~第16話~ 遭難
次の話を書いている途中で、突然、迷いが生じてしまった。
「こんなものが、本当におもしろいのだろうか?」
僕は、口に出して、そう呟く。
「一体、誰が、このような小説を読むのだろう?」
迷ってしまった。僕は迷ってしまった。そうなると、もう1歩も先へ進めない。登山の途中で遭難してしまったようなもの。どっちに向って進めばいいのか、わかりはしない。
「オ~イ!誰か助けてくれ~!」
真っ白な部屋の真ん中で、僕は叫ぶ。
返事はない。悪魔も出てこない。たとえ、出てきたとしても、何と言われるかはわかりきっている。
「そんなコトは自分で考えろ」
そう言われるに決まっている。
これは、僕の問題。僕の迷いなのだ。本当は読者なんて関係ない。読者のせいにしているだけ。それだけのこと。単なる言い訳なのだ。
それでも、誰かに意見が欲しい。声をかけて欲しい。何でもいい。一言でいい。「がんばれ!」でもいい。「負けるな!」でも「諦めるな!」でもいい。あるいは、もっと率直な意見でも構わない。「お前の書いている小説なんて誰が読むかよ!」でも「つまんないんだよ、これ…」でも。
その言葉をバネに、再びがんばれるかも知れないじゃないか。「ナニクソ!」と、もう1度、力が湧いてくる。僕は、そのシーンをイメージした。
けれども、ここで、もう1つの考えが頭に浮かんでくる。それをイメージできるならば、読者とは一体、何なんだろう?頭の中に読者の言葉が響いてくるなら、実際に読者など必要ないのでは?現実の読者など要らないのでは?そうも思えてくる。
ここで、僕は開眼した。
「好きに書こう。僕は、僕の書きたい小説を、僕の読みたい小説を書けば、それでいい」
こうして、迷いは吹っ切れた。再び、僕は続きを書く為に、ノートパソコンへと向った。