~第44話~ ノルマ17枚
~第16話~ 合唱大会
というわけで、実家を目指して帰ることにした私、ライラ・ライでありました。といっても、出戻りじゃありませんことよ。その辺、ご注意を!
「結局、8つのアイテムを揃えても、魔王様は復活できませんでしたね」と、ライオンのラメント。
「そうねぇ。でも、仕方がないわ。その辺の事情は、お母様がご存じのようだし、まずは、お母様に会う為にお城に帰らないと!」
私は、半ば自分に言い聞かせるように、そう言い放ちました。
次に立ち寄ったのは、音楽都市でした。
旅の途中で、興行師のおじさんに声をかけられ、ぜひともこの街で公演を開いて欲しいと頼まれたからです。熊のメトロノームやライオンのラメントも一緒にです。私が、ゾロゾロとお供の動物たちを連れている姿をいたく気に入ったそうです。
「どうする?」と、私が尋ねると、「いいんじゃないですかね」「どうせ、急ぐ旅でもなくなってしまったわけですし」「参加してみましょうよ」と、動物たちから賛同の声が返ってきました。
「わかりました~!じゃあ、やってみます!」と、私は元気よく返事をして、この街へとやってきたわけです。
滞在の間にかかる費用は、全部、興行師のおじさん持ちです。その代わり、利益の大部分はおじさんが持っていってしまいます。
私は、小綺麗なホテルに入り、フカフカのベッドの上でピョンピョンと飛び跳ねて喜びます。
「やった~!最高の環境じゃないの!こういうの1度やってみたかったのよね!お城を出て以来、質素な暮らしが続いていたから」
その後、何日も練習の日々が続きます。
「さあ、みんな、いくわよ!」
「ド」
「レ」
「ミ」
「ファ」
「ソ」
「ラ」
「シ」
「ド」
私の指示に従って、8匹の動物たちが声を出します。
「さあ、もう1度!」
「ド」
「レ」
「ミ」
「ファ」
「ソ」
「ラ」
「シ」
「ド」
さらに続きます。
「今度は、逆から」
「ド」
「シ」
「ラ」
「ソ」
「ファ」
「ミ」
「レ」
「ド」
上手い!上手い!いい感じです。
「じゃあ、今度は、楽譜を見ながら実際に歌っていきましょう!」
「シ~」
「レ」
「シ」
「レ」
「シ」
「レ」
「ド」
「ミ、ミ~」
「ラ~」
「ファ」
「ラ」
「ファ」
「ラ」
「ファ」
「ド」
「シ、シ~」
「ソ」
「ラ」
「ソ」
「ラ」
「ミ」
「レ」
「ミ」
「レ」
「ド、ド、ド、ド~」
パチパチパチパチ。私は、拍手で動物たちを鼓舞します。
*
僕は、部屋の中で大喜び!!
「いいぞ~!このペースなら、ノルマの17枚なんてアッと言う間だな。ちょろいちょろい!」
なんで、これまで、こんな簡単な方法を思いつかなかったのだろうか?このペースでいけば、17枚どころか、20枚でも30枚でも、いや100枚だってちょちょいのちょいでクリアーできちゃうじゃないか!!
「オイ!」
僕が声のした方へと振り向くと、そこには悪魔が立っていた。いや、正確に表現すれば、そこには悪魔が空中に浮いていた。ま、そんなコトはどっちでもいい。今回、重要なのは、そこではない。
「お前、いい加減にしろよ」
そう、悪魔が続ける。
「え?何が~?」と、僕はすっとぼける。
「いいのか?」と、悪魔。
「え?」
「それでいいのか?」
「は?」
「それでいいのか?と聞いている。その方法で、本当にいいのか?」
「いや、それは…」
「もしかしたら、お前はそれでいいのかも知れん。だが、作品はどうだ?お前が書いた作品は、それで満足しているか?」
「作品?」
「そうだ。お前が書いた作品。小説だよ。オレには声が聞こえるぞ。お前の書いた小説が泣いている声がな!」
「泣いている…小説が!?」
「もう1度、よ~く考えてみるのだな。1晩、ゆっくりと考えてみろ。それで満足だというならば、そのまま続けるがいい。その方法で最後まで完成させたら、お前をこの部屋から解放してやろう。その代わり、それは癖になるぞ。今後一生、お前の小説はそんな風になる。何か辛いコトがあれば、ズルをして誤魔化そうとするようになる。そういうのは1度では終わらない。それは、お前の癖となり、性格となり、運命となって、一生お前の人生を支配し続けるだろう」
そう言って、悪魔は姿を消した。
それから、僕は部屋の中でゆっくりと考え始めた。