~第21話~ ノルマ7枚
~第6話~ ペンダントの光
さて、私、ライラ・ライと小犬のフーガの旅は続きます。
フーガは、魔王であるお父様の力で八人衆という魔人の1人になっていたのですが、お父様を救う為に元の小犬の姿に戻ってしまったのです。憐れ、このような小さなワンちゃんでは、何の力もありません。せいぜい、人の言葉が喋れる程度。
けれども、かわいらしい姿でもあります。私の後ろからチョコチョコと歩いてついてくるのも愛嬌がありますし、両の腕に抱いてハァハァと息を切らしているのを眺めるのもいいものです。
…と、余計なコトをしてはいられません。私は、8つのアイテムを集めて、魔王であるお父様を復活させなければならないのです。
私は、フーガから受け取ったペンダントを宙にかざして眺めてみました。これが、お父様の今の姿。8つに分かれた心と体の1つ。という話なのですが、にわかには信じられません。確かに高級そうなペンダントではあるけれど、こんなものが本当にお父様なの?
フーガの話によると、8つのアイテムはそれぞれ別の形をしていて、全部がこのようなペンダントの姿をしているわけではないそうです。世界中に飛び散った残り7人の仲間を見つけ出し、同時に残り7つのアイテムも集めなければなりません。
「で、次はどこへ向えばいいの?」と、私はフーガに尋ねます。
「それは、そのペンダントが教えてくれるはず。姫様ならば、そのペンダントの能力を引き出せましょう」
そう言われて、私はペンダントをギュッと胸に抱きしめて願いました。お願いお願いペンダントさん、どうか私のお父様の行方を教えてちょうだい。
すると、ペンダントは静かに輝き始めました。そうして、一筋の光が伸びていき、1つの方向を差し示しました。
「あっちね」
こうして、私たちは、ペンダントの光が示す方向へと歩いて進み始めました。
何日も何日も旅をして、次にたどり着いたのは小さな村でした。
「こんな辺境の村に、本当に次の仲間がいるの?」と、私は尋ねます。
「ですが、ペンダントの光は、確かにこの村を差し示しております」と、小犬のフーガ。
「しょうがないわね。行ってみますか」
こうして、私たちは村の中へと入っていきました。
村は、“蛇使いの村”でした。数多くの村人が蛇使いとなり、無数の蛇を飼っているのです。そうして、ペンダントの光に導かれるまま、私たちは1つの小屋の前に到着しました。ズカズカと、そのまま小屋の中へと入っていきます。
すると、透明な瓶の中に、1匹の蛇を発見しました。他の蛇たちに混じって、あからさまにおかしな体型をした蛇です。お腹の部分がポッコリと膨れていて、まるでツチノコのような姿をしています。
「あ、アレグロ」と、小犬のフーガが声にします。
「ああ!ライラお嬢様!そっちは、フーガか!?早く、ここから出してください!」
そう言われて、私は瓶の蓋を開けてやり、中からツチノコの姿をしたアレグロを助け出してやりました。
「いや~、大変な目に遭った。おかげで助かりました…」と、アレグロがお礼を言います。
「どうした?その腹は?」と、フーガ。
「ああ、これか。これはな…」と言って、蛇のアレグロはゲ~ッと口から何かを吐き出しました。
ポンッという音と共に飛び出したのは、大きな水晶玉でした。占い師が占いに使うような、あの水晶玉です。
「申し訳ないが、オレには腕がなくてな。魔王様のカケラを、こうして腹の中に収めていたというわけさ。時々、取り出しては飲み込んでを繰り返していたおかげで、どうやら腹の中で消化されずに済んだらしい」と、アレグロ。
「それが腹に詰まっていたから、あんな格好になっていたのか」と、フーガ。
見ると、蛇のアレグロは、さっきまでのツチノコではなく、どこにでもいるような普通の蛇の姿へと変わっていました。元々、こっちのスタイルが原形だったようです。
そこへ、ドタドタという足音と共に、蛇使いの村人たちが入り込んできました。
「何者!?」
「蛇泥棒か!!」
「許すな!捕まえろ!」
村人たちは、口々にそのようなセリフを吐いてきます。
「ライラお嬢様!それをお使いください!」
そう、蛇のアレグロが叫びます。アレグロが首で指し示した先には、例の水晶玉が転がっていました。アレグロの胃液でベトベトになった水晶玉が…
「ゲッ、こ、これを…!?」
ついつい、私の口からそのような言葉が漏れてしまいます。
「その水晶玉には、風を操る力があるのです」
アレグロにそう言われて、私は仕方がなく胃液でベトベトになった水晶玉を手に取ります。そうして、水晶玉に向って、こう願いをかけました。
「風よ!敵を蹴散らせ!」と。
すると、水晶玉からゴオオオオという音と共に強風が巻き起こり、蛇使いである村人たちを小屋ごと吹き飛ばしました。その際に、瓶の中に閉じ込められていた蛇たちが逃げ出し、場は大混乱。
私たちは、その混乱に乗じて、まんまと蛇使いの村から逃げおおせたのでした。
こうして、私たち3人(1人と2匹?)は合流し、2つ目のアイテムも手に入れて、順調に目的を達成するコトができました。
「それにしても、凄い威力ね。これさえあれば、敵なしなんじゃないの?」と、私が尋ねると、アレグロとフーガが口々に答えます。
「そりゃ、魔王様の能力の1部が封じられていますからね」
「けれども、姫様、お気をつけください。どんなに高い能力を誇ろうとも、それは姫様の魔力に比例しております。魔力切れには常にお気をつけを」
なるほど。能力自体はお父様のもので、それを使うには私のエネルギーが必要なのね。だとすると、そんなに頻繁には使用できないわね。イザという時の切り札にしておかないと…
そんなわけで、私たちはペンダントの光に導かれて、次の目的地へと向ったのでした。