十話 友達
「夏紀ちゃんって彼氏居ないの?」
いつものように屋上で弁当を広げていると、美雪先輩が突然言った。
「な、なんですか急に」
「だって、あなたいつもここに来るじゃない。他に友達居ないの?」
居ないです。はい。やめてくださいほんとに。この話は止めましょう。
「い、居ますよー」
「ふーん、誰?」
誰とか聞かないでくださいお願いします。
「えーあーえー。せ、先輩こそ他に居ないんですか?」
「こそ?うーん、まぁ、居るっちゃ居るけど、本当に友達って思ってるのは夏紀ちゃんだけだよ?」
あ、なんか嬉しいです。ありがとうございます。なんか照れます。
「で、夏紀ちゃんは?」
あー、やっぱり終わってなかったんですね。そりゃそうですよね。
「私も本当に友達だと思ってるのは先輩だけですよ」
「ふーん、やっぱり居ないのかぁ」
ひどいわ美雪先輩心を抉ってくるなんて!
「だから居ますよ!」
バカ!私のバカ!なんでそんなこと言っちゃうのよ!
「へぇ、じゃあ連れてきてよ!明日にでもさ」
わぁ。先輩すごい笑顔。かわいい!なんて言ってられない。言ってないけど。
「い、良いですよ。それくらい」
「で、名前は?友達の?」
先輩絶対わかって言ってる!
「明日のお楽しみです!」
明日まで友達つくらなきゃ!何としても。
「えー!ひどいなーもったいつけちゃってさぁ」
「いいんです!明日がもう楽しみでしょ!」
友達ってどこに行けばできるのかな?材料とか買わなきゃいけないのかな?
「しょうがないなー待ってやろう」
とりあえず教室…いや、いまさら出来上がったグループに入れない。なるべく独りの人を狙おう。
視線を感じて横を見ると、先輩がこちらを一心に見つめていた。
「何…見てるんですか」
「いやだって、すごい難しいこと考えてそうだったから」
「何も難しくありません!今すぐ作ってきます!」
そう言って私は立ち上がった。
「作るって、何を?」
「友達です!」
私は扉に向かって走った。後ろから声が飛んでくる。
「やっぱり居ないんだ!」
…あ。




