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不安-創作五枚会

・創作五枚会第六回(2011年1月22日投稿)

・文字数制限…2000文字

・禁則事項その1…名前の記載禁止

・禁則事項その2…「!」と「?」の使用禁止

・禁則事項その3…会話文の使用禁止

・テーマ…不安

・もちろんフィクションです

 リア‐じゅう【リア充】

 広義では現実社会での生活が人間関係や趣味活動など充実してて鬱陶しい野郎……いえ、人物。

 狭義においては、要するに『男女でべたべたしてんじゃねーぞ (#゜Д゜)ゴルァ!』と思わせる野郎……いえ、人物。世間一般で使われる【リア充】はこちらである。


 提供元:「教えて★桜庭先生!」





 一月二十二日。

 数日前からの厳しい寒さはやや和らいだものの、相変わらず「寒い」が流行語の朝。

 高校生にとって学校という名の日常へ向かって揺れる電車。今日は幸運にも席が空いていて、オレはすかさずそこに滑り込んだ。座って通学なんていつ振りだろう。

 どかっと腰を下ろすと、あずき色した座席は愛想笑い程度に沈み込む。足下からは妙に熱い温風が二本のふくろはぎをなめ回している。

 数駅通過する程度の幸せな一時が経った頃、三人掛けの椅子に同席者が現れた。座席のあずき色より明るい、派手な紫のもこもこダウンジャケットを羽織った高校生くらいの女の子と、てろっと黒光りした、いかにも安そうダウンジャケットを羽織った高校生らしき男だった。

 男がどかっと腰を下ろすとすぐさま隣にちょこんと座る女子。オレも合わせて男男女の順番だ。

 電車は加速する。二人を包む柔らかい空気もどんどん加速する。盛り上がる会話。この上なく嬉しそうな女の子の表情。笑顔の男。さらに数駅過ぎたところで、いよいよ二人は麗しき白百合が咲き誇るかのような温かく淡く白く素敵な世界を築き始めた。孤独と平凡な世界の住人であるオレにはウザイ事この上ない状況だ。

 男は優しげに女の子を見つめる。

 女の子は男にすりすり寄りかかる。

 オレは見てない振りをしている。

 男は女の子の柔らかそうな栗色の髪にそっと右手を伸ばす。

 オレは見てない振りしている。

 女の子は男になでなでしてもらいとてもご満悦。

 我慢強い子とご近所でも評判のオレだが、ここにきてついに限界を突破した。




―― リア充爆発しろぉぉぉおおおぉぉぉぉぉおおぉ




 心の中で咆哮。それはそれは渾身の、心の中での咆哮。


 その時だった。

 

 頭の中で鐘のように響き渡る音。例えるなら、重く威厳ある落ち着いた低くも高い音。それがまるで膨大な質量を持つかのようにオレの脳を鷲づかみし揺さぶってくる。

 なんて言っているかは分からない。でも、なにを言っているかは分かっている。


『おまえの心の最奥よりの叫び、確かに伝わった。われがその願いを叶えてやろう』


 突如暗転。目の前が黒く光る。体はぐるぐると回り下に上がってゆく。音が匂い、光が聞こえ、色が触れ、味が視え、そしてがくんと落ちるような感覚が全身を襲う。

 次の瞬間、網膜はよく晴れたガラス越しの空と、コーチのバッグを持った黒髪の綺麗な女性と、「日本が地元カタールに3-2で競り勝ち」という新聞を持った、西部警察でしか見た事のないサングラスをかけた男性を映し出した。

 隣に、人はいなかった。





 ―― その願いを叶えてやろう、か。で、何叶えてくれるんだ。まさかリア充爆発しろじゃないよな


 駅を降りてからもずっとさっきの事が頭を駆け巡る。真横には銀杏並木。夏には生き生きとした緑の葉を、秋には鮮やかな黄色で彩られた銀杏並みも、この季節は実にもの悲しい。そんな銀杏を見ながらふと思う。

 

 いつもに比べて制服姿の人影が少ないんじゃないか――

 

 一度思うと妙に気になる。気になって気になって仕方がない。思わず辺りを見回した。

 同じ学年の女子。青いジャージを来た男子。一年らしき女子。コンビニに入って行く髪の毛にくるくるをつけてるおばさま。白のクラウンに乗って信号待ちをしているおじさま×おじさま。クリーニング屋さんの前でお話しているおばさまとおばさま。


―― 男と女の組み合わせがいない……だと


 そんな事を夢見がちな妄想担当のオレが思ったが、すぐに冷静担当のオレが、いやいやいや、まさかリア充爆発しろなんて願いが叶わないでしょ、なんて異議を唱える。もっともだと頷く担当のオレは素早くその役目を果たし、寒いなぁと言う担当のオレは寒いなぁと言っていた。


 駅から学校まで僅か十分である。妄想と妄言と観察と推察なんてしていれば、あっという間に白に青が映える我が校に到着する。

 余談だが、我が校最大の問題点はふた付きの下駄箱では無い事だ。これじゃ下駄箱のふたをあけた瞬間ドサドサってイベントが発生しようがない。


 階段をのぼり、白い木製のドアを開けたその先は、しぃんと静っている無人の教室。どうやら一番乗りのようだ。

 鞄を机のフックに引っかけ、キンキンによく冷えた椅子の背もたれを後方に引き出す。この席は窓際の後ろから二番目という高校生憧れの自慢の席だが、座面はとにかく冷たかった。 


―― それにしても、もう授業が始まるのになんで誰も来ないんだろう……


 その思った瞬間、驚き担当のオレが勢いよく立ち上がり、無人の教室で大きな声で叫んでいた。

「まさか……このクラスはオレ以外みんなリア充なのかっ」と。

二〇時に間に合わなかった……


なんともいえない作品になってしまいました(笑)

投稿後に修正しています。


それでは五枚会に参加されている他の方の作品を読んでまいります。

最後までお付き合いくださった方、本当にありがとうございました。

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