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計画の行方-1

 ――次の日。

 すなわち夏休みの第一日目。

 健秀は部活に行って午前中は不在なので、僕と麻也はその間何をして時間を潰すか相談をした。

「オレは他のヤツとは違うからよ。とっとと練習終わらせてきてやる」

 とか何とか健秀は言っていたが、野球というものは一人ではできないのだから、とっとと終わらせることは無理じゃないか、と麻也は呟いていた。

 まあ、とりあえず図書館で待ち合わせをしようという話で昨日は終わった。

 ……そこまではいい。

 が、何故僕は今水着姿で学校のプールサイドに立っているのだろうか。

「往生際の悪い奴だな」

 横で同じく水着を着用した麻也が言った。

「麻也君が無理矢理連れて来たんじゃないか……」

 僕の意見に耳を貸さず、有無を言わせず水着を持って来させられた。

「ここまで来てそんなことを言うのか。このまま泳げなかったら、お前本当に土左衛門になるぞ」

「泳げても、溺れる時は溺れると思う」

 と思わず愚痴ったが。

「それを屁理屈と言う」

 即座に一蹴された。

「そんなこと――」

 ないよ、と言いかけた所で背中に衝撃が走った。

 声を上げる間もなく、水の中に落ちた。

 口や鼻、そして耳に水が入ってくる。

 麻也が何か言っているが聞こえない。

 頭の中では完全に溺れていることに気付いているのだが、助かることよりも、僕の溺れている周囲に虫の死骸が浮いていないか、とか変なことが気になった。

 口の中に虫が入ったりしたら、死んでも死にきれない!

 ……などと考えている内に、誰かが僕の腕をつかんだ。

 プールサイドに引き上げられる。

 咳き込みつつやっと見ることのできた救い主は、麻也ではなく、さして親しくないクラスメイトだった。

「ごっめーん。大丈夫ー?」

 相手は軽く聞いてきたが、咳き込んでいるため、答えられない。

 そんな僕の背中をさすってきたクラスメイトに、

「お前、今こいつを突き飛ばしただろ」

 と麻也が言った。

「うん」

 クラスメイトはあっさりと認めた。

 ……って、え?

「わざとやったのか」

「もちろん」

 頷くクラスメイト。……僕としてはそこで頷かないで欲しかった。

「いやあ、そこ足着くから大丈夫かと思ったんだけど」

 確かに、僕が溺れた場所は十分に足の着く高さではある。

 ――しかし。

「足が着くからって、溺れないとは限らないだろう」

 麻也の言葉には同意見なので僕は頷いた。

「溺れるヤツは何したって溺れるってコトか」

 クラスメイトは納得したように頷く。

 ……その納得の仕方は馬鹿にされているように感じるのだけれど。

「……お前、少しは怒れ」

「え?」

 気付くと、麻也がうんざりとした表情で僕を見ていた。

 怒れと言われても。

「別に慣れてるだろ?」

 クラスメイトが代わりに言う。

「突き飛ばしたお前が言うな」

 麻也が言い放つ。

 ――いじめ、というほどのものではないのだろうが、僕が五年生になって初めて麻也や健秀と同じクラスになった時、いや、その前からすでにそれに近い状態だった。

 顔が良いわけでもなく、頭脳も普通以下。加えて運動神経も良くない。

 必ずと言ってもいいほどに人の足を引っ張ってしまう僕は、格好の餌食だったのだろう。

 言い返すことのできなかった僕を麻也と健秀が助けてくれたわけなのだが……今にして思えばそれは、正義感というより好奇心で助けてくれたように思う。

 まあ、そんな僕にとっては『慣れている』と言われても間違いではないのだけれど。

「そうだね。ごめん」

 意外にもクラスメイトは素直に謝ってきた。

 てっきり「そんなの誰だってやってんだろ」とか「オレだけのせいじゃない」とか言われると思っていただけに驚いた。

 麻也も面食らったようだったが、

「言うだけなら簡単だよな」

 と言うと、座ったままの僕の腕を引っ張って立たせた。

「行くぞ」

「行く……って、どこに?」

「ここを出てから考える」

 その口調に、僕はそれ以上の言葉を控えることにした。

 そして、プールにいた他の生徒の視線が集まる中、僕たちは更衣室へと向かった。

「ちょっと、あっきーもさっきーも待ってよー」

 さっきのクラスメイトが呼びかけてきた。

 …………。

 変な言葉が耳に入った気がした。

 麻也にも聞こえたらしい。

「――今、何て言った」

 足を止め、麻也が振り返る。

 とてつもなく、恐ろしい顔をしていた。

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