現す者
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『Let's Combat Start!!』
戦闘が開始した。
俺は牽制でブレザーの下に仕込んである投げナイフを取り出す。
「やっぱりね…。」
「なに…?」
影斗がにやっと笑った。
「この学園の校則。」
「あ…。」
気づいた、俺は気づいた。
こいつが、全部わかっていることに。
1週間前に俺は投げナイフを使わなかった。というか普段は使わない。
これは影斗を欺くための手段だったのだが、
「この学園の校則上、男子のブレザーのボタンはつけないといけないんだ。たとえこのような大会でも。」
俺は歯ぎしりをした。
こいつ…やっぱり強い…。
「君は投げナイフも使うから…そのためにはボタンをつけると取り出しにくい。」
そう、俺は基本ブレザーのボタンは外している。
しかしこれは校則に反するため、理事長の許可がいる。
俺は理事長に言ったのだ。ボタンをつけると戦いにくいと。
そのため、学園では俺だけ許されている。しかも、
「そのブレザーは特注品だろ?」
「くっ…」
そこまでわかったのか。
確かに俺のブレザーは投げナイフが仕込みやすいように工夫が施されている。
「だから…僕は君の使う武器が刀だけじゃないなって思ったんだよ。」
やつは…全部わかっている。完璧に俺をマークしていた。
その上俺には情報を渡さない。
強い。
俺はこんな強いやつと戦っているのか。
そう思うと身体が疼く。
スタンドでは、
「あぁ〜あ、バレたかぁ〜。」
と夕陽が残念そうに言った。
「ですねぇ〜、睦月 影斗、やりますね。」
と続いて朝陽が言った。
「え?え?なに?なに?」
空里はわかっていないようだった。
「さぁ〜はじめようか、陽向。『環境変換』。」
「なっ?!?」
影斗の言葉と同時にフィールドに森が出現した。
『おーっと!フィールドが一瞬にしてジャングルと化しました!!これはどうゆうことでしょう?!』
と実況の声。
続いて解説の声。
『睦月の特殊能力ね、『幻影』。影を操る能力よ、あと、この技は簡単に言えば影を作り出す能力。『幻影』は使い場所を選ぶわ、それは影がある場所。だけど、闘技場のフィールドには影はない。だから森を出現させることで影を作り出したの。』
そして、次の瞬間には影斗は影となって消えた。
俺は投げナイフを投擲したが間に合わなかった。
「くっそ…。」
俺は感覚を研ぎ澄ます。やつの気配を…
「…っ!そこだ!」
俺は刀身を走らせるが空を切った。
外した?!
今のは確実にそこだったはずなのに。
避けられたのか?
いや違う。
次の瞬間俺に向かって斬撃が襲った。
「っっ!!??」
次々と斬撃が襲ってくる。
「ぐはぁ…?!」
俺は血を吐き出す。ブレザーが斬られ、仕込んでいたナイフが落ちる。
『陽向選手やられっぱなしだー!』
実況の声が響く。
気配がない?!
さっきから気配を辿るが全く感じることが出来ない。
「『環境変換』は簡単に言うなら影を作り出す能力だ。そして、さっきから見えないだろう?僕が。」
見えないはわかっている。なら感じればいい。その考えだったのに。
こいつがいっている『見えない』は気配がわからないことだ。
俺は仮説を2つ考えた。
1つは本当に気配を消していること。
2つ目は近くにいないことだ。
おそらく後者だ。気配を消すなど不可能だ。ましてや攻撃しながらだ。
今俺を斬っているのは影斗本人じゃない。
「はははははっわからないだろぉ〜
?なにもできないだろぉ〜?」
と影斗は高らかに笑う。
それに対し俺は、にっと笑みを見せた。
「おにいさま?!」
「兄貴?!」
「陽向?!」
3人の声が重なった。
それもそうだ。陽向がボロボロにやられているのだ、心配だろう。
「おにいさま…もういいじゃないですか…。」
「兄貴…いいよ…使ってよ…。なんで意地張ってんの…?」
空里は2人の言葉の意味がわからなかった。
だが、陽向は笑っていた。こっちに向かって。
2人の姉妹は陽向の笑みの意味を悟った。
すると朝陽が空里に向かってこう言った。
「空里先輩…今から、兄は本当の力を使います。」
「よく見といたほうがいいですよ、先輩。」
「え?え?どうゆうこと?」
空里はわからなかった。
「どうした千剣、何がおかしい?」
「あぁ、俺の剣はお前を捉えた。」
わかってたじゃないか、やつが影を操って武器を形成することが可能なことを。
「あはぁ?」
「もっと力を寄越せ!陽炎!」
俺の頬に黒い紋様が浮かび上がる。
「今更同調を使っても同じだよ。」
「ははっ、それはどうかな…。開け!」
俺は刀をフィールドに突き刺した。
「…何する気?」
「こうするんだよ!『ユニゾンサイス』!!」
すると俺の周りに植物のように光の刃が生えてきた。
「散開しろ!!」
すると光の刃は散開した。
「え?嘘だろ。」
影斗の声。
そして刃が何かを斬った。
「そこか?!」
俺の真後ろ。少し離れているが、俺は最高速度で走り出す。
周りの木ごと一刀両断したため、周りには立っている木はほとんどないが、影になにかいる。影斗だ。
俺はそれに向かって全力で斬撃を振るう。
「乱舞『紅月災禍』!!」
血しぶきがあがる。
そして姿をくらましていた影斗が姿を現した。
「まだ、終わらな…ぐはぁっ?!」
俺が鞘に刀を納めると、もう一度なにかに斬られたように血しぶきがあがり、影斗はその場に倒れた。
「『追い討ち』。言ったはずだ、俺の剣はお前を捉えたと。」
『ここで決まりました!影斗選手戦闘不能!勝者!如月 陽向!』
歓声が沸いた。
「やりましたよ!おにいさまー!」
「やったよ兄貴ー!」
姉妹は2人で抱き合いながら喜んだ。
「な、なに…今の…」
空里は口をぽかんと開けている。
すると朝陽が得意げに言い始めた。
「まず、『ユニゾンサイス』ですが、あれは、おにいさまの特殊能力です。刃を張り巡らせて相手を斬るんです。刀を地面や壁に当てるという予備動作が必要ですが、1度発動させれば光が消えるまでおにいさまの思うままに操ることができます。ですが…おにいさま…かっこつけたかったのでしょうか…刀を深々と刺しましたね。当てるだけでいいのに…。」
最後は朝陽は苦笑していた。
次に夕陽が、
「最後、睦月がなにかに斬られたように見えたけど、あれは兄貴のもう一つの特殊能力、『追い討ち』。相手を斬った回数と同じ回数で追い討ちをかけるように斬りつけるんです。さらにいつでも発動可能なんです。例えば、1回斬った後すぐに発動して1振りで2連撃することが可能なんです。なのに…兄貴…鞘に納めてからすべて発動って…かっこつけたかったのかな…。」
夕陽も最後は苦笑していた。
「「でも!」」
2人声を揃えて、
「かっこいいですおにいさまーー!!」「かっこいいよ兄貴ーー!!」
陽向はこっちに向かって笑顔でガッツポーズを見せてくれた。
陽向にはまだまだ秘密があります!
次回もお楽しみに!