表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

計画の行方-5

「そういえばさぁ……」

 立ち去ろうとする僕と麻也に向かって、浬弥さんはニヤリ、と意地の悪そうな表情を見せた。

 一体何を言い出すのかと思ったら。

「アンタたち、家出するんだって?」

 ――驚いた。

「な――」

 麻也も浬弥さんを見る。

「何で、知ってるんだ」

「あ、教えたのオレ」

 何故か手を上げたのは隼基だった。

「は?」

 麻也が声を出した。

「やなぴーから聞いたのさ」

 …………。

 やなぴー=柳原健秀。

「あいつ……っ!!」

 絞り出すような声で麻也が怒っている。

 僕は怒る、というよりも呆れてしまった。

 普通家出(とは言えないかもしれないけれど)のことを話したらどうなるか、とか考えないのだろうか。……考えなかったのだろう、健秀のことだから。

 歳基さんは初めて聞いたらしく、一人だけ目を見開いていた。

「で、いつ行くの?」

 浬弥さんは普通に聞いてくる。

「ちゃんと書き置き残して行きなさいよー? 誘拐だって思われちゃうかもしれないから」

 しかも勧めるのか。

「止めるだろ普通」

 麻也は文句を言うが。

「止めて欲しい?」

「……いや、いい」

 本当に嫌そうだった。

「何日くらい家出すんの?」

 浬弥さんはまだ聞いてくる。

 日帰りとは聞いていないらしい。

「誰が教えるか」

 行くぞ、と麻也はまた僕の服の襟をつかみ、歩き出した。

「さっきー、オレも混ぜてくんない?」

「嫌だ」

 隼基の言葉に、振り向かずに言い捨てる麻也。

「いじわるーいじめっこー」

 それでも麻也は振り向かない。

「連ーれてーってよー」

「誰が連れて行くか」

 そう言って麻也は走り出した。

 襟をつかまれているので、僕も走らなければならない。

 だが後ろ向きで走るのはキツい。

「ちょ、ちょっとあ、麻也君!」

 舌を噛みそうだ。

「――悪い」

 誰も追いかけて来ないことを確認して、麻也は足を止めた。僕の服の襟から手を放す。

 そして、襟をつかんでいなかった方の、自分の手を見る。

「……ベタベタする」

 アイスを持ったまま走ったせいで、溶けかけていた麻也のアイスが棒から滑り落ちたらしい。

「麻也君、手、洗わないと……」

「図書館に行ったら洗う。――しっかし、腹が立ったな」

 手を軽く振りながら麻也は言う。

「この世に姉さんと同等に腹が立つ相手が存在するとはな」

 ……それは隼基のことだろうか。

「……バレちゃったね、家出」

「ああ。しかも相手が悪い」

 まさか健秀が隼基に言っているとは思わなかった。

 麻也はため息を吐く。

「健秀があそこまで口が軽いとは思わなかった」

「僕も」

 同意見だった。

「とにかく、健秀が来たら文句を言わせてもらおう」

 一人で頷く麻也。

 これは散々言われるんだろうな、と思いつつも僕は止めることをしなかった。

 しかし浬弥さんと同意に、ということは、麻也と隼基の二人はこの先仲良くなることはないのかもしれないな、と僕は思った。

「ほら、とっとと行くぞ。手が気持ち悪くてかなわない」

 麻也は言って歩き出す。

「……うん」

 この先のことを考えて僕は少し頭が痛くなってきた。

 勉強をしなければならないということもある。

『家出』の計画のこともある。

 特に家出に関しては、今後の僕の人生に大きな変化を与えてしまう可能性がある。

 僕にでもわかるのだ、麻也や健秀だって理解しているだろうに。 ――まあ、そんな友達を持ってしまったことを嘆くしかない。

 後悔は後からしても遅いからこそ後悔なのだ、ということを僕は実感していた。




 ――しかし、本当の意味で実感したのはその後だった。

次回急展開。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ