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縛り縛られ  作者: 猫面人
美雪
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四話 解放

 木下夏紀と今の関係になったのは、アキハルさんに縛られた後しばらくたった、今年の夏のことだった。

 夏紀とは以前から友人関係を築いていた。無垢で素直で、私が心を許せる一人だった。

 よく家に招いた。私の家は両親が共働きで、夜遅くまで誰も居ない。騒いでも咎められないので、何かと都合が良かった。

 そして夏休み。朝から暇だった私は昼に夏紀を家に呼んだ。夏紀には半年前から彼氏がいた。しかし、最近は上手くいってないようだった。電話越しの声は少し暗かった。

「大丈夫?」

「はい、家、今から行きますね」

 夏紀は玄関で、頬を赤く腫らし、泣いていた。

「どうしたの?大丈夫?」

「話しても、良いですか?」

夏紀の声は震えていた。

「なんでも言って良いわ」

「…一昨日駿と会ったんです。『金を貸してくれないか。困ってるんだ』って、でも何が困ってるのか言わないし、私もお金無かったので、ごめんと言ったら怒って帰ってしまって。それで昨日謝ろうと思って駿の家に行ったら、駿が別の女の子と会ってたんです。私より年下の、かわいい感じの子でした」

駿とは夏紀の彼氏だ。

「浮気されてたってこと?」

「はい、会話も聞こえてきました。『ごめん、今日は財布が金出してくれなかったから、あんまり良いとこつれてってあげれない』って、言ってました。それで、今朝どういうことなんだって、問い詰めたら殴られました。『お前は黙って俺に金をよこせば良いんだよ』って、私…」

夏紀はそこで俯き、もう何も言わなかった。

「そう。とにかく上がって。お茶でも飲みましょう」

夏紀が頷いた。

「ありがとう…ございます…」

震えた、小さな声でそう言った。


 しばらくして、夏紀はようやく落ち着いた。

「美雪先輩」

「ん?」

「美雪先輩、やっぱり好きです」

突然のことだった。

「なに急に?うふふ」

「美雪先輩って、ほんとに優しいですね。私がなんて言っても黙って聞いてくれて、ほんとに楽になりました。相談にのってくれてありがとうございます」

「うふふ。どういたしまして」

そのときは、かわいい後輩だなと思っただけだった。

「美雪先輩」

突然抱きついて来た。

「ちょっと、どうしたの?」

「好きです」

「え?」

「好きです先輩。もう男なんて信じられません」

「本気?」

「はい。私もともとこういう趣味があったんです。おかしいですよね」

「おかしくなんかないわ。こういう人は結構居るものよ」

「やっぱり先輩、優しいです」

本気のようだった。私は戸惑っていた。

「先輩」

より強く抱きついて来た。

「ちょっと夏紀!痛い」

夏紀の息が荒くなっていった。私は夏紀を突き飛ばした。

「ご、ごめんなさい。先輩…でも私…」

「まったく。あなたにはお仕置きが必要ね」

アキハルさんに拘束されていた時の幸福感を思い出し、夏紀にも体験させてあげたいと思った。私にはアキハルさんのような経験は無かった。全てイメージでやっていた。そのときは、見よう見まねで覚えた手の拘束しかできなかった。

「せ、先輩?」

「うふふ。後ろ向いて」

「え?」

明らかに夏紀は戸惑っていた。怯えているようにも見える。

「早く。怖くないわ大丈夫よ」

恐る恐る、夏紀は後ろを向く。

「いい子ね」

縛りには延長コードを使った。かなりきつく縛った。

「先輩…!痛いです!」

見ると、夏紀の手が紫色に鬱血していた。怖くなって急いでほどいた。

「ごめんなさいね。初めて人を縛るの」

「先輩にこんな趣味があったんですね」

「幻滅した?」

「全然そんなことありません!」

「うふふ。そう」

本当にかわいい後輩だと思った。今度は緩めに縛った。ただし手は動かせないように。

「はい、完成。こっち向いて」

夏紀の顔は真っ赤になっていた。息が荒かった。

「興奮してるの?」

夏紀は黙って頷いた。私は服を脱がせた。上着は手に引っかかって脱がせられないので、そのまま手に巻き付けておいた。

「きれい」

夏紀の肌は白かった。私は携帯を取り出し、夏紀の写真を撮った。

「先輩!なにして」

「後で送ってあげるね」

何枚も何枚も撮った。私の記念すべき初めての縛りだったから。

 その日はそれで終わった。夏紀は私から縛りかたを教わり、帰って行った。

 後日、夏紀からメールが届いた。

『先輩!やってやりました』

のタイトル。メールを開くと駿の裸の画像。両手を縛られている。どこかの山だろうか。外のようだ。画像の下に本文が続いていた。

『先輩!あの後駿とは別れました。でも別れる前に、山に連れて行きました。私が下着姿になって、してほしいことがあるのって言ったら、言うこと聞いてくれましたよ!それで、後ろ向いてって言って、手を縛りました。足も動けないように縛りました。驚いた顔してました。その後服を着て、駿の服を脱がせました。あのとき先輩がやったみたいに。それで携帯で写真撮って、駿の携帯に入ってた彼女さんの連絡先に送りつけてやりました!場所と、駿はこういうプレイが好きなのよって文も添えてやりました」

それって犯罪じゃないかしらと思ったが、今でも夏紀は捕まってないので大丈夫なのだろう。もしかしたら駿がそういう趣味に目覚めたのかもしれないし。

 メールはまだ続いていた。

『ところで先輩。この間のやつ、またやってくれますか?』

それには『もちろん』と返信しておいた。

『ありがとうございます。楽しみです』

と返ってきた。とにかく、元気になって良かったと思う。


夏紀はバイ

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