終わりの後で。
――ちなみに。
墓参り後に三人で病院へ向かった。
隼基は無断で病院を抜け出してきていたために医者に散々怒られた。
僕は僕で、腕の骨にヒビが入っていた。恐るべし木製バット。
原因は? と聞かれたのでどう答えようかと悩んだが、兄弟喧嘩を仲裁しようとして巻き込まれた第三者だと隼基が答えてくれた。確かに、ある意味間違ってはいない。
数ヵ月後、歳基さんを強請っていた薬の売人が捕まった。
歳基さんは重要参考人として話を聞かれる前に自殺してしまったそうだ。
特に何の感慨もなく告げる隼基だが、少し寂しそうに僕には見えた。
そんな報告を公園のベンチに座りながら聞き。
完治した腕をぐるぐると回しながら僕は呟く。
「やっぱり、家出は人に言ったりするべきじゃないよね」
「何言ってんだお前は」
僕の横に座り、アイスを食べていた麻也が言う。
「人に断ってからなんてものは、家出じゃない」
……八年前の君にそう言ってやりたいと思ったが口には出すまい。
「家を出る、というだけなら間違いはないけどね」
同じくアイスを食べていた隼基が言う。麻也とは僕を挟んで反対側の位置に座っていた。理由は麻也が嫌がったからだ。
「もうこの歳で家出する気にはならないな」
「ってさっきーはもう家出てんじゃん」
麻也は現在、アパートで一人暮らしをしている。
「そういう意味じゃない。というか『さっきー』って呼ぶのはいい加減に止めろ!!」
もう慣れてしまった二人の言い合いを聞き流しながら僕は思う。
家出は以外と大変だ。
家出の前に、入念な準備が必要なんだな、と。
例えば、口の軽いヤツには絶対に喋らない、とか。
「…………」
考えてみれば、もっともな話だった。
「どうかしたのか」
動きを止めた僕に麻也が聞いてきた。
「……なんでもない」
そう答え、僕は手にしていたアイスを口に運んだ。
浬弥さんがやってきたら嫌だな、と思いつつ。
「昔、この三人でこんな風に仲良くアイス食べたりしたよねー」
隼基が楽しそうに言う。
「忘れた」
素っ気なく麻也が言う。
「奢ったじゃん」
「記憶にない」
僕たちの背後にある木で蝉が鳴く。
人の記憶は、いつの日か薄れてしまう。
たとえその時、強い印象が焼き付いたのだとしても。
時間は、過ぎて行くものだから。
――日常なんて、結局はこんなものなのだ。
これにて完結です。お読みいただき、ありがとうございました。




