来たる者
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「ふぅ〜やっと終わった。」
影斗と遊園地で遭遇してから約1週間が過ぎようとしていた。
影斗に襲撃されたことは妹たちには話しておいた。
すると朝陽が、
『絶対に警戒すべきです!警戒を怠らぬようお願いしますね?!』
と言われたので警戒しながら授業を受けたので余計に疲れた。
金曜日の授業が終わり、俺は寮に戻ろうと廊下を歩いていると、
「ねぇ、陽向。」
と不意に後ろから声をかけられた。
そして俺が後ろを振り向くと空里がいた。
「ん?なんか用?」
「いや、大したことじゃないんだけどさ、あなた、寮に戻るの?」
「え?そうだけど。なんで?」
「なんでって…まさか、知らないわけじゃないでしょうね。」
「何が?」
空里の言いたいことがさっぱり分からない。
そして空里は呆れた顔でこう言った。
「まさか本当に知らないとは…。いい?来週には学園で行う大会があるのよ?」
「も、もう一声。」
まだ俺はわからない。
「もう、帝学剣術魔術大会よ!」
帝学…なんだって?まあいいや。適当に流しとこう。
「あぁ…はいはい。なんかそんなのがあるって聞いたことあるな。それがどうかしたの?」
「どうもこうも…鍛錬とかしないの?」
「あぁ〜、したほうがいいね。」
俺はだるそうにそう言った。
「そんなに適当でいいの?!帝学剣術魔術大会よ?!」
帝学…剣術…魔術…大会。
「あ。」
俺は目を見開いた。
「え?!来週なの?!?!」
「そうよ!?知らなかったの?!」
「知らねぇよ?!なんで教えてくれねぇんだよあのクソ親父!?」
思いだした。あれだ。帝学の生徒総勢で行う、剣術や魔術を用いて競い合うやつだ。
親父…覚えとけよ…。
俺は家に帰ったら親父を1発ぶん殴ってやろうと思った。
かなり重要な大会なのに。
この学園では、学ぶことより、実力があるかどうかが重要になってくるため、この大会で実力を発揮しなければならない。
つまり、俺の場合、魔術の単位が取れなくても大会で勝てば卒業できるのだ。
「よし、そうと分かれば鍛錬だ。」
「切り替え早っ!?」
と俺と空里が移動しようとしたその時、
「ひぃ〜なたぁ〜??」
と聞き覚えのあるような声がした。
「なんだ、お前か。影斗。」
「失礼だなぁ〜陽向は。」
歩いてきたのは約1週間前に陽向と剣を交えた睦月 影斗だった。
「で、ひとつ聞きたいんだが。」
「ん〜?何〜?」
「なんでうちの学園の制服を着ているんだ?」
「え?知らないの?僕はこの学園に編入してきたんだよ?」
そんなことを言うので、俺は
「は?!」
となった。
聞くところによると、1週間前に影斗が俺に襲撃したのは睦月家の命令ではなく、影斗がただ単に、俺が気になったからという実に単純な理由だった。
「1週間厳重に警戒していた俺が馬鹿見てぇじゃねぇか。」
「うん!馬鹿だね!」
と影斗にはっきり言われた。腹立つなこいつ、殴りてぇ。
「てことでよろしく!陽向!」
「よろしくじゃねぇよ!真っ平ごめんだよ!!」
それでも影斗は楽しそうにヘラヘラしている。
「で、そーいやお前、3年なのか?」
「そーだよぉ〜。」
そう、帝学の制服はブレザーで、男子はネクタイ、女子はリボンといった感じでそれぞれ学年ごとに色が違う。
1年の朝陽や夕陽が赤。2年の俺や空里が青で、3年が緑。
そして影斗は緑のネクタイをつけていた。
ということは、
「お前年上だったのか?!?!」
「そーだよぉ〜。」
腹立つな、こいつ。
と余計に腹が立った俺だった。
「あぁ〜そうそう。ねぇ陽向。」
「なんだよ…。睦月先輩。」
「あははっ、なにかしこまってんの、影斗でいいよぉ〜。」
「はいはい、で?」
「うん、来週の帝学剣術魔術大会に僕も出るんだけど。」
「だろうな。」
予想はしていた。当たってたみたいだな。
「でさ、第1回戦の対戦相手。君と僕なんだよね。」
ん?え?
「…マジで…?」
よっしゃ!潰す!
俺は普通にニヤけてしまった。内心悪い顔してんだろうなと自覚はあった。
ちなみに空里は陽向のその顔を見てドン引きしているようだが。
俺は知らない。俺は知らない。
そして、
「てことでよろしくぅ〜。」
と言って影斗は去っていった。
すると今まで空気だった空里が話しかけてきた。
「ねぇ陽向、あの人誰?」
「そうか、空里には話してなかったな。」
俺は影斗に襲撃された話を簡単に空里に説明した。
「え?ってことはあの人が睦月家の次期当主なの?」
「そこまでわかっていればいい。」
もっと詳しく言うと長くなるので端折る。
まあ空里に理解できると思わなかったからだが。
まあ、おいおい朝陽や夕陽が空里に詳しく話してくれるだろう。
そして、俺達は鍛錬をしに訓練場へと足を運び、鍛錬を開始するのだった。
「同調…もといシンクロ。これは武装とその主がひとつとなり、力を引き出すと言うものだ。」
そして訓練場で朝陽と夕陽と合流し、同調のレクチャーをしていた。
あの時空里には使えないと断言してしまったが、いずれ必要になる力だ。教えてもいいだろうと思ったのでレクチャーしている。
ちなみに朝陽と夕陽にも前々から教えてはいるが、なかなか習得は出来ていない。
「まず武装の一体化する感覚を持つんだ。武装の声を聞くという感じで。」
「うぅ…難しいですよぉ。」
と朝陽は難しい顔をしている。
「慌てる必要はないぞ〜。」
3人とも自分の武装を構えて瞑想している。
まあ…シュールと言えばシュールだが。
俺は少し笑いそうになるのを堪えた。
自分もここからはじめて覚えたんだし。
人のことは言ってられない。
俺は3人がそうしているうちに影斗との試合のことを考えていた。
まずは情報整理。
やつの能力は『幻影』という影を変幻自在に操る能力。
やつの家に代々伝わる特殊能力だ。
そしてその影を使って姿を晦ますことも可能だ。
おそらく、操った影で武器などを形成することも可能だろうと予想する。
これくらいか。
情報が少ない。ゆえに考えられる手段は少ない。
そしてこの手段が見事に外れる場合もある。
そうなった場合、戦況に応じてまた手段を組み立てないといけない。
1週間前はゴリ押しでどうにかなったが、今回はそういくとは限らない。
最悪の場合、あれを……。
「ねぇ陽向。」
と空里が俺を呼んだ。
「なんだ…ってあっつ?!?!」
なんか燃えていた。メラメラと。
「どどどどどうしたぁぁぁ?!?!」
「どうしたじゃないわよ?!」
なんだこれ。かなりあたふたしている。
いや、冷静になってみるんだ。
「あぁ、成功したのか。」
「ほかに何があるのよ?!」
「いや…てっきり武装が暴走したのかと。」
「武装が暴走するの?!?!」
「例はあるぜ?」
たまに武装が暴走し、事故が起きることが稀にある。だから少し慌てたのは事実だ。
よく見てみると空里の頬には紅い紋様が浮かび上がっている。
これは武装との同調が成立していることを意味する。
「よくやった。成功だ。」
「本当?!?!」
「あぁ。」
と俺は笑顔でそう言った。
まさか…うまくいくとは。
俺は内心できないだろうなぁとは思っていたら…これだ。
なんてやつだ。俺は心底そう思った。
すると、
「おにいさまぁぁ!!これ成功してませんか?!?!」
「兄貴ぃぃぃ!!これどう!?!?」
と朝陽と夕陽の声がした。
駆け寄って2人を見てみると、成功している…だと…?
前言撤回。なんてやつらだ。
鍛錬を終え、俺は眠りにつこうとしたが、あまり深い眠りにはつけなかった。
夢を見た。怖い夢、だということはわかった。内容はよく覚えていなかった。
だが、何者かが、俺を嘲笑っているのは…はっきり覚えていた。
次回!帝学剣術魔術大会、開幕です!!
お楽しみに!