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~第30話~ ノルマ10枚

 ~第9話~ お嫁さん探し


 さて、ひょんなコトから、お嫁さん探しをすることになってしまった私でありますが。一体、どうすればいいのでしょう?

 とりあえずは、情報収集です。街に出て、リサーチ開始!!結婚適齢期の女性に、どのような男性がタイプか聞いて回ります。すると、意外な結果が…

 最も重視する条件は何かといえば、“安定した収入”でした。やっぱり、世の中、お金が大事なんですね。


 その後、私は農家の男の元に戻って、いろいろと情報を引き出します。

 名前は、グリモグ。年齢は、29歳。例の農場の農場主です。これまでマジメに働いてきて、農業一筋の人生。なので、世間に揉まれた経験は、ほとんどありません。いわば、世間知らず。けれども、その分、結構な資産を持っています。農場に加えて、馬や牛などの家畜。さらには、いくらかの貯金もあります。この時代に、借金なしで農場を運営しているということで、かなり優秀な農場経営者と言えるのではないでしょうか?

 どうやら、安定した収入という条件はクリアーできたようです。


 さて、それから私たちは、何日もかけて準備をし、婚活パーティーを開くことにしました。

 男性陣は、農場主のグリモグさん1人だけ。女性陣は思わぬ大盛況で、若いのから年配の人まで、数十人のメンバーが集まりました。こんな時代ですから、安定した収入のある男性って、人気なんですね。私も、結婚相手を探す時に、考えちゃうかも。


 こうして、婚活パーティーが始まりました。

 この間、お父さんの部下である動物たちは、人目のつかない場所で静かにしています。人前でおしゃべりしていたら、おかしいですものね。

 …と思ったら、小犬のフーガがチョコチョコと歩いてやって来ます。何やら、話したいコトがあるようです。人のいない場所まで移動し、私はフーガを耳元まで引き寄せて、話を聞きます。

「何なの?」と、私が尋ねると、フーガがこう答えます。

「申し訳ありません、姫様。アレグロの奴に、馬小屋のスキマから小屋の中に侵入してもらった所、中にいたのは、馬のポリフォニーだったそうです」

「そう。やっぱり、お馬さんだったのね。わかったわ。人に見られるとまずいし、隠れててちょうだい」

「ハッ!」

 そう。やっぱりお馬さんだったのね。そりゃそうか、馬小屋だものね。そんな風に思いながら、私はそそくさとパーティー会場へと戻ります。

 会場では、主役のグリモグさんが、いろいろなタイプの女性から積極的にアプローチを受けています。グリモグさんは見た目もそんなに悪くないし、このままいけば、誰かと上手くいきそうです。

 私は安心して、会場に用意された食事に手をつけ始めました。

「モグモグ、モグモグ…さすがは、農家の一人息子ね。料理も、結構なものが用意されているわ。このお肉は、ここで育てられたブタさんかしら?かなりの高級食材ね。これは、毎年利益が上げられるわけだわ」

 私は、そんな風に独り言を呟きながら、次から次へと用意された料理に手を出していきます。私も、魔王の子。特に、お母様は贅沢好きだったので、物心ついた頃から美味しい物はたくさん与えられて暮らしてきました。その私の舌を唸らせるほどですから、大したものです。

 すると、そこへ1人のかわいらしい女の子が話しかけてきました。まだ十代でしょうか?見た目は、かなり若く見えます。こんな子、いたかしら?

「あなたは、アプローチしないの?」と、その子の方から話しかけてきました。

「いえ、私は…いや、僕は関係者の1人でして。それに、男なので」

 とっさのことで、女の子として返事をする所でした。危ない危ない。

「アラ、そうなの?あんまりにもかわいいので、女の子かと思っちゃった」

 そんな風に言われて、悪い気がするはずもありません。私は気分をよくして、その子と話を続けます。

「私は、リン。実は、私も本当は男なのよ」

 自らリンと名乗ったその子は、サラリと爆弾発言をします。

「え?は?」

 驚いた私は、まともに返事ができません。もう1度上から下までじっくりと丁寧に見直しますが、どう見ても女の子にしか見えません。今、流行の“男の娘”ってヤツでしょうか?

「驚いた?ここには、自分の実力を試しに来たのよ。この格好で、農家の息子を落とせるか試す為にね」

 リンは、そんな風にサラリと言ってのけます。私は関係者だって言ってるのに、そんなコトも気にしていないようです。追い出されるとか考えないのかしら?それにしても、このかわいらしい子がね…ということは、アレがついてるってことよね?

「あ、今、ナニがついてるかって考えたでしょう?もちろん、ついてるわよ」

 図星です。この子には、人の心を読む力もあるのでしょうか?

 ま、でも、私には関係のないコトです。馬のポリフォニーさえ取り戻せれば、それだけで充分なのですから。そう思って、私は食事を続けます。ほんと、ここの料理は美味しい!!毎日、この料理を食べる為だけに、この農家にお嫁に行ってもいいくらい。いや…でも、あの息子じゃね。見た目はそんなに悪くないけど、性格的には遠慮したいわね。なんだかすっとろそうだし。きっと、この世界のどこかには、私に相応しい白馬の王子様が待っていてくれているに違いないわ!

 私も、こういう所は、年頃の女の子なのよね…


 さて、そうこうしている内に、婚活パーティーも佳境に入ってきました。そうして、いよいよ農家の息子であるグリモグさんが、お相手を選ぶ段取りとなりました。

 今日の所は何人かに候補を絞り、後日、デートを重ねたりして、本格的に結婚相手を1人に決める…という話になっていたのですが、グリモグさん、えらくお気に入りに人が見つかったとかで、いきなり1人に候補を絞ったようです。

 そうして、そのお相手というのが、なんと!あのリンさんじゃありませんか!

 私は、こっそりとグリモグさんの側まで近づいていって、遠回しに忠告します。

「グリモグさん、グリモグさん、ちょっとお話が…」

「おお~!あんたかぁ~!あんたのおかげで、理想の嫁っ子が見つかったぞぉ。ほんとにありがとなぁ」

「いえいえ、どういたしまして…って!それは、ちょっと早急じゃないですかね?もうちょっといろいろとお突き合いしてみてからでも遅くないんじゃ?もしかしたら、思わぬ欠点なんかが発覚するかも知れませんし…」

「なによ。私の邪魔しようって言うの?」と、リンさんも口を挟んできます。

「いえ、そんなわけでは。でも、あなた、例のアレがナニが…」と、私もしどろもどろになって答えます。

「おぉ、そうだ、そうだ。そうだった。馬だったなぁ。ホレ、これが馬小屋の鍵だ。好きな馬を連れていっていいぞぉ」と言って、グリモグさんは馬小屋の鍵を渡してくれました。

 ま、いいか。本人同士が納得してるんだったら、それで。後のコトなんて知ったこっちゃないわ。さっさと先へ進みましょう。

 そう決心して、私は馬小屋へと向ったのでした。


 私は、仲間たちを全員集めて、馬小屋の扉を開けました。

「いや~、助かりましたよ。この狭い馬小屋で一生を終えることになるかと考えると、夜もおちおち眠れやしませんでした」と、馬のポリフォニー。

「まったく、なんで人間になんてとっつかまっちまったんだよ」と、蛇のアレグロ。

「まったく面目ない…」などと答えているポリフォニーを横目に「あんたもだろうが!」とアレグロにツッコミを入れたくなる気持ちを抑える私でありました。

 そこへグリモグさんとリンさんの2人がやって来ました。

 ヤバイ…これは、きっと文句を言われるぞ。と身構えた私でしたが、そんなことは全然ありませんでした。

「実は、この人に本当のコトを話したら、それでも構わないと言ってくれて。それで、私の方も本気で結婚を考える気になって…」と、リンさん。

「男だろうが女だろうが関係ない!これからは、グローバルスタンダードな時代なんだぁ!」などと、グリモグさんも、よくわからないセリフで賛同しています。どうやら思ったよりも懐の広い人だったようです。決心も固く、思ったよりも男気もある人だったみたい。

「結婚式には、出席してくれよなぁ」などと言っています。

 結婚っていったって、法律的にはどうなるのかしら?そもそも、跡継ぎの子供はどうするのよ?ま、養子でももらえばいいのかな?などと考えながら、「わかりました。日取りが決まったら、教えてください」などと、私は適当に返事をしておきます。


 何はともあれ、こうして、私は新たな仲間“馬のポリフォニー”を加え、旅を続けることとなったのでした。

 


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