十一話 怪盗
作者は別に髪茶色に染めてる人に恨みがあるわけではありません。
教室に座っていると、チャイムが鳴った。誰かの号令で立ち上がり、礼。それで授業は終わり。次は移動教室。早めに移動しなくちゃ。
立ち上がると、先生に呼び止められた。
「おい木下!これ運んどいてくれ」
三角定規とコンパス。それの大きいやつ。
「は、はい」
先生からそれらを受け取り、準備室へ持って行く。それだけだった。
「あーあとこれも頼む」
先生が指差した先には、名前わかんないけどスクリーンとかに映像映し出すやつがあった。
「え、もう持ちきれません」
「そうか、じゃあ…」
先生は教室を見渡して
「田中!お前ちょっと手伝ってやれ」
田中と呼ばれ振り向いたのは男子。髪を茶色に染めて奇抜なメガネをかけている。何人かの男女に囲まれている。
「えー?なんで俺がぁ」
田中はあからさまにめんどくさそうな感じで答えた。なんか感じ悪い。
「うるせぇ文句言うな!暇だろ?」
「いや僕次の時間移動教室なんでー」
「それは木下も一緒だ。つべこべ言わずさっさといけ」
田中は一言「はーい」とだけ言って、名前わかんないけどスクリーンとかに映像映し出すやつを持っていった。私もそれに続く。
廊下の奥に準備室はある。
「ごめんなさい」
「はぁ!?なにが?え?」
「だってめんどくさかったんでしょ?」
「そりゃあめんどくさいけどよ、まぁしょうがねぇじゃん?」
「ありがとう」
「別にいいさ。こんくらい」
髪茶色に染めてるけど良い人かもしれない。いや別に髪茶色に染めてる人が悪い人って思ってる訳でもないけどさ。
準備室に付いたが鍵がかかっていた。
「鍵知らない?」
「持ってないよ」
「先生は?」
「職員室じゃね?」
先生鍵置いていってよ。
「じゃあ私取ってくる」
「いや俺が行くよ。黙って待ってな」
田中はそう言うと、ウインクしながら走っていった。
うわぁ髪茶色に染めててウインクするとか。キモッ!あぁでもイケメンだからなぁ。
そんなことを思っていると田中が帰ってきた。
「先生鍵置いてけってんだよな」
「そうだね」
鍵を差し込んでガチャガチャやると開いた。
「ふぅ。怪盗ルパンも真っ青だな」
すごく真面目な顔で言った。
「普通に合い鍵使っただけじゃない」
「いや、職員室に入るとき誰にも見つからずに侵入して、鍵取ってきたんだ」
なにそれすごい。でもすごく無い。
「なんでそんなことするの!?」
「だって職員室入るときって『失礼します』って言わなきゃいけねぇだろ?あれ嫌なんだよね」
「どうして?」
「失礼なことしてなにもしてないからだよ」
やっぱり真面目な顔で言った。
「と、ところで返すときどうするの?鍵」
「考えて無いよ?」
考えとけよ。大問題じゃねぇか。
「とりあえず教卓の裏とかに置いとけばどうにか誤魔化せるかも」
「お前、頭いいな!」
正直に言った方がいい気もするけど、評定落ちたらたまったもんじゃないし。
それから、コンパスや三角定規。名前わかんないけどスクリーンとかに映像映し出すやつを準備室に閉まった。そこで時計を見る。
「あ!授業開始まであと一分無い!」
「うお!やべぇ」
2人一緒に走り出した。が、私が途中で転んでしまった。
「おい、大丈夫か?」
「う、うん。なんとか」
そこで田中がじっと見つめてきた。
「お前、よく見るとかわいいな」
「え?」
「あ、時間時間!」
「あっ!」
また走り出した。通り過ぎた教室から「廊下を走るな」という声が聞こえてきた。
その日は1日落ち着かなかった。男の人にかわいいって言われたのは初めてだったから。
ちなみにあの後2人揃って遅刻した。
田中は鍵盗んだのがバレてこっぴどく叱られていた。
奇抜な眼鏡ってどんなんだろう?☆みたいな感じかな?(☆-☆)←田中




