表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

翔ぶ者

誤字脱字や誤った表現がありましたらご指摘くださると助かりますm(_ _)m

私は陽向の妹、如月 夕陽と向かい合って佇んでいた。


「まさか…夕陽と当たるなんてね…。」


「あたしもびっくりですよ〜空里先輩。でも…」


夕陽は右手をかざす。


「手加減はしませんよ、先輩。…力を貸して、来て、妖刀『斬雨(きりさめ)』。」


夕陽の目の前に蒼い刀身の短刀が出現した。


刀よりは短いが、ナイフよりは遥かに長い。


「先輩として…全力で相手をさせてもらうわ。」


空里は右手をかざしてこう言った。


「力を貸して!!『紅蓮の魔剣(レーヴァテイン)』!!」


紅蓮の炎に包まれ、紅い長剣が姿を現す。


夕陽は主に水属性の魔術と剣術を使う。


私は炎属性の魔術と剣術。


属性では圧倒的不利。


『Are you ready?』


夕陽は左手を前に、短刀を後ろに構える。


私は長剣を両手で持ち、中段に構える。


『Let's Combat start!!』








そのころ、俺は朝陽と並んでこの試合を見ようと待っていた。


「なぁ、朝陽。」


「なんですかぁ?おにいさまぁ?」


「えっとね、離れてくれないかな?」


さっきから俺の腕にしがみついて離れない。


ほら、当たってるからね?


朝陽の豊満な胸が俺の腕をサンドしている状態である。


俺も1人の男だからね?ハメ外したらどうすんのさ。


妹だから流石にないだろうけどさ。


「嫌ですよぉ〜こういう時じゃないと独り占めしてスキンシップ取れないじゃないですかぁ〜?」


あ、はい。わかりました。


そういえば朝陽や夕陽が俺にスキンシップとかを求めるようになったのはいつごろだろう。


前の学校からこっち編入するから帰ってきた時は、初っ端なにも躊躇わずに抱きついてきたから、それより前か…。


学校が少し遠いからという理由で家を出るときは抱きついたりはしなかったから…。


俺がいなかった1年何があったんだ?!


まあ、それはまたいずれ聞くとして。


そしてそんなやりとりをしていると、空里と夕陽が実況の紹介とともにフィールドに立った。


「はぁ…。まあいいや、なぁ朝陽。」


「なんですか?」


「この試合、勝つのはどっちだt」


「空里さんじゃないですか?」


即答された。


「はは…。まあ、属性の相性で言えば夕陽のほうが優勢だけど…単純な力量を考えると空里のほうが強い。でもまあ、正直わかんないな。予測ができない。」


「おにいさまが予測ができないなんて珍しいですね。」


「それほど面白い試合になるってことさ。ほら、始まるよ。」









私は一気に駆け出し、夕陽との距離を一気に縮めた。


少し夕陽の顔に笑みが見えたのは気のせいか?


「『死色の海(ヨツンヘイム)』。」


夕陽はそう呟き、短刀を振り上げ、凄まじい勢いの水流が私に押し寄せる。


私は目を見開いた。


回避しなければと思うが既に限界まで加速された自分の身体を止めることはできない。


ならば、


「斬り開く!」


私は長剣を右から左に薙ぐ。


だが、


「斬れない?!」


そして夕陽の声がした。


「先輩…水は斬れませんよ?呑み込んで、斬雨!」


そしてその水流は私を呑み込んだ。


『おおっと!これはなんだ?!巨大な波が!早乙女選手を呑み込んだー!?先生!これは?!』


『『死色の海(ヨツンヘイム)』だね、相手を巨大な水流に巻き込むんだよぉ〜♪けど正直、威力は皆無だよ?でもさ、早乙女ちゃん見てよ。』


私は今、水流に呑み込まれたが、そのもののダメージは受けてないのに…。


『これはどういうことだー?!早乙女選手!斬撃を浴びたような傷を負っています!』


「これは…?」


と私が問う前に夕陽が答えてくれた。


「『斬撃の雨(テネシースコール)』。私の特殊能力(ユニークスキル)ですよ。」


なるほど、つまり、彼女の特殊能力(ユニークスキル)の効果は…


「水を斬撃に変える。」


「ご名答です。先輩。」


厳密言うならば、ある程度水には勢い必要だ。止まっている水には効果は発揮できない。


そして水そのものを斬撃に変えるというより、水に斬撃を織り交ぜる、というほうが適切か。


つまり、夕陽が発動する水属性の魔術には、もれなく斬撃とセットになってくる、というわけだ。


「しかもこれ…海水…?傷にしめるんだけど…。傷口に塩を塗るってのはまさにこのことね。」


夕陽は海水を形成することができ、『斬撃の雨(テネシースコール)』とコンボで使うと、相手にダメージがはいる。しかも塩の濃度はかなり高い。


しかし、これはかなり厄介だ。夕陽の水の魔術を撃墜しようにも水だから斬れないし、当たれば斬撃のダメージがはいる。


ならば、


「蒸発させればいいんじゃない?」


「え?」


夕陽はその発想はなかったというような顔をする。


「考えていなかったようね。」


「べ、別にそんなことはありませんよ!」


夕陽は頬を膨らませそう訴える。


「『死色の海(ヨツンヘイム)』!!」


もう一度夕陽は激流の化した水を放つ。


「同じ手は二度食わないわ!」


長剣を振りかざして、


「『紅槍の雨(クリムゾンレイン)』!!」


陽向との模擬戦ときにも使った技だ。


ただ、あの時と違うのは、相手をひれ伏すことではなく、迎撃であること。


散開した無数の紅蓮の槍が激流と衝突する。


蒸発した。


『おーっと?!?!蒸発しました!蒸発しましたよ!』


水を瞬時に沸騰させ、蒸発させることができるということは、


「火力ありすぎでしょ…先輩。」


ということだ。流石の夕陽もこれは驚きを隠せないようだ。


まあ、正直に言うと私もダメもとでやってまさかできるとは思ってなかった。








「え、えぇぇぇぇ?!?!」


立ち上がって朝陽は驚いていた。


「うるさいな、座れよ。」


「だだだだって!蒸発したんですよ?!瞬時に!!!」


「んま俺も驚いたけどさ。」


うん、驚いた。火力高すぎだろ。いや、ちょっと違うか。


「これは本当にわかりませんねぇ〜♪」


「そうかな?」


「え?」


俺は大体読めてきた。


「この勝負、…の勝ちだな。」


「え?嘘でしょ?!」


「まあ、見てな。」


俺たちは試合を見守った。


空里本人は…気づいてないんだろうな…。









「やっぱり…一筋縄ではいきませんよねー。」


夕陽はあっぱれといいたげな顔をしている。


「一筋縄でいかれたらこっちメンツ丸潰れじゃないの。」


「ははっ、ほんとですね。でも、」


夕陽は真剣な眼差しでこちらに向かって言い放った。


「それでもあたしはあなたに勝ちます!あの人が見てくれているから。」


「そうね…でも、こっちも負けていられない。決着をつけましょう。」


「そうですね。」


夕陽は短刀を腰当たりに水平に構えて、腰を落として構える。


私は長剣を後ろに引いて腰を落とす。


「もっと力を貸して、レーヴァテイン!」


私の頬に紅い紋様が浮かび上がる。


「力を、もっと力を、斬雨。」


夕陽の頬には蒼い紋様が、そして、


「『雨の災厄(レインズリバイブ)』。」


短刀に水の渦が巻く、そして夕陽は一気に駆け出す。


「『地獄の業火(ヘルフレア)』!!」


長剣に紅蓮の炎を放っている。そして私も駆け出した。


接近し、互いの剣の間合いになり、剣を振り斬ろうとしたその時、


力が抜けた。


そして私は剣を取り落としそうになる。


私の技は強制的にキャンセルされる


また夕陽は技をキャンセルし、私の後ろに回り込み、短刀の峰で叩いた。とん、と。


私はそのまま崩れ落ちた。


『おーっと!これはどうゆうことだ?!早乙女選手!その場に倒れこんだー?!』


「どう…して…?」


私は訳がわからなかった。


「早めに気づいとくべきでしたね、先輩。」


夕陽は淡々と続ける。


「初撃で私の死色の海(ヨツンヘイム)をもろに受けてしまったのがあなたの敗因です。傷口に塩を塗ると言いましたが、なぜ痛いと思います?」


私はもう言葉すら発せない。


首を横に振る。


「人間は傷をつけられると細胞分裂して細胞を増やして傷口を塞ぐんです。ですが、塩を塗ることでその作られた細胞を破壊するんです、だから痛みを生じます。さらに私が形成する海水には奇岩塩(きがんえん)という塩が含まれていて、さらに濃度はかなり高いんです。それこそ、作られた細胞を破壊するだけでなく、元々ある細胞をも蝕んでしまうくらいに。」


私には、もう夕陽の顔を見ることができなかった。


「痛みには慣れれば耐えられますが、傷口は広がる一方ですし、傷口を塞ごうと身体が細胞分裂を強制的に活発化させてますから、気づかないうちに、先輩の身体は悲鳴を上げていたんです。」


それが…私の敗因…。


そして私は意識を手放した。


『勝者、如月 夕陽!』


このアナウンスだけはしっかりと聞こえた。

残念ながら空里は負けてしまいましたね。ですが!まだチャンスはあります!


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ