~第14話~ ノルマ5枚
~第4話~ 団子屋のオヤジ
さて、僕…いや、私、ライラ・ライは、父親を見つけ、母と国を取り戻し、宿敵に復讐する為に旅を続けます。
正直、この境遇自体は悲しむべきものでありましたが、それでも外の世界へと出られたコトは、喜ばしいものでした。ランランランとスキップでもしながら進みたい気分になりました。何しろ、私は箱入り娘。魔王であるお父様に大切に大切に育てられてきたのです。
お父様の教育方針には感謝すべき点もありました。他の人たちでは学べないコトをたくさん教わって、ここまで成長するコトができたのですから。けれども、やはり、狭い世界での生活には嫌気が差しかけていました。いくら、お城が広くとも、どんなに豪華な食事が用意されようとも、それでも私は外の世界へ出てみたかったのです。
私だって年頃の女の子。恋の1つだってしたくなってしまうものです。え?私の年齢?女性に年齢を聞くだなんて失礼だって、どこかで教わりませんでしたか?
とはいっても、この広い世界。手がかりは何もなし。どこから何を探せばいいのかもわかりません。
とりあえず、私は隣の国へと参ります。そこで、情報収集開始!
「やあ、そこのお坊ちゃん、お団子でもどうだい?」
街を歩いていると、店の建ち並んでいる場所で、そのように声をかけられました。私はれっきとした女性でありますが、普段は男の子の格好をして旅をしているのです。それもこれも、にっくき宿敵ケイン・ライの野郎を倒す為!おっと、野郎だなんてはしたない。でも、僕は男の子。今は、このような言葉づかいで構わないはず。
さて、話を戻して、お団子です。幸い、私はいくらかのお金は持ち合わせておりました。普段から豪勢なお城に住み、綺麗なお洋服なんかも何着も持っていました。それから、貴重な宝石もいくつか。私は、国から逃げ出す際に、それらの宝石を持ち出していたのです。そうして、その内の1つをお金に換えて、しばらくの間の旅の資金としたのでした。
お父様は、質素倹約を座右の銘と掲げ、普段からそのような生活を心がける方でした。けれども、そこは世界を支配する魔王。周りが、それを許しません。特に、お母様はそういう人。私にも、きらびやかな服や装飾品を与えたがります。もちろん、お母様自身も、そのように振る舞っておりました。
そんなわけで、私もこのような宝石を手にすることができたのです。まさか、それがこんな風に役に立とうとは…
お母様の浪費癖も、まんざら無駄ではなかったようです。世の中には“無用の用”という言葉もあるけれど、これもその1つなのかも知れませんね。
というわけで、お団子1つとお茶1杯、手にするのはわけもありません。
私は、お団子をほおばり、お茶をすすりながら、店の主人に尋ねます。
「やあ、旦那!景気はどうだい?」
「ボチボチでんな。と言いたいとこだけど、ここの所サッパリだね~」
「そんなに景気が悪い?」
「悪いも悪い。税金は上がりに上がって、我々一般庶民の生活は苦しくなるばかり。何だかんだ理由をつけては、新しい税法が成立されちまうのさ」
ってな感じで、話は進んでまいります。
フ~ム…どうやら、噂は本当のようです。魔王であるお父様が倒されて、世界中どこの国も庶民の生活は苦しくなる一方。豪勢な暮らしをするのは、一部の特権階級ばかり。
ん?でも、それって…昔の私の暮らしじゃないかしら?お父様の座右の銘“質素倹約”は、やはり正しかったのかも。間違ってたのは、お母様の方?もしも、世界が元に戻ったら、私も質素倹約を掲げようかな?
団子屋のオヤジとの会話は続きます。
「魔王が勇者に倒されたという話は、ご存じで?」と、私は尋ねます。
「もちろん、もちろん。知らない奴なんて、この世界にはおりゃせぬよ」
「その魔王が実は生き延びていて、この世界のどこかで虎視眈々と復権の機会を狙っているという話は?」
「そんな噂も耳にするがね。単なる噂に過ぎませぬよ。たとえ、それが事実として、もはやそんな力は魔王には残っちゃいませんって」
どうやら、団子屋のオヤジでは何もわからないようです。そりゃ、そうか…
さて、困った困った。私は、一体、どこへ行けばいいのでしょう?
何か手がかりでも落ちてないかな~?