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第一章 ―「外」の子供達― *1*

 第一章 ―「外」の子供たち― *1*


 1


 モニターを通して、カナタは、目前の2匹の化け物を改めて確認した。

 一匹は、犬の体に兎の頭。四肢はそれぞれ何の動物のものかもわからないが、鉤爪が見て取れる。尻尾はふさふさとした羊のように思える。

 そしてその全身からは蚯蚓ミミズの様な、うねうねとした細長い何かが、化け物の全身、ありとあらゆるところから出入りを繰り返している。

 比較的まともなタイプの「キマイラ」だった。

 もう一匹の方は、珍しい飛行形態で、鳥の体と羽に、獅子の頭がついている。

 こちらもやはり、蚯蚓ミミズが体中を這いずり回っていた。


 そして、そのどちらも、ありえない程の巨体だった。


 全長にして約四十~五十メートル。

 周辺はとうの昔に瓦礫の山になっているが、もしも昔のままビル郡が残っていれば、ビルの屋上からやっと彼らの背中が見えるぐらいだろうか。

 その巨大な敵に対し、カナタは怯むことなく、腰にある二本の剣を抜き、真っ向から向かい合った。

 より正確に言えば、二本の剣を抜くよう、カナタは自らが乗り込む巨大な「ギガンテス」を操縦した。

 カナタの「ギガンテス」は、敵と誤認されないため、派手に赤く塗られたプレートを全身に打ち付け、武器も器用に扱えるが、それでも全長は三十メートル強。

 目の前の化け物の方が一回り大きく、重さもありそうだ。

 それでも、カナタは躊躇無く二匹の化け物に襲い掛かった。

 飛行形態の獅子頭を牽制しつつ、兎頭の横へ回りこむ。

 飛行するタイプは、比較的倒しやすい。動作が大きい上、それ程高く、長く飛ぶことができないからだ。

 カナタは、動きの早そうな兎頭にターゲットを絞り、その両手の剣を振り回した。

 セーフティ・ポッドから抜かれた剣は、一瞬にして赤く輝き、高熱を発する。

 兎頭の眼(?)に剣の一本が突き刺さると、ジュウジュジュと肉が焦げる音がした。

 ──シギュアアアアアア!

 絶叫とも奇声ともつかない雄たけびを上げながら、兎頭が後方に大きく跳ねた。

 勢い、カナタの剣も抜け、その先から黒い液体がどろりと絡まるも、すぐに刀身の熱で気中に融けた。

「ふっ!」

 一旦下がった兎頭が、すぐさま取って返したように脚に力を込めると、身の丈の二倍も高く飛び上がり、カナタにその鉤爪を振るってきた。

 カナタが左手の剣で、その鉤爪を受け止めると、兎頭が自らの爪がじゅうじゅうと燃えるのをものともせず、ぐいぐいと体重を乗せてくる。

「ぐぅっ……、やばいかっ!?」

 左手のレバーをいくら、押し込んでも、目の前の兎頭はぴくりとも動かない。

 しかし、ここで右手も使えば、もう一体の飛行型に対し、完全に無防備になる。

 そして、まるでカナタの想像を読んだかのように、身動きが取れなくなった所を、今の今まで大人しく好機を伺っていた獅子頭の飛行型がその羽を生かし高く飛び上がると、カナタ目掛けて滑空で体当たりを試みた。

「ちぃっ!」

 カナタは、最後の足掻きにと片手の剣を投げつけようとしたが、それは不要に終わった。

 ──ヒギイイイイイイ!

 獅子頭が、兎頭とは違った音波を発すると、その腹から長く尖った槍が飛び出した。

『カナタ!あんた、独断先行しすぎよっ!!』

 槍は、カナタの剣と同じく赤く熱されているばかりでなく、「キマイラ」に刺さった衝撃で爆発を起こす。

 獅子頭は、空中で串刺しになりながら、その腹を爆散させ、無残な大穴を空け地に落ちた。

「アユミか……」

 短距離通信機からは、まだキンキンと「お説教」が流れてくるが、カナタはそれを無視し、いまだに自分の左手に喰らいついている兎頭を見て取った。

 今の兎頭は、すでに自分の動きを止める楔ではなく、ただの動かない的となっていた。

 もう、気兼ねなく右手は振るえる。

 カナタは、軽くため息を吐き、右手のレバーを勢い良く押し込んだ。


 


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