しぃ~くお願いしただけですわ」


 彼女の笑顔に背筋が震え出す。クリスタ(・・・・)が言う優しく(・・・)には、何か裏があるに違いないからだ。


「ま、それは、一先ず余所に置いとこう。それで、顧問は、誰がなったんだ?」

「松長先生ですわ」


 ドサッと椅子から転び落ちそうになる灯火流。ドンと机に手を叩き、灯火流は。


「やっぱり、買収したじゃーねぇかー!!」


 叫んだ――


「何をそんな大声出し取るんや」

「だ、だって……あの松長先生だぞ。何者にも動じない、鋼鉄の心を持つ人があっさりと規律を破るはずがない……」


 動揺の表情を浮かべながら、灯火流が語る。

 行動全体に理が存在し、何者にも増さない強い信念を持っているこの教師が始めて自分の正義、(ことわり)を曲げた。

 どんな手を使ったかは解らないが、何かをやったのだけは確実だ。

 その理由も明白にできないまま、クリスタ(・・・・)に渡された鍵の教室へ向かった。

 二つの校舎の(うち)の一つ目、つまり、旧校舎の二階に上った左に回ってすぐに位置していた。

 結晶(クリスタ)、灯火流、天磨が新たな部室に向かう間に、風真は電樹と鏡、真白と種、大地と鉄平を迎えに教室を出て行った時に別行動に移った。

 今は、主に倉庫として使われている校舎の二階、現神力者達の部室。

 その中は、埃に包まれ長年放って置いた印象を第一に与える。


「聞き忘れていたんだけど、俺達の部って、何部なんだ?」


 到着早々、ふっと思い返せば当然として当然の問いにクリスタは、笑みを浮かべながら応える。


「『異常現象研究部(いじょうげんしょうけんきゅうぶ)』ですわ!」


 はぁとため息を息を吐き出し、呆れ顔で灯火流は、内心思う。

 ――やっぱり――っと。

 もし、俺らの能力が見られたとしても、苦し間際の説明で『ただの実験』だと言い訳できる訳だが、果たして……

 けれど、クリスタが説明した、部の立ち上げの理由に思わず関心を覚えた。


「私達は、知り合って間もないけれど、この先(・・・)に私達自身も知る必要があるのですわ。だから表向きは、異常現象の研究と表し、実際は、各一族の情報の供給がこの部の実態ですの」


 この先、つまり無神皇との今後の戦いを意味していた。

 確かに全一族の協力がなければならないのは、明確だ。

 現にジクとの戦いでは、一人でできる範囲が限られていた。

 ――が、しかし――


「部活までする必要は、あるのか?」


 情報提供なら他の方法でできる。態々(わざわざ)部活を立ち上げてまでするの必要性はないはずだが…


「……何を言ってますの?部活では、部費と言う物がありますのよ!それにブンカサイ(・・・・・)……?では、更にマネーが稼げますわ!」


 ゾッと体中から寒気を感じる灯火流は、考えざるを得なかった。


(さすが経営脳が発揮された!)

「さすが経営脳やのう!」


 後ろから聞こえてきた風真の声に全員が振り向く。

 彼の後ろには、電樹、鏡、大地、鉄平、種、そして真白が立っていた。


「部活を作ると聞いたッスけど……本当ッスか?」


 少しテンション高めで問い掛ける大地に、何処か不満げに顔をしかめる灯火流を見て彼に近づく。


「どうしたんスか、灯火流?そんなシワ付いた爺さんみたいな顔をして?」


 ピキッ、と何らかの糸が切れる音を内心に感じ大地に向かって思っていたことを吐き出す。


クリスタ(・・・・)、それでもやはり部活のことは反対だ!どうしてもと言うのなら俺と勝負して勝て!」


 クリスタが灯火流の言葉を聴いた瞬間に眼を輝かせ左手で髪を降らして言い放った。


「その勝負、受けて立ちますわ!」

「じゃあ、勝負は放課後。生徒と教師が帰ってから!」

「いいえ、今すぐに勝負をしますわよ!」


 突然の発言に流石の灯火流も驚きを隠せないまま言い返す。


「今って……まだ大勢の人がいるのだぞ!」

「あら?私達には、あれ(・・)がありませんか?」


 あれと聞けば、一つしか思い浮かばない。

 それは……神の空間(ゴッド・フィールド)のことだ。


「確かに人払いができるが、空間を隔離し、外から侵入するのはできないが広範囲に広げる分目立つんですけど!」


 灯火流に対して電樹が応える。


「その辺は、心配要らないぜ、灯火流。何故なら俺様のフィールドを使うからよ」

「それは、どう言う……」


 疑問に思うしかなかった。電樹が言う『心配は、要らない』とは、一体何なのか灯火流には、理解ができなかったからだ。

 けれど電樹は、灯火流を見透かすように応える。


「俺様のフィールドを発する時に電子パルスを放つことができる。その時に回りの人の脳に直接電子パルスを送りフィールドを見えなくするのも可能だ」


 電磁パルス、別名EMP――ELECTROMAGNETIC(エレクトロマグネチック) PULSE(パルス)の略称だ。

 電波の一種で脳が神経を通して体に命令を送る信号弾でもある。

 普通なら微少の出力で、体から放出するのは不可能だが、あらゆる電流、電圧、電子を操ることのできる電樹(かれ)なら可能だろう。

『神の空間』を発動した電樹で校庭を覆い尽くし、同時に見えない電磁波を学園を囲むように放たれた。

 その電磁波は、生徒、教師と学園の従業員全員の脳に直接干渉し、幻影を見せる。

 校庭には何もなく、どんな衝撃も感じられない(・・・・・・)ように操作した。


「では、準備は宜しいですはね、紅城君」

「ああ、いつでも掛かって来い!」


 掛け声と共に緊迫した空気へと変貌を研ぎ、クリスタ(・・・・)は一言を言い放つ。


「貴方に一言言って起きたかったことがありましたわ……」

「……?」

(わたくし)をクリスタと呼ぶのは、舐めなさいな!!」


 遅過ぎる彼女の反応に気を()られ、クリスタから仕掛けた攻撃に一瞬見逃しかわせるはずが左腕に直撃する。


「がぁ!……」


 腕を押さえながらクリスタを凝らしめて見る灯火流は、彼女が既に詠唱をし始めているのに気づき、警戒態勢に移行する。


「《氷心臓(フロースハート)に仕える神獣よ、我が名の下に現れよ。三千世界を凍り尽くす獣よ。顕現せよ氷狼(ひょうろう)白銀(ホワイト)(ウルフ)》」


 白く美しい毛並みを揃えて、貴賓全開で漂わせる狼が現れた瞬間辺りの気温が急激に下がる。


「い、いい、一気に気温が下がりお、おったな……」

「当然だろ、氷の使い手なら辺りを冷やすのも容易だわ、それに……」


 鏡を言葉を遮り灯火流に振り向いた。


()も同じだからさ――」


 左腕が完全に凍結してしまった灯火流は、それをじっくりと診てからだの芯から熱を呼び起し左腕に送り込んだ。

 結果として凍結した腕は、見る見る溶け出し動けるまでに約数秒も掛からなかった。


「さすがですわね、これくらいやって貰わないとつまらないですわ!」


(神獣を早速使って来やがった!)


「俺は、まだ満足に鳳凰を呼び出せねぇってのに、クソ!」

「心の声が駄々漏れですわよ、紅城君」


 そう言われて『はっ!!』と気づかされ、顔をしかめ、本気で悩み始める。


「灯火流、大丈夫かな……」

「元から強いとはいえ、能力を覚醒させてから半年すら経っていないからな、その代わりにクリスタは覚醒と共に神獣を従えさせたと聞いた。この勝負は、圧倒的に灯火流が不利だ」


 近くで二人の戦いを観賞している他のメンバー達は、灯火流(かれ)が置かれている状況を説明する。

 悩んでいる灯火流の隙を見て攻撃を仕掛けるクリスタに対して、やはり反応に遅れを突き付けられ、かわすのがのがやっとの状態である。


(何かないのか。この状況から打破できる何かが!)


 脳内をフル回転させ、何かを考え込む。


『がおおおおおおおおおおおおお』


 ホワイト・ウルフが襲い掛かる姿を見ていると直ぐ様逃げ出す様子を見ながら高笑いで自分で作り出した氷の玉座に座り付いていた。


「お前ぇー、戦う気あるのかぁー」


 不思議そうに首を傾げ、答える。


「何を言ってますの、これも立派に戦ってますわ」


 正論を指摘され、悔しそうに顔をしかめ、またしても不意を突かれたのかホワイト・ウルフが後ろから襲い掛かる。

 ――が、その瞬間の出来事に誰もが説明できなかった。

 床に刻まれた炎の軌跡――そして、ウルフの右腕に刀傷がそこにあった。

 手許をに自然と目が向きジクとの戦闘で手に入れた刀が姿を現していた。


(そういえば、俺にはこの刀があった)


 全神力をこの一点の攻撃に集中させ、以前の鏡との勝負を思い出す。神獣を倒せば術者は、神力切れでもう攻撃は仕掛けられないのを。

 手前に刀を突き付け時計回り円を描いた。

 そして、クリスタは何かを察知してかホワイト・ウルフにすぐに戻るようにと命じ、両者は叫んだ。


炎刀(えんとう)炎輪斬(えんりんざん)】/【絶対零度(アブソリュート・ゼロ)


 円を描かれた輪からは、マグマにも似た濃度の高い炎が噴出し、その勢いでクリスタのいる方向へ向かっていた。

 一方で、ホワイト・ウルフは、強度の高い氷に身を纏わせ、回りの温度を急激に下がらせ、足許を固定、眩い光を口から発現させ広範囲に打ち放った。

 両者の放った攻撃で結界を壊す勢いで激しくぶつかり合い、押しに押した結果――


 ――……――

 ―――………―――


 辺りが煙の中に包まれ、勝敗の行方を待つのみ……


「はぁはぁ……」


 結界内、中央辺りに土煙が薄らいだとこで灯火流の影を視認する電樹と真白。


「あっ、灯火流君」


 勝ったかと思った矢先に灯火流の対象的の位置にクリスタとホワイト・ウルフも同じように立っていた。


「どっちが勝ったんだ?」

「こ、これは~?」


 先に灯火流が膝を床に付き勝負がついたと思われたが、数秒後にホワイト・ウルフが姿を消し、息を切らしたクリスタも同じく膝をついた。


「ひ、引き分け、なのか?」


 両者共に動けず、神力切れな様子は、見て取れた。

 が、しかし、立ち上がろうとしているクリスタだが、彼女より先に灯火流が立ち上がり彼女の方に近づていった。

 僅か数センチまでに接近した灯火流は、笑みを浮かべながら右手をクリスタに差し出した。

 その手を取り、クリスタは、立ち上がりまでの数秒間、眼を閉じたままで呟いた。


「今回は、引き分けましたが。私は、まだ諦めませんの。君に認められ……私は、この部を立ち上げますわ」


 灯火流は、笑みを向けたまま沈黙したままクリスタが立ち上がると彼女に対し言った。


「その必要はもう……ない」


 その言葉を聴いたクリスタがどの意味で捉えたのかは知らないが、聴いた瞬間灯火流の手を振り払い怒りの目線を彼に向けた。

 けれど、灯火流が返した言葉は、彼女が想像もしていなかったものだった。


「闘う必要はもうない。君の勝ちだ」

「……え?」


 動揺を見せ、意味が判らないと言わんばかりに首を傾げる。

 その様子を察するかのように灯火流は応える。


「実は、さ……君が部を立ち上げたい理由を聞いてから認めていたんだけど、どれだけ本気なのかを量らせて貰ったんだ」


 ふん、と鼻で笑い、『何ですの、それ』と小声で囁き、他の連中も二人の傍まで近づいた。


「これで、私達の部、異常現象研究部が立ち上げられますわ」

「それは、それとして部活の活動内容は、どうするんだ?流石に先生に、根本的な活動も用意しない訳にはいかないからな」


 部活を持つ為の二つ目の条件は、部活動が明確であることが必要である。

少し悩んだ末、クリスタは、満面な笑みを浮かばせながら両手で軽くポンと叩くと呟いた。


「それは~、これから考えますわ~」


 如何にもお嬢様って感じで、いや彼女だからこそと考えるべきなのだろう。

 クリスタの父こと、氷心臓(フロースハート)氷帝(ひょうてい)は、今や世界に名を轟かす大企業、白狼(びゃくろう)の現社長が成功したように、クリスタもまた多くの企画に参加、その才能が発揮されてから失敗という文字が付け入る余地はないとも言えた。

 完璧さ故にどんな土壇場でも完全に収めることができる彼女に取っては、後から考えたとしても大して問題ではない。

 はぁ~とため息を吐き出すと『後で俺が考えとく』と呟き、クリスタも大いに喜んだ。


「な~に、案外優しいではないか、灯火流はん」

「それは、違う。ただ活動内容に案が思い浮かんでいただけだ」


 照れ隠しも甚だしく首を振る。

 またまた~と急かす風真、その余所に笑う仲間達。

 結界を解いて、何もなかったかのように学校の生徒達が下校していく。


 その後、部活動の内容について話した。

 ――そして、学園内をメインに色んな所の奇妙な出来事、または不思議な体験をした生徒からの相談を受けて、それらを解決することとなった。

 それらもいずれ何らかの無神皇と関わりがあるかもしれないという点で皆と一致したからだ。

 部活創立から二週間後、学園内で頻繁に耳にする噂が広まっていた。

 その噂について異常現象とでも言われる内容が含んでいた。

 学園の裏山の頂上に立つ一本に樹の話。

 教室のクラスメイトから聞いた話では、その樹の下で好いている女性、あるいは男性に告白

を行うとその恋は必ず成就すると言われている。

 例外はもちろん――――ない。

 そして、その樹の正体が桜だって言うこともこの噂の重要なポイントでもある。

 一月末にいるにも関わらず満開に花弁を咲かせている桜は、明らかに季節外れとは、とても言えない。

 しかも話の先を聞いて見ると、どんな季節が訪れてもその花が枯れることなく満開を保ったままだという。

 その桜に付けられた名が『永久(とわ)(さくら)


 ■■■■


 放課後――旧校舎二階(異常現象研究部―部室)


「これは、独自に調べようと思ったんだけど、今噂になっている永久の桜…あれが無神皇が関わっている可能性が高い……と思う」


 少し悩みげな感じで部活設立の最初の活動を発表する灯火流。

 だがしかし、そこにいる全員が一度に眼を合わせ、こくりと頷く。

 一同は、永久の桜が立っている山の頂上を目指し、まさに()の光が隠れようとする放課後の時間帯だった。

 辺りも暗闇に包まれそうになっている状態での登頂は、冬の半ばながら寒さを増していた。

 完全に闇が辺りを包み出した頃に一同は、山の頂上に辿り着こうとしていた。


「なあ~、灯火流はん。じぶんの炎で明るくでけへんかな。暖くもなって一石二鳥やで」


 弱音を吐き出している風真の願いを聞き入られずとも近々そうするつもりだった灯火流は、頂上を見た瞬間に炎を出すのを止めた。


「どうしたん~?何で火を消すん?」


 けれど、目の前の景色を見ていた灯火流と同じ目線になり気づく。

 炎など必要ない程の光がキラッキラと輝いている桜の樹。

 花弁一枚一枚に光が宿り、淡いピンク色の景色が辺りをまるで絵画のように写って見えた。


「き、綺麗、です」

「ああ、とても綺麗だ」


 感心しながら感想を呟く真白と灯火流。

 目的さえ()(うし)かねない美しさに魅せらる。

 けれど、一同の中で鉄平が樹の中から物陰を発見し、皆に伝える。


「おい、樹の中心部から誰かが……」


 彼の言葉に一同は、一斉に樹の中心部に視線を向ける。

 確かに誰かがいるようにも見える、が近づかなければわからない程度でしか視認できない状態だった。

 けれど同時に何か違和感を感じた。

 近づいてはいけない、そんな予感が頭を過ぎった。

 ――が、しかし、ここで引いては、来た意味もなくなるのが嫌なのか、警告する本能を無視してまで一歩前に進んだ。

 そこでやっと、思い出す。担任の櫻庭(さくらば)先生から聞いた話を……


 あの樹には、少女がいると。毎日、何度も観察してきたけど、どんな日でも、どんな時間帯でも桜の枝から降りない少女の姿を何度も確認していたことを。

 緊張のあまり息を呑み込みながら一歩一歩、ゆっくりと近づく。

 そして、物陰の姿が視認できる圏内まで入った一同は、同時に眼を丸くする。

 花弁の光の中に、先生が言っていた長い黒髪の少女を発見した。

 しかも、同じ学校の制服まで着ている。

 けれど彼女からは、何らかの違和感を感じ続けていた。


「君は、誰だ?」


 低めに問う鏡に、少女は一同を見て驚く。


「あわわわわ。お兄さん方、私のことが見えるんですか?」


 鳴り響く可愛らしい声と意表を付けられ、つり目でクールな凛々しくも感じ取られる姿とのギャップが半端ない。

 あまりの慌て振りに枝から床へと落下し、何とか着地は成功した。

 声の高さからして驚くのに、ドジっ子めいた口調で慌てる姿が何と表現したらいいのか、その回答に非常に困る。


「のほ~、その声、その美貌、正しくおいらが求めてきたタイプの女性や!な、自分の名前を聞いてもええか?」


 風真に対しドン引きする一同に、こほん、と咳払いした結晶が冷静さを取り戻し、神隠学園の制服少女に尋ねる。


「改めて問いますわ。貴方は、何者ですの?君からは、人知を超えた力を感じますわ」


 結晶の問いに少し戸惑いながら首と両の手を振りながら応えた。


「何を言っているかな……私は、こう見えて普通の女子高生ですよ~。だけど、君の問いには、応えられないな……私、記憶がなく、て……名前も思い出せなく、て……てへへへ~♪」


 苦笑しながら、けれどどこからどう見ても彼女が発した口からは、切なさが滲み出るようにしか取れなかった。


「記憶喪失ってことか……」


 後ろから鉄平の呟きが聞こえる。

 制服の少女はこくりと頷く。

 釈然としない灯火流は、あえて言わなかった問いを彼女にぶつける。


「じゃあ、君は、何故いつもこの桜の樹にいるんだ?」


 灯火流の問いにまたして切ない顔で応じる。


「それは……私……この桜の樹から離れられないの。離れてもいつの間にか、またこの樹に引き寄せられるように戻っている」


 その理由も知らず幾度となく長い時間が過ぎたと言う。


「じゃあ、さあ、おいら達と一緒に帰ろうや」

「……っえ?」


 突然の風真に動揺を見せる少女。


「何を言っているんだ貴様は、先聞いたじゃないか。彼女が離れられないって」


 けれど風真は、笑みを消すことなく彼女を除き一同に囁く。


「こうでもしないと、彼女が離れられん理由解らんではないか」


 なるほどと納得する一同に悟られないよう態度を180℃変えずに器用に対応しながらさり気無く彼女を樹から突き放そうとした。


「そうだよ。君が離れないようにおいら達がちゃんと見るッス!」


 真っ直ぐな志を感じ取らせる大地の言動の効果があったのか、まだ知れぬ少女の表情からは、安堵が捉えられた。


「わ、わかりました……それじゃ……お願いします」


 クールな眼差しを向けながら彼女から発せられる声にはまだ慣れない一同だが、不思議と心が暖まるのを感じた。

 彼女が桜の樹から離れて数歩、桜から光が弱まり始めた。

 一斉に振り向き何やら寂しい光景を見詰めているようで心地よくない気持ちを誘う。

 これも永久の桜と呼ばれる樹が起こす現象と思い込ませ先を急ぐ。

 数メートルを進んだ所で樹の輝きがまさに消え行こうするその時―――

 少女は、魂が抜かれたように180℃振り返りゆっくりと樹の元へと歩き始めた。


「おい君、どこへ行くんだ……」


 鏡が言葉を終わらせる前に灯火流は、右手で鏡と女性の間に「よせ」と言わんばかりに立ち防ぐ。


「君は、誰だ?」


 灯火流の意外な問いに全員が戸惑う。けれど冷静になれば、少女からは、先までの雰囲気とは、別の何かと摩り替わっていた。


「ほう、主も中々じゃのう。(わらわ)の気配を感じ取るとはのう……くふふふ、面白い」


 打って変わった少女の口調と声調(せいちょう)に皆が驚く。


「妾の名は、クロノスティア時間軸を司る神じゃ」


 神関係とは、調査前に予測していたとはいえ完全に当て()まるとなるとどう対処していいのやらと考えてしまう。

 が、そう考える前に、恐る恐るクロノスティアに一つ尋ねる。


「クロノスティア、君は、無神皇とは、関わりがあるのか?」


 灯火流の言葉を聞いたクロノスティアは、首を傾げ、何の話だと応えた。


「妾は、この小娘の願いを叶える為十年もの間、この樹を守って来た。その為に彼女自身の体を通して今までこの世で干渉できたのじゃが……汝らも一体何者じゃ?この小娘は遠の昔に霊体というのに」


 その事実をあっさりと告げるが―――言い換えればクロノスティアが未だ知らぬ少女の情報を告げたことにもなる。


「あの時果たされなかった約束を果たす為に自らの身体を明け渡した彼女は、おそらくじゃが二週間もないじゃろ」

「「―――!!」」


 霊体と言えど限界があり、十年間体内に神を宿す例など当然なく……仕方のないことなのだと頭では、理解しているけど……


「それじゃ、あの子が、可愛そ、すぎるよ……」


 涙目で真白がぽつりと零す。


「それなら……」


 と結晶が話を繋げる。


「私達に任せなさいな。何せ私達は、悩まれる学園の生徒を助けるのが目的ですから」


 正義感漂わせる結晶の発言に皆が同意する。


「これも何かの(えにし)、だからその子の願いを手伝わせてもらおう」

「何を言っているんだ、鏡。カッコつけて……」


 ええ~、と言いながらもすぐに黙り込んだ。


「けど、どうするんだ、手伝うって言っても手がかり一つのないまんまではややこしいぞ」


 確かに、と今後の行動に影響しかけない案件に悩ませる。しかし、その悩みについてクロノスティアが一言を言い放つ。


「その人ならあの学園の中におるぞ」

「「っえ?」」


 ――……――


 沈黙がこの空間を支配していた。


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