十三話 相愛
この章から三人称になります
その日、美雪はいつものように春雄のいる神社へと向かった。
長い階段を登りきり、
「アキハルさーん?」
と美雪が呼びかけると、春雄が階段を登ってやってきた。
「後ろにいたの!?」
「バイト、今終わったんだ。美雪ちゃん後ろ歩いてるのに気づかないんだもん」
「そ、じゃあ、いつもの」
「常連客みたいだな」
座敷の奥へ向かい、春雄は美雪の服を脱がせ、ロープで縛り(ここから先はセリフ以外お見せできません)
「痛い?」
「うん」
「もっと強くいい?」
「いいよ」
「まだ強くしていい?」
「いつもより強いね」
「ごめん」
「謝らないでよ」
「ははっ、これじゃあ逆だ」
「私がご主人様?」
「さあね?僕はSlaveのSなのかもしれないよ?」
「ふぅん、じゃあ私はMasterのMね」
「素質ある」
「どうだか」
「いれてよ」
「なんだよ急に」
「ほしい」
「まだだめ」
「どうして?」
「どうしてだと思う?」
「わかんない」
「やっぱりMasterだよ」
「違うよ」
「どうだか」
「もう!」
「こういうのはどう?」
「くすぐったい!」
「へぇ、じゃあこれは?」
「ひひっ……くすぐったい!」
「まだまだ」
「あひっひひっひひひひ……!やめてやめて!あひひひひっくすぐったいってば!」
「面白い」
「いれてくれないの?」
「そんなにほしいの?」
「うん」
「淫乱だね」
「そうだよ」
「お仕置き」
「いたっうっ……くぅ……あっ……いっあい……」
「強すぎた?」
「どうしたの?今日いつもと違うよ」
ふと、春雄が冷めた。
「さあね?僕の縄が緩んできたのかもしれない」
「ん?いつもよりずっとキツいよ?」
「そっか」
春雄は美雪を縛っていたロープを解いた。
「終わりなの?」
「そうさ、服着な」
「うん……」
春雄はお湯を沸かし始めた。
「知ってる?好きと恋と愛の違い」
「なぁにそれ?急に」
「『好き』っていうのは『欲情』で、『恋』は『一方的な自己満足』。じゃあ、『愛』ってなんだかわかる?」
「愛?うーん、熱くて、気持ちよくて、時々苦しくて」
やかんが蒸気を吹き出し、沸騰を知らせる。
「感覚的にはそう。でもね、本質は『共有する一方的な自己満足』なんだよ。誰もが相手のことをわかった気になって、気持ちよくなってるだけなのさ」
春雄は急須に茶葉を入れ、お湯を注ぐ。
「なにが言いたいの?」
「終わりにしようってことさ」
春雄はお茶を湯飲みへと注いだ。
「そう。さようなら」
「ああ、さようなら」
「アキハルさんの言うとおりね。結局、何もわからなかったわ」
「俺もさ」
春雄はお茶をすする。その間に美雪はもう外へと歩き出していた。




