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CHILD REVOLUTION  作者: Gunchan
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影 後篇

 ポンと肩を叩かれた。達也は重い目を開けると目の前に学が立っていた。眠気が残る頭の中で記憶を辿る限りでは自分は会場とは別の部屋にいて眠っている間に葬式はとっくに終わっていたようだ。


「寝ちゃっていたんだ。ごめん」

 頭をかきながら元気のない声で学に言った。達也は時間を確認する為にHMDを付け時計を見ると時間がさほど変わっていない事を確認した。窓を見ても景色は変わらず朝だ。恐らく1日中寝ていたのだろう。だるそうに椅子から立ち上がるとそれを見て学が言った。


「無理もない2日も寝てなかったんだ」

 学に着いていき、部屋を出ると目の前には棺があった。それも外国のデザインだ。むしろ棺桶と言った方がいいのかもしれない。


「顔は残ってる?」

「ああ」

棺の中をのぞきながら学が言う。


 そう聞いて少し安堵すると学の隣に立ち覗き込んだ。


「こいつ、最後まで笑ってやがるよ」

虚しさと同時に感じた呆れの気持ちを込めて言った。視線の先には勝ち誇ったような顔をして横たわる今では仏の圭がいた。


「ああ、あいつはいつも研究の時に『死ぬ時は笑って死にたい。そうすれば葬式でも俺のために涙を流してくれる人がいるのか分からないけれど、流してくれる人がいるのならそいつにその俺の死相を見せて笑わせてやるんだ』って言っていたよ。多分死ぬ直前まで笑っていたんだろうな」

懐かしむように学が達也に言う。


「ねえ、あの世ってあるのかな?」

圭を見ながら言った。


「どうだろう、それは俺にも分からない。だがそれと似たような世界はあるのかもな」

圭から視線をそらさずに学が言う。


「オレ、昔見えていたの知っているよね?自分で拒絶して遠ざけることもできた。今はだんだん薄れてきたんだけど」

達也にはそのような奇妙な幼年期があった。


「ああ、初めは変な奴と思っていたが


「うん、だからそうなると昔見えていたあれは何だったんだろうって。ただの自己暗示だったのか、それとも本当に見えていたのか。自分でその答えを探してみたんだけど自分にとってギリギリ納得できる現実的な答えを考えてみた」


「そしたら?」


「そいつが生前に残した意思が現世に響いて、それを敏感に反応するごくまれな人が見えるのかもしれないという答えだった。でもまだその答えを認めたくない。だが、その答えがないから生き物の意思を象徴化した物『魂』と呼ばれる物を追求してきた人類でもその答えを見つけた奴は誰もいない。そう考えると必然的に遺伝子の配列だげで人の意思が決まるように感じる」

学の相槌を聞く間も空けずに達也は続けた。



「でも遺伝子だけで自分が出来る訳じゃないと思うんだ。だってオレのクラスに一卵性の双子がいるけれどもそれってほとんど同じ遺伝子配列なんだよね。それが人、いや生き物の全ての意思、魂をコントロールしているならば、じゃあオレって何だろう?双子のあいつらだって考える事は似ているけど違うところもある。全く一緒の遺伝子を持つことで意思が持てるならば二人が・・・・」

後ろを振り向くと学は寝ていた。達也はいったん喋り出すと止まらない。だが達也がこのように長く本音を話す相手はいつも決まった人だ。それ程達也が本音を話す人は限られている。


 学の寝顔の前には「車のエンジンをかけておいた。遅刻するなよ哲学者」とのパネルメッセージが表示されていた。それを鼻で笑うと鞄を取りに行った。


(そういえば、学さんの寝ている姿を見るのは初めてだ。昔幼い頃に見た事あるのかもしれないがよく覚えていない。)


久しぶりに見たのか懐かしさと可笑しさがあり思わずHMDに写真として収めた。


 そして何も言わずに外へと出た。


 学の車に乗るとドアが自動で閉まり動き始めた。


「やっぱりな。ここまでは改造していないのか」


 運転席に座ると車が減速し安全な所に着くと停車したのだ。日本においては自動運転が実用化された時代でも免許を持っていないと運転席に座ることはできない。これは自動運転を実用化する為に総務省がすでに実用化されているアメリカの自動運転の際に使用する通信に関する法案を自国向けに修正し国会に提出したところ、警察庁内部の交通局が猛反対したのが原因であった。


 実際に21世紀初めの段階でも免許を取得する際に必要な予算が世界に比べて我が国は高いのはし周知の通りだが、それにはいい加減な人に免許を取得させない意図が交通局にあったのだ。だが自動運転の実用化により、免許制度が無くなれば誰でも簡単に車を乗れてしまう。それでいて機械を信用し、事故が減ったとしても減るのは事故だけではなく警察庁の収益も減ってしまう。税金で成り立っている組織にも関わらずこの収益が必要なのは、来年度予算を決める際には不思議な事に全国の免許センターなどから得られる収益や交通違反の罰金を予め予算に繰りこまれているからである。ちなみに車内にドライバーを乗せないで運転するには免許を取得している人の遠隔操作、モニターの監視が必要なのだ。


 達也は楽な体制になった途端に急激な腹を刺すような激痛に襲われた。まる2日何も食べていなかったからだ。空腹だけは耐えられない。普通なら倒れているだろう。周りの人から見たらかなり異常な行動であろうが、発作に襲われたように慌ててポケットの中を探し、自分で「非常食」と名付けているチョコバーを食べた。


「・・・くだらねえ」

笑いと溜息と一緒に口から出た。


 外は変わらずスーツを着たサラリーマンや学校に行く人達。「どうでもいいかもしれないが自分が車で学校に着いたらなんて言い訳しよう。多分先生は何も言わないだろうな。」などと考えながら車で中で寝そべっていた。


 すると先日に観た圭のメッセージが頭の中によぎる。HMDにスイッチを入れ圭のメッセージを開いた。

「た、達也・・・。お前を巻き込んで悪かった。でもこうするしかなかった。こんな事はあってはならなかったんだ、間違ってい」早送りする。


「3文字は絶対に誰にも教えるんじゃない」

早送り。


「変えてくれ」

何を言っているのか?何を変えてほしいのだろうか?「L.O.S」は分かる。圭が口癖のように言っていた「Liberty Of Speech」の事だろう。だが狙いが今いち分からない。


「まもなく目的地です」


 車内アナウンスが流れたので降りる準備をした。


 車は登校する生徒がたくさん集まる校門前で止まった。


「あの野郎」

学が起きていれば今頃車のGPSを見て笑っているのだろうか?通学中の同級生達が集まって来た。その中には勿論考一と隆樹がいた。せっかくなので運転席から降りることにした。


「うわ!達也じゃん!!」

考一がはしゃぎながら駆け寄って来た。


「馬鹿、名前言うな」

ドアを閉めると車は自動的に動き出し達也達から姿を消して行った。


「早くどけ!誰だ車で運転して来た奴は!!退学にさせるぞ!!あ!江波戸君か、おはよう」

人が変わったように声を和らげた。何も言わず教員を肘で押しのけ3人で学校に入って行った。


「葬式もう終わったのか?」

隆樹が聞いた。


「ああ、意外と早かった」

「でも、葬式終わって早々授業受けられるのか?」

考一が何かを期待しているような笑顔で達也に聞いた。


「いや、受ける気はないな」

「よっしゃ!じゃ遊びに行くか!!」

考一が待っていたかのようにUターンして校門に向かって走り出す。前にも書いたが今の教育制度は「成績良ければ全て良し」なのだ。


「何処に行く?」

隆樹がお菓子を食べながら言った。


「映画観に行きたいな」

「出た出た、映画。お前映画観る量半端ないもんな。先月何本見た?」

考一が笑いながら言う。


「えーと、10本くらい」

それを聞いた考一はさらに笑い転げた。


 映画館に着き、何を観るか3人で予告を観ながら話し合った。


「便利だよなぁ、ポスターを見るだけで目の前に予告が流れる。でも映画は昔ながらのスクリーンに投影するんだよな。意味ないのに」

「まあ文化が文化だからね。しょうがないよ。あ、これ観ない?」

「いいよ、じゃあ券売機に行ってチケット買おう」

「4番高校生3つ。席はここ」

「かしこまりました、3人で7800円(今の貨幣価値で約3900円)です」

 支払いを終えるとHMDにチケットの詳細が記載されたデータが送られた。


 入り口に入ると無料ロッカーの中に荷物とHMDを入れた。映画を観る時は録画防止の為にHMDを預ける事になっている。その代わりHMDは自動で充電される。一応着けている間でも太陽光や体温で充電されているがやはり直接ケーブルにつないで充電するのとでは速さが違う。


「じゃあ行こうか」

 座席に着いてしばらくすると上映が始まった。


 内容は2023年に東京の首都で起きた爆破テロをきっかけに日本の裏で政治転覆を諮るリベルティとそれを阻止し日本国民を救ったベリスとの3年間の戦いを描いたものだった。主人公はベリスの工作員でリベルティに潜入し情報を抜き取る任務をしていたが次第にその中の仲間に情が入ってしまいその一人に事実を話し一緒にこの戦いを終わらせようとした。だが最終的に主人公は工作員としての任務を放棄した事を教団に見抜かれ処刑されてしまい、主人公の仲間も相手の教団に情報を提供したと言われ射殺された。そして結果はベリスが勝利を収めたのだ。栄光と空しさを同時に唄った映画だ。


 エンディングが流れ右を見ると隆樹が目を輝かせていた。そして左を見ると考一が涙を流しながら。

「仲間っていいなぁ、なぁ!」と泣いていた。


 何も言えなかったので前を向く事にした。

 ロッカーに戻り荷物を取り出す。


「・・・・・」

「どうした達也?」

青ざめた達也に気がつき隆樹が声をかけた。


「HMDがなくなっている」

「え!?」

考一が慌ててスタッフを呼んだ。


「すみません、ロッカーの盗難に遭いました」

 スタッフはすぐに3人をスタッフルームに呼び出した。


「ここで防犯カメラを再生するので見てください」

 映像が再生された達也は管理人のHMDを付けている。早送りしたり、別に視点に移動したりして何度も見た。

 しかし、達也のロッカーを開けた者は誰もいなかった。するとドアが開き別のスタッフが入って来た。


「ロッカーの開閉履歴です。お客様が映画を見ている間にはだれも開けていませんでした」

「そんな馬鹿な!!」

「そんなわけねえだろ!!なんで入れたもんがないんだよ!!」隆樹が怒鳴るがスタッフは冷静に言った。

「お客様が万が一盗難にあっても一切責任は負わないと書いてありますのでそれを御了承頂いた上での御利用になります」

 隆樹がスタッフに飛びかかりそうなのを達也は止めた。


「もういいよ、行こう」

そう言って店から出て行った。


「なんだよ、せっかくいい映画観たのにこんな終わり方。だから映画もHMDにするべきなんだよ」

「そういう訳にはいかないだろ?俺らみたいなやつがそれで入ったら100%録画するじゃん」

「まあ、そうだが」

「だからしょうがない。それに」

達也がニヤニヤしながら言った。


「それになんだよ?」

「馬鹿だなぁ、お前らがオレのHMDをGPSで調べればいいだけだろうが」

達也は少しあきれながら言った。


「そうか!その手があったか。じゃあ今から調べてみるよ。・・・あれ?」

隆樹の顔色が曇る。


「どうした?」

薄々予想はついていた、ここのところ奇妙な事ばかりだ。


「何処にもない」

「貸せ」

考一からHMDを取り見てみると何処にもないのだ。


「しょうがない諦めよう」

どうしようもない時はすぐに諦めるしかない。


「でもー」

「いいんだ、ありがとう」

「・・・・」

 しばらく行くあてもなく歩き回った。

 結局、映画館のあった有楽町から国会議事堂前まで来てしまった。


「お偉いさん達のいるところ」

考一が言うと隆樹が


「オレのHMDを奪った所」

すると考一が達也の肩を叩き笑いだす。


「それ違うって!もういいや、また有楽町に戻って新しいHMD探そうぜ!少しぐらいなら負担してやるよ。ここにいたってこんなのしか建ってないし退屈だ!」

そう言って考一が国会議事堂に指をさした。


 その時、孝一が指をさしたと同時に別のところから小さい物が国会議事堂の屋根に向かって飛んで行き爆発した。



「!!」

慌てて飛んできた場所を見ると武装した人たちが国会議事堂に攻めて行った。


「よくわかんねえけどヤバくないか?あれってもしかしてリベルティ!?」

隆樹は2人の服を掴み走るよう促した。


「とりあえず安全な所に逃げよう、裏道だ!!」

考一が言うと一目散に走り出した。 少し走ればビル街に出るから逃げれるだろう。達也はそう確信した。


「もう、安全だな」

現場から1キロくらい走り、隆樹が息を切らしながら言った。


「ああ、でも何だったんだありゃ」

いまいち状況を読めてない孝一が言った。


「予告なしのテロは多分ここ日本だけだね」

「とりあえずもっと遠くに行こう」

そう言った隆樹の後ろから黒い影が見えた。そいつらは走ってそしておもむろにマシンガンを撃ってきた。


「何だこいつら、見た事がない!」

3人は再び走ったそして後ろを見るととんでもない動きで3人を追いかけてくる。


 顔や体にはただじゃ壊れなさそうなスーツを着ていて、体の至る所に小さなローラーがついている。そして勢いよく走ると壁や床に向かって飛ぶとまるで何処であろうとそこに重力があるように重心を押し、滑りながら追いかけてくる。 路地を曲がると目の前にいた大人が近くにあったドアを急いで開けて入ると勢いよくドアを閉めた。達也はすぐにそのドアに手をかけたが鍵をかけられた。


「すみません!開けて下さい!!」

そう言う達也を押しのけ隆樹が強引に開けようとする。


「おい!!開けろって言ってるだろ!!開けろよ!!」


「ヤバい、もう来る!これだから大人は嫌いなんだ!!」

孝一が焦り出す。


「まずいな。ここは俺に任せろ!!」

隆樹が2人の背中を押しながら叫んだ。


「馬鹿野郎、こんなところで英雄気取るんじゃねえ!!勝てるわけないだろ、早く来い!!」

達也が言い返し、隆樹を連れ戻そうとした時だった。


 何発もの弾のうち1発が隆樹の頭を撃ち抜いた。そして次の瞬間達也の横に光る物体が通り過ぎ考一に当たる。鉈が考一の首に刺さった。 その瞬間が長く感じる「そういえば、俺達ってどんな時でも仲間を裏切らない。仲間が倒れそうになったら支える。矢が降れば盾になる。そんな事を話したっけ・・・?」一瞬の中にそんな思い出がふと込み上げて来た。


「え?」

孝一が倒れると首から鉈が外れ噴水のように飛んだ血が達也にかかった。我に帰った達也は感情が一気に溢れてきた。


「うああああ!!」

落ちた鉈を拾いその敵に向かって刃を立てた。


 闇雲に走ると突然左のこめかみに強い打撃が来た。「蹴られたのか・・・。」力が思うように入らずその場に倒れるしかなかった。



「マモレナカッタ・・・」


「影」 完結  次章「願」

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