迫る者
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「おにいさま!こっちです!」
「兄貴ー!はやくー!」
と妹2人に手を引かれ、俺は遊園地に来ていた。
あぁ…やばい…人多すぎ。
今日は土曜日で休日のところが多いため、人が多い。
俺は人が多いところは嫌いだ。
だから嫌だって言ったのに…。
俺達兄妹3人で出かけようという話になり、どこに出かけるか話し合った結果だ。
だってさ、可愛い妹2人に頼まれたらさ、うんって言うしかないじゃん?仕方ないじゃん?
仕方ない、うん、仕方ないんだ。
俺はそう思うことにした。
「はいはいわかったから。」
となだめるように妹たちに声をかける。
朝陽は春らしい白のワンピース。夕陽は白いTシャツにショートパンツといった感じの服装である。
俺?どうだっていいだろ?
まあ、遊園地でしたことといえば、ジェットコースター乗ったり、お化け屋敷に入ったら、妹2人は俺にしがみついて離れなかったりと、色々だ。
そして、
「おにいさま…あの…手を…繋いでもよろしいでしょうか…?」
「え?」
「えと…兄貴…あたしとも手…繋いでよ…。」
「え?え?」
俺は戸惑った。
妹が顔を赤らめて手を繋ごうと言うのだ。ま、当たり前だろ。
「幼い頃は、よく手を繋いで歩いたではありませんか?」
「そ、そうだっけ?」
「そうだよぉー。」
と言うので、そうなんだろう。よく覚えていないが。
しょうがなく俺は2人の手を取った。
すると2人は嬉しそうな顔をした。
「じゃ、そろそろ帰るか。」
「はい!」「うん!」
とふたりは元気に返事した。
そして3人が歩きだそうとした。そのとき、
ドオォォォォン!!
と爆発したのような音がした。いや、爆発した。
それまで平穏だった、遊園地内に混乱が渦巻いた。
「なんだ?!」
俺は妹たちの手を離し、すぐに状況を判断する。
響く悲鳴。慌てている従業員たち。必死に避難する人々。そして、黒い煙幕が渦巻いていた。
「どうなっている?!」
混乱する中、俺は爆発した方へと駆け出した。
「待ってくださいおにいさま!」
「兄貴!待って!」
と朝陽と夕陽も俺についてくる。だが俺はこう言った、
「だめだ!お前達は逃げ遅れた人たちを避難させろ!」
「そんな!?おにいさまは!?」
「俺は大丈夫だ、だから、頼む、兄の言う事を聞いてくれ。」
「うぅ…おにいさまがそう言うのなら…。」
朝陽は顔を俯かせたが、俺の命令に了承してくれた。
「夕陽、お前も頼む。」
「わ、わかった。大丈夫…だよね?」
と夕陽は心配そうな顔をする。
「大丈夫だ、絶対。」
「言ったからね?!絶対だよ!?」
「おにいさま、どうか、ご無事で。」
「あぁ、さあ、行け。」
と妹たちは俺に背を向けて駆け出した。
そして、俺も駆け出した。爆発した方へ。
また、俺達の近くで、何者かの姿が揺れた。
どうなっているんだ…?
ここは爆発したその場所、のはずなのだが、
爆発した跡がない?
そこには爆発した跡がなかった。
だが、これが確信に変わった。
「なぁ?お前なんだろ?出てこいよ。」
と俺が呼びかけると、
「あぁ〜バレてたかぁ〜?」
木の影から謎の人影が写った。
「バレバレだったぞ。」
「へぇ〜?いつから〜?」
「俺が帝学に編入した初日から。」
「へぇ〜すごいねぇ〜。」
と謎の人物は愉快そうに嘲笑い、ヘラヘラしている。
「何が目的だ。まあ、大体は予想がつくんだがな。随分と派手にやってくれるじゃねぇか。睦月家、次期当主、睦月 影斗。」
「あはぁ〜?」
「影を変幻自在に操る。お前の特殊魔法だな。そしてついた二つ名が『幻影の覇者』。」
「あぁ〜そこまで調べ上げているのかぁ〜すごいねぇ〜お疲れ様だねぇ〜。」
「さっきの爆発は俺を一人にするためのものだな?『偽装』ってとこか?」
「まあ、気づくよねぇ〜。」
「で?やんのか?…やるんだろうな…?いいぜ、相手になってやる。」
「君がどれほどの実力か…見てあげるよ。そしてねじ伏せてやる。『千剣』、如月 陽向。」
と言うと、影斗はさっきとは違う、真剣な表情に変わった。
「そのセリフ、そのまま返してやるよ。『幻影の覇者』睦月 影斗。」
そして影斗は右手をかざして武装を呼び出す。
「来い、『影剣』。」
「力を寄越せ、陽炎修羅。」
俺も右手をかざし、愛刀『陽炎』を呼び出し、鞘から抜き放つ。
瞬間、俺は先手で縦に斬りかかった。必殺の一撃が影斗に放たれる。
だが横に躱される。これは余裕で予想範囲だ。こうでなければ面白くない。
すぐさま俺は刀を横に薙ぐ。
影斗も反撃とばかりに短剣を振るう。
2振りの剣が重なる。
「ははっ!そんなものか?!千剣?!」
「言ってくれるじゃねぇか。てめぇもそんなものか?ファントム。」
俺は愛刀に語りかける。
もっと…もっと力を寄越せ、陽炎。
俺の頬に黒い紋様が浮かび上がる。
「へぇ〜同調…ねぇ?でもその程度か?!」
影斗の斬撃が振るわれる。早い。
まずいっ…!!
俺はそう思った。だが、俺は寸でのところでガードする。
「今のが反応できるの?すごいねぇ〜もっと、もっと楽しませてくれよぉ〜!!」
流石に今のは危なかった。まともに受ければ致命傷だ。当たりどころが悪ければ死ぬ。
正直に言って、舐めていた。
だが、俺は心の中では笑っていた。
さらに影斗の斬撃は加速する。
それに合わせて俺も加速していく。
俺は…こいつに勝たなくちゃいけないんだ!!
さらに俺は加速する。もはや神速と呼べる域だ。
影斗が優勢に見えた攻防が逆転し、俺の方が優勢になった。
「くっっ!!」
影斗の顔が歪んだ。
そして少しだけ隙がみえた。俺の剣に押し負けて、少しだけ影斗の体制が崩れた。
俺はこのチャンスを見逃さない。
「一刀、『絶空』。」
これは斬りあげの単発技で相手を宙に浮かせ、次の攻撃に繋げるための技だ。
俺はその一撃を放つ。
だが、俺の刀があたる瞬間、影斗が消えた。
なっ…?!?!
俺が何が起きたのか、一瞬わからなかった。
そして、俺に斬撃の嵐が襲いかかった。
皮膚が斬れ、血が流れる。
そしてどこからか声が聞こえた。
「はははははっ!!!いい君だねぇ〜、僕の『幻身』はどうだぁ〜い??千剣。」
さらに俺の身体から血が流れ出す。もう服もボロボロだ。
なにも抵抗ができない。
反撃できる術がない。
だけど、負けるわけにはいかない。
俺は影斗の気配を辿る。
見えないのなら感じればいい、俺は己の感覚を研ぎ澄ます。
そして見つけた。
俺を嘲笑う影斗の姿が。
「乱舞、『双月月華』。」
乱舞。
俺は刀身を走らせる。
「悪足掻きがすぎるよぉ〜?負けを認めなよぉ〜?」
認めない。認めるわけにはいかない。
俺が強くなるためには、こいつのような強者に勝たなくちゃいけない。
だから…
「これで終わりだ。影斗、俺の剣はお前を捉えた。」
「なっ?!?!」
俺は本当は見えていないはずの影斗を全力で斬りかかった。
「や、やめろぉぉぉぉぉ!!!」
人一人いない夕方の遊園地に、その声は木霊した。
気付けば影斗はもうそこにはいなかった。
逃げられたらしい。
俺のものではない血痕がある。おそらく影斗のものだ。
この血の量からして、致命傷だろう。
「おにいさま!ご無事ですか?!」「兄貴?!」
朦朧とした意識の中、朝陽と夕陽の声がした。だが、俺はすぐに意識を手放し、その場に倒れた。
「ここは…どこだ?」
俺が目を覚ますと俺はベッドの上にいた。
「あぁ、病院か。」
この内装からして、病院だということを察した。
すると、急にドアが開いた。
「おにいさま!大丈夫ですか?!」「兄貴!大丈夫?!」
と朝陽と夕陽が入ってきた、それともう一人、
「陽向!身体は大丈夫なの?!」
と空里も入ってきた。
「あぁ、みんな、心配かけたな。」
俺が微笑みながら言うと、
「ほんとですよ!!」「ほんとだよ!!」「ほんとだわ!!」
と3人同時に言われた。仲がよろしいことで何よりでございます。
俺が窓を覗きこむと、朝の光が差し込んでいた。
その俺を照らす太陽の光はどこか、俺を嘲笑うかのようだった。
今回は空里があまり出てきませんでしたねw
次回もお楽しみに!