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夏休み家出?計画-1

「家出でもしてみるか」




「……は?」

 唐突な発言に、一瞬僕の思考が停止した。

「……今、何て言ったの?」

 もしかしたら、僕の聞き間違いかもしれない。

「家出」

「……え~っと?」

「家出だってば」

 どうやら聞き間違いではないらしい。が、何故。

「……いえ……」

「だーかーらー」

「――っだあぁっ!!」

 二人の不毛な会話を終わらせようと、もう一人が叫びながらテーブルを叩いた。

「オレたちは今何をするためにここにいる!」

 指をさされ、ちょっと戸惑った。

 少し考える。

 今日。今日は小学校の終業式。明日から夏休み。

 目の前にいる二人は、僕の数少ない友達、碕田(さきた)麻也(あさや)柳原(やなはら)健秀(たけひで)

 二人と明日から何をして遊ぶか相談しようと健秀の家に来て。

 そこでテーブルを見た。

「……勉強?」

 目の前には数字と文字の羅列。正体は夏休みの課題。

「その通り」

 頷く健秀。

「現実逃避してんじゃねえよ」

 何やら怒っている。まあ、確かに僕のノートやらプリントやらには変な落書きがあったりするが。

「……意味わかって言ってる?」

 僕より早く疑問を口にする麻也。

「知らん!」

「……」

「……」

 いや、そんなに堂々と言われても。

「何だよ、文句あんのかよ」

「ありすぎて言えないよ」

 麻也の呟きは幸いにして健秀には聞こえなかったらしい。

「……それで、麻也君、何でまた急に『家出』なんて言い出したのさ?」

 僕は話を戻した。

「んなコトより勉強が先だろ!」

 またもや怒られた。

「健秀、お前勉強嫌いだったんじゃないのか」

 という麻也の問いに対して健秀が返したのは、

「お前いるときにやっといた方が楽だし」

 打算的な答えだった。

「一人でもできるだろ」

 麻也は容赦なく言う。

「う」

 言葉に詰まった健秀だったが、

「いや、ほらでも自由研究とかもあったじゃんよ」

 と反撃した。

「……あー」

 僕はつい声を出してしまった。

 そういえば、夏休みが終わったら発表しなくちゃいけないんだっけ……。

「テーマ、っていってもなあ……」

 健秀がテーブルに頬を押しつけた。いつの間にか問題集が隅に寄せられている。……元から真面目にやる気はなかったらしい。

「他の人達って何やるんだろうね」

 聞いてもいじめられっこの僕には教えてくれないだろうけど。

 基本他人に興味のない我関せずな麻也はともかくとして。

 健秀ならクラスの中心的存在、というかガキ大将というか、まあ、一目置かれるような存在だから、聞けば教えてくれるんだろうな、とは思ったりする。

「変なカオ」

「あう!?」

 気がつくと健秀に頬を引っ張られていた。

「痛い痛いってかめちゃくちゃ痛いんですけど!!」

「そりゃあ、顔引っ張ってるし」

「引っ張られてるし」

 こんな時だけ、二人は仲が良い。

「いい加減に放してよぉ」

「お前面(ツラ)の皮分厚いな」

 どういう意味だ。

「どうせ僕は太ってるよ」

「……じゃあなくて。それで、だ」

 麻也の言葉に、健秀はやっと僕の頬から手を放した。

「何が『それで』なんだよ」

「家出をしよう」

 話を戻された。

「……イミがわからん」

 僕にも分からなかったので、痛む顔面を押さえて頷いた。

「だから、自由研究に家出をしてみようという僕の素敵な考えを披露しているんじゃないか」

 ……ステキ?

「他にもっと普通なものがあると思うんだけど……」

 麻也は何をどうやってその考えに至ったのだろうか。

「例えば?」

「え」

 急に言われても困る。……暫く考えてみた結果。

「えーっと……アサガオとかヒマワリとかの観察とか?」

「ありがち」

 健秀に突っ込まれた。

 ……いや、普通の小学生ならこういうものなんじゃないかな。

「そう。ありがちな事をするよりもやっぱ他の奴が考えつかないようなことをやった方がインパクト残るだろう?」

 家出してまで残したくないです。

 それよりだったら僕は普通の『ありがち』の方がいい。

 そう抗議しようとしたが。

「面白そうかもな」

 と言う健秀の声に動きを止めてしまった。……一体、どこが面白そうなのだろうか。

 と、そこで気がついた。

 健秀は目立つことが大好きだ。

 褒められても怒られてもいつも自慢げにしていて、オレは他のヤツとは違う、というのが口癖だったりする。

 呼び出されたこともある。ただ、お母さんが身体が弱い人なので、大半はお父さんが謝りに来ていた。

 迷惑な話だが、おかげで僕は(多少問題はあるけれど)友達というものの仲間入りを果たせたので文句は言えない。

 ――目立つことが大好き。

 ……まさか。

 麻也の方を見ると、口に手を当て――笑っていた。

「あの、麻也君――」

「冗談だよ、冗談」

「……へ?」

「……はぁ?」

 僕と健秀は麻也を見る。

「そんなこと、現実にできるわけないだろ。バカだなあ」

「お前なぁっ!!」

 健秀が叫んだ。そりゃそうだ。

 しかし、納得した僕の目の前で麻也が「でも」と言う。

「自由研究云々はとりあえず置いといて、日帰りで家出をしようとは思ってるんだけどね。どう?」

 どう? と言われても。

暫くゆるゆる、ぐだぐだな話が続きます。

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