出会う者
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長めにしてみました。
帝鬼剣術魔術学園、通称『帝学』。
俺〜如月 陽向はここに編入する。
だが…
「うふっ、おにいさま!編入おめでとうございます!」
「…あ、あぁ、ありがとう。朝陽。」
俺の腕にしがみついて離れないのは我が妹、如月 朝陽。
「いえいえ!私は大変嬉しゅうございます!あぁ…学年が違うので同じクラスになれないのが本当に残念ですぅ…。」
と言って本当に残念そうな顔をする。
そう、朝陽は15歳で、この学園の1年生で、元々ここに在学していた。ちなみに俺は2年だ。
「今日は記念すべきおにいさまの編入初日目!張り切ってまいりましょう!!」
と言って朝陽はえいえいおーみたいな動きをしている。
うん、そうだね、さっきから俺の腕に当たる朝陽の豊満な胸が気が気でならない訳だよ。
は、離れてくれ…り、理性が…。
俺は本気でそう思ってるんだが、あ、いや、本当は離れてもらいなくないんだが、この豊満な胸を感じていたいっていうか、ち、違うそうじゃない、マジで離れろ。
でも、一向に離れる気がないのが我が妹、朝陽である。
ちなみに、ちなみにだが、場所は学園のエントランスのど真ん中である。
あぁ…さっきから周りの視線が痛い。
朝陽ははっきり言わなくても超絶美少女だ。綺麗なセミロングの白髪がなびいて、本当に美しい。
だからね、周りの男子の目がね…怖いよ…。
本当は離れてもらいたくないけど…思い切って言ってみようそうしよう。当たってるから。
「あ、朝陽?さっきから当たってるんだけど…?」
「え?何が当たってるんですかぁ?」
と、意地悪な目つきで、上目遣いで言ってくる。
こ、こいつ…わざとだ。
明らかにわざとだとわかる。きたない、流石きたない朝陽。
だがな、そろそろ俺のメンタルが周りの視線のせいでブレイクしそうなんだが…。
その時、
「ちょっと!朝陽!兄貴から離れて!困ってるでしょ!」
と俺としがみついて離れない朝日の後ろにいたもう一人の我が妹、如月 夕陽が声を上げた。
ちなみに朝陽と夕陽は双子だ。
双子だからもちろん夕陽も朝陽と同じ1年生で、元々在学していた。
「なによぉ…別にいいじゃない夕陽。別に迷惑では、ありませんよね?おにいさまぁ?」
「ま、まあな。」
「ほらぁ?女の子に腕に絡みつかれて嫌な男の子はいませんよねぇ?私が羨ましいならおにいさまのもう片方の腕、空いてるわよ?」
と、これはまた意地悪な顔で言うもんだな。
それに対し夕陽は、顔を真っ赤にして、
「ななっ、何を言ってるの?!べべっ、別にあたしはいいから!」
と、白髪のポニーテールを揺らしながら顔を背けるが、またこちらの方を向いて羨ましそうに見つめる。そして、
「…ううぅ…やっぱりあたしも!」
と俺の空いた方の腕にしがみついてきた。
うわぁ、なにこの夢みたいな状況…
てか、相変わらず夕陽は貧乳だな。
朝陽が巨乳だとしたら夕陽は貧乳だ。
双子なのに…なんでこんなに発育の仕方が違うんだろ…じゃ、じゃないじゃない!
ちなみに夕陽は自分の貧乳をかなり気にしてるご様子。
そして気づけば周りの視線がさらに鋭さを増していた。
そりゃね、夕陽も美少女だもん、そうなるよね。
編入初日で心が折れそう。
あぁ…俺のメンタルが…。
俺の眼は自分の白髪の長めの前髪に隠れて周りからは見えないと思うが、多分…いや、絶対死んでると思う。
こんな俺を尻目にふたりは喧嘩気味に話している。
「朝陽!兄貴から離れなさいよ!」
「そっちこそ離れなさい!おにいさまは私のものだもん!」
「うるさいうるさい!兄貴はお前のものじゃないだろ!」
もの!?ものって言った?!何この子たち!?俺をなんだとなんだと思ってるの!?
少し怖くなってきた俺である。
てかおい、やべぇ、こんなやりとりしているともうこんな時間じゃねぇか!
俺は慌てて妹ふたりを振りほどこうとする。
「お、おいお前ら!授業始まるぞ?!離れろ!」
俺がこう言うとふたりは凄く寂しそうな顔をしたが、素直に離れてくれた。
うわぁ、なんかすげぇ罪悪感。
「うぅ…授業とあらば仕方がありませんね…おにいさまに迷惑をかけるわけにはいきませんもの。ではおにいさま!またお会いしましょう!」
「じゃ、じゃあね、兄貴。」
と朝陽と夕陽は手を降って去って行った。
ふう、やっと一段落ですな。
そして次には痛い視線はなくなっていた。
…教室にいくか。
と、俺は自分の教室に向けて歩き出した。
えーと、確か2-Bだったか?
おお、あったあった。
さっそく教室のドアを開け放った。
教室には大体の生徒が揃っているようだ。
と、俺が教室に入った瞬間、いきなり教室内がざわめき、教室内の生徒たちは俺に冷ややかな目線を送ってきた。
うそぉ…いや確かにしょっぱなから妹がやらかしましたが…初撃でこれですか…痛すぎる。
「君、編入生?」
と、俺に話しかけてきたのは金髪美少女。わぁお、すげぇ胸。
朝陽よりあるんじゃないか?なるほど、朝陽が巨乳気味だということがよくわかった。
あぁ、夕陽が霞んで見えてきた…いやそこじゃないだろ。
「そうだけど…なにか?」
と頭がお花畑なのを悟られないように言葉を返した。
「ふうん、『千剣』…ねぇ…。」
その言葉に俺は表情を変えた。
…なぜ千剣を知っている?千剣の名は、俺を除けばこの学園では朝陽と夕陽だけだったはず…。
「…なぜ…その名を?」
「あれ?驚いた?千剣は結構有名よ?」
とその言葉が終わると同時に右上から衝撃が襲った。
だが俺は素手で受け止めた。
「へぇ…私のフェイントを見破ったのね…やるじゃないの。」
そう、最初は下からの攻撃のように見えた。だがそれはフェイント。
そして俺はそれを見切った。
俺は直感的に察した。こいつ、強い。
「スロー再生しているようだったよ。」
俺がドヤ顔で言ってやって、受け止めた手を離してやると、
「ふふっ、言ってくれるじゃない。」
と金髪の彼女は不気味に笑った。そして握っていた拳を開きながら、
「決闘よ。放課後、帝鬼第1闘技場に来なさい。使用許可は取っておくわ。あと、私の名前は早乙女 空里。」
「あぁ、知ってるとは思うが俺は如月 陽向だ。放課後、君に勝つやつの名前だ。よろしく頼む。早乙女さん。」
「ほんっと生意気ね、その長い鼻、へし折ってやるわ。よろしく、陽向。あと、私のことは空里でいいわ。」
「あ、そうかい?じゃよろしく、空里。」
そんな会話をしていると先生が教室に入ってきて授業が開始された。
1時限目は剣術の授業、2時限目は剣術の実技、3時限目は魔術の授業、4時限目は魔術の実技、昼休みを挟んで、5時限目は体術の授業、6時限目は体術の実技という流れだった。
3時限目と4時限目に関してはほとんど暇だったんだが。
時間は流れ、放課後。
ここは帝鬼第1闘技場、そしてそのフィールド上に俺は立っていた。
そして、今朝の金髪美少女が現れた。
周りには無数のギャラリーがいた。
編入生である陽向の実力が見たいのだろう。
「やあ、空里。調子はどうだい?」
「君に心配される必要はないわ。さあ、はじめましょう。」
と言って空里は右手をかざし、こう呟いた。
「力を貸して、紅蓮の魔剣。」
その言葉と同時に紅蓮の炎と共に紅い長剣が姿を現した。
「これが私の剣武装、『紅蓮の魔剣』よ。君も見せて、君の武装。」
いやぁ…うん。怖い。おぞましいぜ。
俺はそんな思考を巡らせながら、真剣な表情に変えた。
「紅い魔剣…早乙女…あぁ、君が。」
俺は紅蓮の炎に包まれる彼女を見て、
「早乙女家は炎属性の魔法と長剣の剣術で有名な名家だ。『緋色の剣姫』、それが君の二つ名だね?これは…なかなか手強い相手みたいだね。でも…」
そして、右手をかざして、
「来い、妖刀…『陽炎』。」
その言葉と同時に黒い閃光と共に黒い鞘に入った刀が姿を現した。
そして鞘ごと腰にさした。
「そんな君を…俺は超えなくちゃいけない。力を寄越せ、陽炎修羅。」
そして鞘から抜き放つ。
黒い刀身が輝きを放っていた。
「…刀なのね…珍しい…。」
2時限目の剣術の実技は自分の武装を使うものもあるが、今日は訓練用の木剣だったので、陽向がこの学園で自分の武装を出現させるのはこれが初めてとなる。
「帝学では刀使いはいないのか?」
「まず、剣士一筋というのがいないわ。あなたみたいに魔術の授業サボるひとなんて…初めて見たわ?」
まあ、サボったのは認めます。だって…ねぇ?
そんなことは置いといてというように空里はこう言う。
「まあいいわ、はじめましょう。」
気づけばギャラリーの歓声が聞こえなくなっていた。
そしてアナウンスの電子音が流れた。
『これより、緋色の剣姫、早乙女 空里対千剣、如月 陽向の模擬戦を始めます。』
うっわ、こんな堂々と俺の二つ名を…なんで知ってるんだ?何処かで情報が漏れている…?まあ、いいか、既に知られてたみたいだし。
『Are You Ready?』
のアナウンスと共にふたりはそれぞれ剣を構えた。
『Let's Combat Start!!』
この合図と同時に空里は剣を縦に構えて斬りかかった。まさに神速。
しかし俺はバックステップで躱す。
「へぇ…これを躱すのね。」
「まだ、まだ遅いよ。」
「ほんっと生意気ね、君は!!」
空里はまた縦に斬りかかる。
今度は受け止めようと思って横に刀を構える。が、
消えた。
上から下に斬りかかられていたはずの紅い長剣が消えた。いや、消えてない。
っっ!!そこ!!
俺は右からきた斬撃を左から右に陽炎の刀身を走らせ、弾き返した。
今のは…なんだ?
「くっ、なんで反応できるの?!」
空里は困惑した表情でこう言った。
「たまたまさ、今のは危なかった。」
「そう…じゃあ、これはどうかしら…?」
そう言って空里はバックステップで距離をとった。
「穿て!レーヴァテイン!煉獄の炎を纏いなさい!!紅槍の雨!!」
その主の言葉に答えるかのように魔剣は煉獄の炎を纏い、魔法陣が出現した。
うわぁ、これは…死ねる。と察した俺は反撃する手段を考える。
あの剛槍からして、単発攻撃だ。1発だけ躱せばいい。
研ぎ澄ませ、己の感覚を。
俺は空里に向かって走り出し、加速した。
そして、空里のレーヴァテインの剛槍が俺を捉えた。
煉獄の炎を纏ったそれは、
散開した。
くっ…!!バラバラになるのかよ…!?
だけど、全部避けてやる。そして捉えるんだ、彼女を。
もっと、俺は強くなるんだ。強くならなくちゃいけないんだ。
空里か放った槍の雨はますますスピード増し、俺を襲う。
「もっと力を寄越せ!陽炎!」
陽向の頬に黒い紋様が浮かび上がる。
「同調…!?」
空里の顔から焦っている様子が伺えた。
武器と一つになるそれが同調。
だが、今までそれを使える者は空里が見た事がない。なのに、彼は…学生の身で…なんてやつ…。
俺はさらに加速した。
炎の雨をすべて、躱し、刀で切り落とす。
「終わりだ…!!」
俺は空里に接近し、切先を空里に向けた。
「……。」
「君の負けだ。空里、俺の剣は君を捉えた。」
「…わかったわ。私の…負けよ。」
その言葉を言った瞬間、
『WINNER 如月 陽向。』
とアナウンスが流れ、決闘は終わった。
「ほんっと生意気。」
そんなことを空里は言った。
「そうかもしれないね。でも君は強かった。」
「君に言われても、何も嬉しくないわ。まさか…同調が使えるなんて。どうすればできる?!私は一体どうしたらそんなに強くなれる?!」
「俺はまだまださ、ただ、同調は君には使えない。」
「どうして?!なんで?!やってみなきゃわかんないじゃない!?」
「君は…強くなりたいのかい?」
「そうに決まってるでしょ?!」
空里は涙目で訴える。
俺は手を差し出して、
「君は…もっと強くなれる…強くなるための方法は、同調を覚えることだけじゃない。俺と見つけようよ、君が…強くなるために…もっと…先に行くために。」
空里は俺の手を取って、
「上等じゃない…やってやるわ…強く…なるために!」
ふたりは固く手を握り合った。
季節は、桜が散り始めた、春だ。
不定期で投稿します。
次回もお楽しみに!