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~第38話~ ノルマ14枚

 ~第13話~ 野生のニワトリ


 さて、新しい仲間、熊のメトロノームを仲間に加え、私、ライラ・ライの旅は続きます。

「え~っと…確か、残りはライオンとニワトリと牛だったわね」

 私がそんな風に独り言を呟いていると、後ろから文句を言う声が聞こえてきます。

「まったく姫様は!アレほど目立つなと口を酸っぱくして言っておいたのに!目立つどころか、自分から見つけてくださいと言わんばかりじゃ」

 小犬のフーガです。

「もう!いつまでもグチグチグチグチうるさいわね!!男らしくない!!」と、私は一喝します。

 それでも、後ろの方からグチが続いて聞こえてきたので、私は完全にスルーすることに決めました。

 あの後、メトロノームに案内させ、森に隠してあった王冠を発見しました。8つに分かれたお父様の1部。魔法のアイテムの1つです。効果は、生き物を魅了して操る能力。相手が単純な思考であればあるほど、効きやすいそうです。

「これさえあれば、サーカスでも、もっと簡単に猛獣たちを操れたのに…」と、私が文句を言うと、「申し訳ない…」とメトロノームが謝ってきます。私が知っていたメトロノームは、もっと自信満々で常に誇り高かったのに。あの頃の威厳は、一体どこへ行ったのやら。サーカスで鞭打たれた経験が、よっぽどこたえたのかしら?

 ま、いいわ。とにかく、先へ進みましょう。


 エメラルドのネックレスの光に導かれ、私たちは次なる目的地へと向います。この光に向って進んでいくと、次の仲間に会えるようにできているのです。

 私は、旅の途中で、手に入れた能力をいろいろと試してみました。一番便利なのは、やはり、重力操作の能力です。けれども、威力が大きい分、すぐに魔力が尽きてしまいます。あまり頻繁には使わない方がよさそう。イザという時の為に取っておきましょう。

 逆に、“飛行の腕輪”は、そんなに魔力を消費しません。長時間連続で使用しても、そんなに疲れません。装備している者に触れていれば、全員一緒に飛ぶこともできます。もちろん、私が魔力を注いでやらなければ、効果を発揮しませんが。

 “風を操る水晶玉”も、使い方しだいで、いくらでも使えてしまいます。そよ風程度ならば、1日中吹かせておくことも可能かも。台風くらいの強風だと、一瞬で魔力が切れてしまいそうだけど…

 “魅了の王冠”は、動物相手だと、ほぼ確実に1発で効果を発揮しました。魅了した相手を思いのままに操れます。あまりにも複雑な動作は無理だったけど、普段から行っているような単純な動きなら、大丈夫!人間相手だと、どうなんだろう?まだ試したことはないけれども、神経質な人だとかかりにくいのかな?


 そうこうしている内に、次の目的地へと到着したようです。

「ここ?なんだか、誰も住んでいなさそうだけど…」と、私は呟きます。

 見ると、そこはうっそうとした森でした。どうやら人は住んでいないみたいです。次なる仲間が1人…いや、1匹で隠れて暮らしているのかな?

 そんな風に私が思っていると、森の中からガァガァという鳴き声が聞こえてきました。そうして、1匹のアヒルが姿を現しました。続いて、チチチッという鳴き声。今度は1匹ではありません。姿を現したのは、無数のスズメたちです。その後は、次から次へと様々な種類の鳥が飛び出してきます。よく見かける鳥から、奇抜な格好をしていたり、生まれて初めて見る珍しい鳥まで。その鳴き声も多種多様。ゲェゲェと、まるでカエルのような鳴き声だったり、クワァクワァだったり、ピ~ヒョロロ~だったり。

「な、何なの!?これは!?」

 私は、驚いて声を上げてしまいます。

「どうやら、鳥の群れのようですが」と、冷静に亀のケルン。

「それは、見ればわかるわよ!なんで、こんな所に!それも、こんなにいろんな種類の鳥が!?」と、私。

「集団で暮らしているみたいですね。この方が安全だと思っているのでしょうか?人間に襲われないように」と、これは、馬のポリフォニー。

 そこに、森の奥から甲高い声が響いてきます。

「何者じゃ!我らの平穏な生活を邪魔するのは!」

 そうして姿を現したのは1匹のニワトリでした。

「もしかして、アレって…?」と、私が尋ねると、小犬のフーガが即座に答えます。

「はい。我らが仲間の1人、スタッカートです」

 このニワトリが、元八人衆の1人スタッカートとは…

「オ~イ、スタッカート!何やってるのよ?早く降りてきて、私たちの旅に加わりなさいよ~!」と、私は高い木の上に登っているニワトリに向って叫びます。

「グッ…その声は、ライラ姫様…」

 どうやら、声で私だとわかってくれたようです。けれども、返ってきたのは反論の言葉でした。

「そ、それが、そうもいかぬのです。どうかオイラのコトは忘れて、皆で先へお進みください」

 は?何を言ってるの?このニワトリは?

「そんなわけいくわけないでしょ!ブツブツ言ってないで降りてきなさいよ!」

 私の叫び声にも反応せず、ニワトリのスタッカートは森の奥へと去って行ってしまいました。

「申し訳ない…」と、ただ一声を残して。


 さて、またもや作戦会議です。

「さあ、どうしたものですかね?」と、蛇のアレグロ。

「面倒だから、もうこうなったら風の魔法で森ごと吹き飛ばしちゃおうか?」と私が提案すると、即座に小犬のフーガに反対されます。

「自然破壊は、おやめください」と。

「じゃあ、どうすんのよ!」という私の声に、亀のケルンが落ち着いて答えます。

「ここは1つ、話し合いの場を持ってみてはいかがでしょうか?スタッカートの奴も、何かしらの理由があってのことでしょうし」

「最悪の場合、置いていけばいいんじゃないの?アイツ、あんまり役に立ちそうにないし」と、これは、ウサギのピーター。

「そんな薄情な…」

「けど、どうしようもない時は、そうするしかないよな」

「スタッカートの奴が首を縦に振らない場合には、魔王様の1部であるアイテムだけ渡してもらうという手もありますな」

 そんな声が聞こえてきます。

 できれば、1人も欠くことなく、お父様の復活に立ち会わせたかったのですが。ここまで、全員ついて来てくれているわけですし…

 とりあえずは、話し合いです。あんまり大勢で押しかけても、他の鳥さんたちを驚かせてしまうでしょう。特に、蛇とか犬とかは駄目そうです。ここは、私と亀のケルンだけで向うことにしましょう。


 テクテクと歩いて、私とケルンは森の奥へと入っていきます。

 今回も、大勢の鳥さんたちのお出迎えがありましたが、どうやら襲ってくる気配はなさそうです。遠巻きに、こちらを眺めているだけ。

「スタッカート!スタッカート!出てきなさいよ~!なにも捕まえて鳥鍋にしたり焼き鳥にしようってんじゃないんだから~」

 私の声に従って、渋々とスタッカートが姿を現します。

「何の用ですか…オイラなら、置いていってくださいと言ったじゃないですか」

「そんな無愛想な。あんなに長いこと一緒にいた仲じゃないの。だいぶ見た目は変わっちゃったけど」と、私。

「そうだぞ。お前は恩を忘れたのか?急に魔王様を裏切ったりして。いいコトなんて1つもないだろう?」

 そう、亀のケルンも援護してくれます。

「別に裏切ったわけじゃ…」

「じゃあ、何なのよ?」

「オイラは目覚めたのです」

「目覚めた!?何に?」

 私が尋ねると、スタッカートは自信満々で答えます。

「虐げられた動物たちを守るという行為に!!」

 どうやら、これはちょっとやそっとでは説得できそうにありません。

「仕方がない。強硬手段よ」

 私は、そう言うと同時にスタッカートに飛びかかります。

 それをスルリとかわすスタッカート。さすがニワトリ。なかなか素早いものです。

「ならば…」と、今度は重力制御の魔法を使い、敵の重さを重くしようと試みます。ところが、それもスルリと避けてしまいます。敵もさるものです。

「これは…かなり手強いわね。貸しなさい!」

 そう言うと、私は亀のケルンから、真っ赤なマフラーを奪い取ります。これは、“疾風のマフラー”身につけた者のスピードを何倍にもしてくれるのです。

「これで互角!」

 そう叫ぶと、私はニワトリのスタッカートに迫ります。

「グッ!やるな!ライラ姫様!しかし、負けるわけには!!」

 こうして、追いかけっこ開始!!逃げるニワトリ、追いかける私。野生化したニワトリのスタッカートは、羽を広げ飛び上がると、軽々と木のてっぺんまで舞い上がります。私も負けじと、飛行の腕輪の力で同じ距離まで飛びます。

 平和な話し合いにやって来たはずなのに、なぜだか必死になって森中を飛び回っている私たち。最初は真剣に捕まえよう、逃げようとしていた私とスタッカートですが、段々とその行為が楽しくなってきました。これが“ランナーズハイ”ってヤツでしょうか?いつしか、浜辺で追いかけっこをする恋人たちのようにキャッキャウフフと楽しんでいるのに気がつきました。

「待て~♪」「つかまるものか~♪」ってな感じです。

 そうして、延々と森の中を飛び回り、走り回って、ついに私はニワトリ1匹を捕らえることに成功しました。

「やった~♪ついに、つかまえたぞ~♪」

「ああ~あ、つかまっちゃったか♪」

 そうして、私たちは地面に寝転がり、天を仰いでアハハハ、アハハハハと大声で笑い合ったのでした。

 昨日の敵は今日の友。青春ドラマだって、ライバル同士が拳と拳で殴り合い、男臭い汗をまき散らしながら、最後は和解して夕日に向って叫んだり、走っていったりするでしょう?アレとおんなじ感覚。とにかく、私とニワトリのスタッカートは全力を尽くし、汗だくになって、以前よりもずっと仲良くなったのでした。


 こうして、1つの戦いを終えた私たちは、森の外で待つ動物たちの元へと、一緒に肩を組みながら戻ってまいりました。

「そういえば、あんた、さっき“虐げられた動物たち”がどうのこうの言ってたけど、アレはどういう意味だったのよ?」

 私の質問に、スタッカートが答えます。

「ああ、それはですね…魔王様の元を離れたオイラは、人間にとっつかまって、ニワトリ小屋へと入れられてしまいました」

「あんたたち、よく捕まるわね…」

 私のその言葉を無視して、スタッカートは続けます。

「そこで、大勢の仲間と出会ったのです。そうして、オイラはニワトリ小屋を破壊し、仲間のニワトリたちと共に逃げました。その途中で、他の鳥たちとも出会い、森を住み家に暮らすこととなりました。オイラは、鳥のリーダーとなったのです。なので、彼らを守らねばならぬ身にあるのですが…」

「ま、いいわ。それはそれとして、とりあえずはお父様の復活に協力なさい。それが終わったら、あんたの自由にすればいいから」

「はい。そうさせていただきます。一通り、事が終わるまではライラ姫様の旅のお供をさせていただきましょう」

 こうして、新たにニワトリのスタッカートが仲間に加わったのでした。

「まあ、何にしてもお前が帰ってきて嬉しいぜ」

「これから、また仲良くやろうな!」

 などと、他の動物たちも、やんややんやと盛り上がっています。


 その後、ニワトリのスタッカートは、鳥の一団のリーダー役をオウムに任せ、鳥たちとは別れを告げたのでした。

「さようなら~」

「すぐに帰って来いよ!」

「またな~」

 などという熱い声援に見送られながら。

 いや、実際にそう言っていたかどうかは不明ですが。なにしろ、私の耳にはガァガァ、ピ~ヒャララ、ピーチクパーチク鳴いているようにしか聞こえなかったのですから…

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