~第19話~ 小説を書くのがめんどくさい
僕はベッドの上に寝転がり、次の展開を考える。頭の中にアイデアは浮かんでくる。ストーリーも浮かぶ、キャラクターも動く、アイデアに困っているわけではない。けれども、小説が書けない。ただ単に小説を書くのがめんどくさい。それだけのことだ。
このまま、一生、この部屋で暮らすのも悪くはないかも知れないな…そんな風に考える。生活に不自由しているわけではない。望めば、悪魔が何だって出してくれる。考えてみれば、ここは楽園じゃないか。わざわざ元の世界に戻って、苦労することはない。
けれども…
それでいいのだろうか?そんな風にいつまでもこの部屋で暮らして、それで何かになるだろうか?
「お前もか」
突然、悪魔が現われて、そう言った。
「は?」
僕は、つい、そんな声を漏らしてしまった。
「お前もか、と言ったんだよ」
「何が?」
「お前も、小説を完成させられずに、永遠にここで暮らすのか?」
「僕…も?じゃあ、僕の他にも何人も?」
「何人も、どころじゃない。古代から現代まで、何千人も、何万人も、自分の小説を完成させられずに部屋の中で暮らし続けている」
「何万人…そんな…」
「お前も、そうしたいならば、そうすればいい。それはそれで、我々悪魔にとっては都合がいい。永遠にこの狭い部屋で悶々としながら、そのエネルギーを提供し続けてくれれば、それでいい」
そう言って、悪魔は姿を消した。