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1章-4

 不穏な空気が、円卓会議の議場を満たしていた。

 ここは、戦場ではない。

 魔物が闊歩するダンジョンでもない。

 しかし、戦場やダンジョン以上に緊迫した空気があった。


(はあ、いやだなぁ)

 勇者レオに定着した藤浪トモは心の中でつぶやいた。

 魔物との戦いやら戦場には慣れたけれど、政治の駆け引きという場は慣れることが出来ない。いや、慣れたくも無い、と言うのが本心だった。


(とは言え、今回の小説ではウルブランドの内戦が舞台。しかも、対立の中心が人種問題だしなぁ)

 ここでの対応を間違うと、味方が減るばかりか敵が増える。

 そして、前回もウィンバル公爵側の物量に押しつぶされたのだ。


「それでは、ボイザー殿はいらっしゃらないと?」

 ドアーデ将軍が声を荒げて立ち上がり、ボイザー・ウィンバル公爵の代理で会議に出席しているラキスン男爵を睨みつける。

「左様です、将軍閣下。魔物とその眷属に支配された王宮にいては、いつ寝首をかかれるか。おお怖い怖い」

 男爵は、わざとらしく怖がっている。

「ラキスン様、魔物の眷属とは私のことか?」

 ウルブランドの第一位王位継承者であるサニア・カイ・ウルブリネがラキスン男爵を見る。

(カズネちゃん、あっちでは普通の女の子なのに、サニア姫に定着すると偉そうだなぁ)

 剣呑な雰囲気にも関わらず、レオに定着した藤浪トモはボンヤリと考えている。

「姫殿下の察しの良さには、このラスキンも驚きです。ウルブランドの王位継承者は聡明だ」

 男爵の軽薄な笑いが議場に響く。

「姫を愚弄するか! そこに直れ!」

 ドアーデ将軍が腰の剣に手をかけようとするが、それを勇者レオが止める。

「ラスキン殿。私が魔物呼ばわりされるのはかまわないが、姫には謝罪していただきたい」

 レオは静かに、しかし重い言葉を告げる。

「これは勇者殿。それでは勇者殿は、自ら魔物であると認めるのですかな?」

 舐めるような視線で男爵がレオを見る。

「私は人間だ。だが、貴君らの考えでは、違うのだろう」

「勇者殿も聡明でいらっしゃる」

 男爵の軽い笑いの中で、レオは懐から一個のジェムを取り出した。


 ジェム。


 この小さな鉱石が、今回の騒乱の根源である。

 ジェムとは、魔法を貯める機能を持つ宝石の総称。正式には『魔晶石』と言う。


 この世界にかつて溢れていた魔力は、魔法特異点たる魔王によるものだった。

 勇者レオが、魔王を倒したのは四年前。

 そして、魔王の正体が魔法特異点である事に気がついて、これを潰したのが二年前。

 

 その為に、この世界からは徐々に魔力は減ってゆき、魔法も弱くなり、魔物も減っていった。

 だが、この世界は魔法に支えられている産業も多い。

 なんとか魔力を取り戻すと幾つかの方法が試された。

 そこで注目されたのは、全ての知的生命が放つ微小な魔力放射だった。

 人が一日に放つ魔力の量は微笑で不安定。日の光や風に触れると、すぐに拡散し分解してしまう。

 その微小な魔力を吸収して蓄えるのがジェムなのだ。

 このジェムは、昔から護符や蛍灯として使われたきた。

 つまり、自分が放つ魔力を蓄え、必要な時に放出して使ったのだ。

 力が弱いので、小さな灯火として使ったり。半年くらい貯めた魔力で治癒魔法や防護魔法を作動させていた。

 

 ホイザー・ウィンバルは、このジェム利用を積極的に進めていた。

 住民の全てにジェムを配り、一定時間身に付けさせてから回収したのだ。

 塵も積もれば山となる。

 諺の通り、この方法は手間と時間がかかるが確実に大量の魔力を集めることが出来た。

 

 このジェム方式は、アッという間にムーリア中に広がった。

 ウィンバル公爵は、このジェム方式を広く公開したばかりか、普及に積極的であった。

 ジェムの公開市場を創設して、大量のジェムが流通する仕組みもつくった。


 ムーリアに平和をもたらしたのが勇者レオならば、繁栄をもたらしたのはホイザー・ウィンバルと言われるほどなのだ。


 だが、ここで問題が起こった。

 ジェムの魔力は、魔法回路や魔術師によって使われる。

 正常に使えば、魔力は魔術の効果に変化して何も残さない。

 わずかに残る魔力の滓も、風に薄められ日の光で消え去る。

 

 しかし、ある種のジェムは、魔力として魔法に使うと、魔法は誤作動や暴走をおこし、後に大量の呪い(カース)を残してしまうのだ。 そのジェムとは、エルフやドワーフの生体魔力を蓄えたジェムなのだ。

 ホイザーは、エルフやドワーフを亜種族と呼び、魔王の出現は亜種族の生体魔力放出である断じた。

 そして、この発言を聖教会が公式に認め、ホイザーは聖人となった。

 ホイザーはエルフやドワーフの分離を主張。

 ここに、亜種族追放令が教会から出された。

 エルフやドワーフは、ウルブラントから追放される事となった。


 これに反対したのはウルブ王室である。

 魔王討伐の戦いでは、エルフ族やドワーフ族の協力があった。

 たかが人間族の宗教にすぎない聖協会が、異教徒であるエルフやドワーフを追放するのは無法であり、道理に反する。

 

 この主張で、教会も亜種族追放令を取り下げようとした。

 自体は沈静するかに見えた。

 だが、この時、ホイザーが勇者を告発した。


「勇者は亜人種であり、第2の魔王となりうる」


 王家この発言に反発しなかった。

 その為に、自体は一気に動きはじめる。

 主に説明だけの今回です。

 エンターテイメント的に状況説明するのは難しいなあ。

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