潜む者
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俺と空里の決闘が終わった、その夜。
「ドウシテコウナッタ。」
帝学は寮があるので、俺が指定された部屋の鍵を開け、いざ入ってみると…この有様である。
いやね?4人部屋っていうから、ルームメイトと仲良くなれるように頑張ろうと思ってたんだよ。さっき強い強い決意をしたところなんだよ。コミュ障のこの俺がだよ?返せ、俺の決意を返せ。
俺がそう思ってると、白髪のポニーテールと白髪のセミロングが揺れた
「やあ!兄貴!待ってたよ!」
「あはっ、おにいさま!お待ちしておりました!」
いや…うん。そりゃ兄妹で同じ部屋なのはまだ、許せる、まだ。
「あ、あぁ…でさ…なんで空里がいるのさ。」
「あぁ…よろしく。陽向。」
「よろしくじゃないよ?!俺は男だよ!お・と・こ!!」
俺が怒鳴っていると夕陽が口は挟んできた。
「まあ、いいんじゃないか?」
「よくないよ!朝陽と夕陽はいいとするぞ?!空里はまずいだろ?!」
「そうは言いますがおにいさま、他に部屋はないのですよ?」
そして朝陽も口を挟んだ。
「なん…だと…?」
「ここは元々私と夕陽と空里先輩の部屋なんですよ?」
「そ、そうなのか…じゃ、俺は外で寝るから。」
そう言って俺は外に出ようとするが、
「だめです!」「だめだよ!」「だめよ!」
と女の子3人の声が重なり、俺はやむなく、この女の子3人とルームメイトになった。うち、2人は妹だが。
「はぁ…で?空里は朝陽と夕陽を知ってた訳なんだ?」
と俺がため息をつきながら聞くと空里は、
「そうね、あなたのことは大体この子たちから聞いていたわ、あなたが帝学に編入が決まったときはふたりとも大喜びだったわよ?」
「そうなのか?」
と俺が朝陽と夕陽を見ながら聞くとふたりは顔を赤らめてこう言った。
「そ、そうに決まっているではありませんか!?おにいさまと同じ学校に通えるのですよ!?嬉しいに決まっているでしょう?!」
「そそそそそれは言わないって言ったじゃないですか!空里先輩!」
「あら、なんのことかしら?」
夕陽は空里に講義しているが、空里は流している。
そして空里がこう言った。
「まあ、私も嬉しかったけどね、『千剣』に会えるって。」
あぁ、なるほどね。と俺は思った。
『千剣』すげぇ、と思った。まあ、俺のことだが。
「じゃ、夕飯まだなんだろ?俺が作ろうか?」
と俺は言った。するとなぜか3人とも口をあんぐりと開けて固まってしまった。
「え?なんで固まるの?」
「いや、君って料理できるんだなぁって思って…。」
と空里が言った。
「え?意外?」
「うん。」
はっきり言われた。
そんなに意外なのか。
だが、朝陽と夕陽は嬉しいそうな顔をして、
「おにいさまが作ってくださるのですか?!」
「兄貴が作るの?!」
「お、おう、そう言ってるだろ?」
「やった!おにいさま!私がお手伝い致します!」
「私も手伝うよ!」
「いや、夕陽は食器の用意でもしていてくれ、朝陽は手伝ってもらっていいか?」
「はい!」
と朝陽は元気よく返事をしたが、夕陽は、
「むぅ…」
と頬を膨らませた。
いや、朝陽はまだいいんだよ、料理は上手い方なんだよ。夕陽に料理させるとね、『食べられない何か』に必ずなるんだよ。
「い、いや、な?夕陽、今度俺と料理の練習しような?」
そう言うと夕陽は顔を輝かせて、
「わ、わかった!約束だよ!?」
俺は苦笑しながら、おう、と返事をした。
そして、俺と朝陽が作った夕食を4人で囲んだ。
食べ終えると、俺は自分の個室へと入った。
4人部屋と言っても、簡単に言えばシェアハウスと言った方がしっくりくるだろう。
4人にそれぞれ個室が用意されている。
中は思ったより広く、俺は荷物などを全部中に入れた。
そのころには女の子たちはもう自分の部屋に入ってもう寝ていたようだった。
本当は荷物の整理などをしなければならないが、空里との戦闘や、編入初日というのもあって疲れていた。
俺はベッド横たわると、すぐさま眠りに落ちた。
朝、俺は不自然に目を覚ました。それに至った原因が仰向けに横になっている俺の腹にのっかっているこいつ。
「おい、朝陽、起きろ。」
朝陽は少し体を起こして、
「ふぁいぃ…おは…よう…ごじゃい…まひゅ…おにぃ…しゃまぁ…。」
と言ってまた、俺の上半身に体重を預ける。
「おい!こら!起きろ!」
俺は朝陽の体を揺らすが、一向に起きる気配を見せない。
「うにゃ…。」
くそ、普通に可愛いなちくしょう。
でもね、こんなところ夕陽や空里に見られたら…
「おーい兄貴ー!朝だよー!」
と言う言葉とともに夕陽が入ってきた。
俺の顔は青ざめた。
「ななな、何やってんの!?兄貴!?」
「いや、ちがっ、これは朝陽が…」
「言い訳無用。」
その後俺は地獄を見たという。
「いててて。」
と俺は全身が痛いのを堪えながら、朝食を済ませ、空里と朝陽と夕陽の4人で寮から出て校舎の方に向かっていた。
もちろん例によって、朝食を作ったのは俺と朝陽だ。
「もう…夕陽ったら…やりすぎですよねぇ?おにいさま?」
「夕陽にそうさせた原因はお前だ。」
と言って俺は朝陽の頭を軽く叩いた。
「いたっ!痛いですよぉ…。」
「あんまり力入れてないぞ。」
でも朝陽は嬉しそうだった。叩かれるのに快感を覚えるって…朝陽って…。
とか思っていると、朝陽は俺の腕に絡み付いてきた。
あぁ…また、周りの視線が痛いからさ…。
夕陽にボコられた後はこの攻撃ですか…痛いぜ。
そして俺と空里は朝陽たちと別れて、2-Bの教室を目指す。
別れる時に朝陽と夕陽が寂しそうな顔をしたのはよくあることだ。
すると俺は空里から声をかけられた。
「ねぇ…陽向。」
「ん?どうした?」
「その…誰かと…付き合ってたり…する…の?」
と空里は少し顔を赤らめて言った。
んー、付き合ってる?俺が?んー、はぁ??!!
「え?!なんで!?」
「いや…なんとなく…?」
「なんで疑問形なのさ?!」
「うっ、なんでもないの!!」
なんかキレられた。
そして空里は足早に教室に入っていった。
1日の授業が終わり、放課後。
相変わらず魔術関係の時限は暇だったが、剣術や体術関係は結構頑張ったので、それなりの疲労はある。
「さて、これからどうしたものか。」
俺は少し考えて、
「とりあえず寮に戻ろうかな。」
俺は寮に戻ることにした。
すると当然後ろから、
「おにいさまぁ!」「兄貴ぃ!」
と、聞き覚えのあるような声がした。
「お、おう朝陽、夕陽どうした?」
俺が返事をすると、
「今日は金曜日ですね!」「今日は金曜日だよ!」
とふたり揃って元気にこう言った。
ん?そうだっけ?と俺は一瞬思ったが、考えて見れば、今日は金曜日だ。
「それがどうかしたのか?」
と俺が聞き返すとふたりは顔を赤らめて言った。
「ええと…金曜日と言えば…明日は…休みですよね?」
「そうだな。」
「じゃ、明日一緒にどっか出掛けようと。」
「なるほど、いいぞ。」
「「やった!!」」
とふたりともジャンプしながら喜んんだ。
そんなに喜ぶことか?と俺は苦笑しながら思った。
すると夕陽が俺に聞いてきた。
「兄貴、空里先輩は一緒じゃないのか?」
「さあ?空里は帰りのHRが終わってすぐにいなくなったから話してないよ。」
「そうか。」
と納得する夕陽だった。
そんな話をしている俺達の近くの木の影で、何者かの姿が揺らめいた。
次回もお楽しみに!