~第37話~ 小説の中の登場人物
ふぅ…
どうにか、スランプを脱したか。次の話も書き始めているし、これでしばらくは大丈夫そうだ。もちろん、いつまた突然書けなくなるかはわからないけれども、さしあたっての危機は回避したな。
それにしても、書き進めている内に、「この小説の登場人物であるライラ・ライという女の子が実際に存在しているのではないだろうか?」という気になってきた。この小説を書いているのは、もちろん、この僕なわけだけど。ライラ・ライは、どこかの世界に実在していて、その思いが僕に伝わってきて、自動で僕に小説を書かせているのではないだろうか?
「フフフ…なかなかいい小説の書き手になってきたじゃないか」
突然、ボンッと悪魔が現われて、そう言った。どうやら、僕の心を勝手に読んだらしい。
「いい小説の書き手?」
「そうさ。登場人物が実在すると錯覚するくらい没頭して書けるようになれば、もう立派なものさ」
「そういうものかな…」
「もしかしたら、お前ならば、最後まで書き通せるかも知れないな。その小説を」
そう言うと、悪魔は静かに姿を消した。
悪魔が残していった言葉を、僕はもう1度ゆっくりと噛みしめるように考え直してみた。そうして、こんな風に考えが広がっていく。
“もしかしたら、この僕自身、誰かが書いている小説の登場人物なのかも知れないぞ”と。
そうして、この小説を書いている作者も、どこかの作家が書いている小説の登場人物に過ぎなくて、その人物もまた…いや、やめよう。そんなコトを考えていてもキリがない。それよりも、目の前の小説に没頭しよう。せっかく筆も乗ってきた所だし。ここで勢いを止めたくはない。
何はともあれ、目の前の作品を完成させる。全ては、それからだ。