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~第32話~ ノルマ11枚

 ~第10話~ サーカスの巨大テント


 さて、新しい仲間を加え旅を続ける、私、ライラ・ライでありました。

 だいぶ、仲間の動物さんたちの数も増えてきましたね。1、2、3、4…数えてみると全部で5匹。ウサギのピーターは別としても、残りの4匹は、元々“八人衆”という魔王直属の部下だったわけです。それが、憐れこのような姿に…

 というか、元々はこっちが本当の姿だったらしいんですけどね。魔王であるお父様の力で、いかつく仰々しい姿へと変身していただけなのです。私が知っているのは、そっちの仰々しい方の姿。なんだか、こっちの動物さんたちの格好を見ていると、ペットでも飼っている気分になってきます。


 そんなわけでランランラン♪と、楽しい気分で旅を続けます。

 ここで、私の頭の中に1つの疑問が。

「そういえば、ポリフォニー、あんたが預けられたお父様の一部って何なのよ?」と、私は馬のポリフォニーに尋ねます。

 魔王であるお父様は、勇者の策略に引っかかり、いろいろあって、その魂と体を8つのアイテムへと変えられてしまったのです。そうして、動物の姿に戻った八人衆が、そのアイテムを1つずつ持っているはず。それぞれ、特殊な能力のあるアイテムを。

「ああ~、アイテム。アイテム。これですね」

 そう言って、馬のポリフォニーは、自分の右前足を掲げて見せます。

 そこには、1つの古ぼけた腕輪がはまっていました。いや、足にはまっているから、足輪かな?

「で、これには、どんな効果があるの?」

 私の質問に、ポリフォニーは答えます。

「効果。効果…確か、身につけた者を空中に浮かせるとか、そのような効果だったはず」

「なんだ、結構便利なものがあるじゃないの。それを使って、さっさと馬小屋から逃げ出せばよかったのに」と、私が言うと…

「ただし、使用するには魔王様の血筋の者が魔力を注がなければならないので、結局、使えるのはライラお嬢様しかいらっしゃらないんですけどね」と、ポリフォニー。

「他のアイテムも全てそうですよ。姫様以外には使いようがありません。他の者にとってみれば、単なるガラクタ。あるいは、観賞用の美術品といった所でしょうか?」と、これは小犬のフーガ。

 なるほど。上手くできてるわね。これで、万が一アイテムを盗まれたとしても、敵に利用されたりはしないわけね。


 さて、ネックレスの光に導かれ、私たちは旅を続けます。大きな緑色の宝石エメラルドのはめられたネックレス。お父様のカケラの1つであるこのネックレスが、次の仲間の元へと私たちを導いてくれるのです。

 次なる到着地はというと…大きな街のはずれにやって来ました。なんだか、巨大なテントが張ってあります。天まで届きそうな大きな大きなテントです。

「な、なんなの…これは!?もしかして、敵の秘密基地!?」

 私は、心底驚いて、そう叫びます。

「あ、これはサーカスですね。サーカスのテント」と、亀のケルン。

 これが、噂のサーカスというものか…

 私も話には聞いていましたが、実際に見るのは初めてです。なにしろ、広いお城に閉じ込められたままの箱入り娘。世間の情報には、何かと疎いのです。

「とりあえず、入ってみましょう」

 私が提案すると、みんな、ゾロゾロと後からついてきました。


 サーカスの巨大テントの中に入ると、中はまだ準備中でした。

「コラコラ、勝手に入ってきちゃいかんよ」と、サーカスのスタッフらしき男の人に注意されます。

「あ、すみません。僕ら、別の用があって来たんです」と、私は答えます。私は正体を明かさないように、普段は男の子の格好をして行動しているのです。なので、人前ではいつもこのような喋り方。

「おっと、すまない。入団希望者かい。これはこれは、なかなか有能そうだね」と、男の人は、私の後ろの方を眺めながら言います。どうやら、私がゾロゾロと動物たちを連れ歩いているので、猛獣使いか何かと勘違いされたようです。

「あ、いえ。そういうわけでは…」

 何だか面倒なコトになりそうです。こんなコトならば、動物たちは置いてくればよかったかも。

「まあまあ、そう言わずに。ちょっと入団テストを受けていきなよ。団長を紹介するから。だ~んちょ~~う!!」と、男の人は勝手に話を進めていき、叫びます。

 そう呼ばれて飛び出してきたのは、白ヒゲのニコニコ顔の人のよさそうなおじいさんでした。どこかサンタクロースを思い出します。

「やあやあ、何か用かい?妖怪じゃないよ」などと、くだらないダジャレを言っています。

「団長、この子がサーカスに入団したいそうです」

「あ、いえ。決してそういうわけでは…」と、私は慌てて否定します。

「ほっほ~、入団希望とは、これまた珍しい。で、どのような芸ができるのかな?」

 団長も全然話を聞かないタイプのようです。

「猛獣使いだそうです。ほら、見てください」と、サーカスの男の人は、私の後ろをついてきている動物たちを指さして言います。

「ほっほ~、これはこれは若いのに見事なもんじゃ。亀にウサギに犬に馬。それに、蛇までおるのか」と、団長。

「いえ、これは僕のペットみたいなもので。普通の動物では、こうはいかないので…」と、私は取り繕います。

「まあまあ、それでも素質はありそうじゃ。とりあえず、仮入団ということで。マッコイ、この子たちの面倒を見てさしあげなさい」と、サーカスの団長は瞬く間に決めてしまいました。なんという決断力でしょう…

「よ~し!じゃあ、君たち、僕についてきなさ~い!」と、マッコイと呼ばれた男の人が案内してくれます。

 ま、いっか。労せずしてサーカス内部に潜入できたことですし、ここはよしとしておきましょうか。仮入団でも何でもしておいて、とりあえず、次の仲間を探すことといたしましょう。仲間を助け出したら、サッサとトンズラこけばいいだけです。

「さあ、ここが君らの寝床だよ」と、マッコイさんに案内されたのは、2人部屋の狭い小部屋でした。

 巨大テントの中は、いろいろと仕切られていて、いくつもの小さな部屋のように分けられています。ちょっと歩いただけで、迷ってしまいそう。まるで、ちょっとした迷宮のようです。

「ホテルなどには宿泊しないんですね」と、私が質問すると、マッコイさんが答えてくれます。

「ああ、少しでも出費を抑えたいからね。こう見えても、我々はそんなにお金持ちとは言えないんだ。猛獣たちのエサ代なんかも結構かかるしね」

「なるほど」

「さて、僕はもう行くよ。テントの中は好きに見て回って構わないから。同室の子が帰ってきたら、あいさつしておいてくれたまえ」

「同室の子?」

「ああ、君と同じ男の子だ。このサーカスで働いているんだ。じゃあね」

 そう言って、マッコイさんは去って行ってしまいました。

 男の子か…男の子と一緒に寝泊まりするだなんて、ドキドキするわね。こうなったら、なおさら早めに次の仲間を見つけて、ここを去らないと。


 その後、私はサーカスのテント内を歩いて回ります。他の動物たちは、部屋に置いてきました。馬のポリフォニーだけは体が大きいので、サーカスの動物小屋で預かってもらいました。

 私は、エメラルドのネックレスの光に導かれて、進みます。すると、猛獣の檻が置かれているゾーンへとたどり着きました。ということは、熊かな?ライオンかな?

「あ、ライラ様!」

 声のした方向を見ると、熊でした!

「お助けください、ライラ様。私です。メトロノームです」

 情けない声を出しているのは、八人衆の1人メトロノームのようです。前に見た時には、もっとゴツくて威厳もあったのに。こうして見ると、なんだか小動物のような雰囲気です。

「どうしたのよ、あんたまで。人間にとっつかまっちゃって」

「まったく申し訳ない。魔人であった頃の調子でいたら、ちっとも力が出せず、このザマです。今は単なる1匹の熊に過ぎないようです…」

「見りゃわかるわよ。とりあえず、ここを開けるのに鍵が必要なようね。強行突破するという手もあるのだけど…できれば、あまり目立ちたくないし、ここはもう少し様子を見ましょう」

「わかりました。早めのお助け、お待ちしております」

 メトロノームの声を後に、その場を去ろうとすると、そこに1人の少年が立っているのに気がつきました。

「君、今、その熊と喋ってた?」と、少年が話しかけてきます。

 シマッタ!どうやら、メトロノームと会話している場面を見られていたようです。どうしましょう?ここは、何かと理由をつけてごまかしてもいいのですが…

「え、あ、うん。喋ってたよ。これでも、僕は猛獣使いの端くれだからね。動物と会話の1つもできないと、やっていけないものだからね」

「あ、そうか。そうだよね。猛獣使いなら、動物と会話の1つもできないとね」と、少年は納得してくれています。どうやら、上手くいったようです。

 アレ?そういえば。少年?男の子?

「もしかして、君、僕と同室なんじゃ?」と、私は尋ねます。

「同室?同じ部屋ってこと?」

 その後、2人で部屋に戻ってみると、やはりそうでした。

 そっか。この子がね…この子と一緒に2人きりでこの部屋に寝ることになるとは。ま、見た目は悪くなさそうね。って、私は何を考えてるのかしら。そんな関係じゃないから!






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