~第2話~ 再び、1枚目。
さて、1話目は書き終えた。次は、どうしよう?
そこで、突然、悪魔の声。
「オイ!ちょっと待て!」
「え?なんですか?せっかく快調に執筆しているのに、邪魔しないでくださいよ」と、僕は答える。
「まさか、それで、1話目を書いたつもりじゃないだろうな?」
「いや、書きましたよ。ちゃんと1枚。原稿用紙換算で1枚以上。それの何がご不満なんです?」
「今、書いたのは、現実の出来事だろう?そんなもの小説とは、言えんだろう」
「そうなんですか?」
「そうだよ。ズルせず、ちゃんと書け!」
悪魔に怒られてしまった。どうやら、ここで起こったコトや考えたコト、会話した内容などは小説にカウントされないらしい。全く融通が利かないな…そんなルールがあるなら、最初に言っておいてくれよ。
というわけで、再び書き直し。
僕は、パソコンのワープロソフトに、新しく1行目を書き始める。と、その前に、タイトルと作者名。タイトルは「勇者と思っていた人が、実は極悪人だった」これでいいだろう。作者名は“僕”と。
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「勇者と思っていた人が、実は極悪人だった」 作者:僕
~プロローグ~
勇者だと思っていた人が、実は極悪人だった。みなさんには、そんな経験はないだろうか?
え?あるわけないって?それがあるんですよ。世の中には、そんな出来事が。みなさんも、気づいていないだけで、実は身近に極悪人がいるんじゃないですか?たとえば、かつての総理大臣とか、学校の担任だった先生だとか。もしかしたら、お父さんやお母さん、お兄さんやお姉さんかも知れない。弟や妹や、いとこや、おじさんおばさん。もしかしたら、親友のアイツや、恋い焦がれているあの子かも。
僕の場合は、それが勇者だったってだけのコトなんです。
え?勇者が何かご存じないって?魔王を討伐に行った、あの勇者ですよ。そりゃ、皆さんの世界には住んでないかも知れませんけどね。ま、似たような人はいるでしょ?かつて大きな戦争で活躍した英雄とか、そういった人ですよ。
これからする話は、その勇者の仮面をかぶった極悪人だった野郎の話なんです。
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ま、こんなもんだろう。
数えてみると、ちゃんと原稿用紙で1枚以上ある。これならば、悪魔も許してくれるはずだ。