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人形-創作五枚会

企画、創作五枚会に投稿した短編です。

・企画名…創作五枚会

 http://gomaikai.okunohosomichi.net/

・主催:無言ダンテさん

・企画目的:「小説家になろう」有志による掌編企画。「面白い作品を書く為の技術向上」を目的とする。

・企画内容:毎回禁則事項とテーマを決め、作品を1週間で原稿用紙5枚分(2000文字)に仕上げ発表し感想を書き合う。それを2011年3月末まで定期的に続ける。



2010年11月6日より、2週間に1回投稿する予定です。


・創作五枚会第一回(2010年11月6日投稿)

・文字数制限…2000文字

・禁則事項…主人公の「」による台詞の禁止

・テーマ…人形

・もちろんフィクションです

「諸君、今や我々が人類最後の砦となった」 

 ハンガーに響く指揮官の声。走る緊張。聞こえたのは兵士たちが拳を握り締める音。

「突然の侵略から一カ月。ヤツらを殲滅せねば、我々人間が滅びるだろう」

 兵士たちは国家を超え、思想を超え、宗教を超え、最初で最後の任務を果たすべく集まった、人類歴史上初となる世界各国の精鋭五四八名による地球連合軍だった。


†◆†◆†


 二〇五一年一月。多くの地球人は初めて宇宙人と出会った。

 宇宙人の噂は百年以上前からあった。某国は技術提供を受ける代わりに宇宙人のする実験に目をつむっている、なんて囁かれていたものだ。

 人類の夢である未知との遭遇。だが、実際は最悪のものだった。

 始まりは第六国際宇宙ステーション【NAGIA】が正体不明の何かに襲われたとの一報から。

 そのわずか三七分後、北欧の地にある国際宇宙管理監視センターの大型レーダーは突然十四万四〇〇〇もの未確認飛行物体を捉え、全面に広がる大型多角モニターは飛行物体を示す赤い光点で埋め尽くされた。

 最初にそれが降り立ったのはアメリカ、オハイオ州シンシナティー。昼下がりの町中に突如現れた10m程の鈍い黒光りする異様な機械群、後に敵性地球外生命体多脚型兵器、コードネーム【Locustロカスト】と呼ばれるそれらは、唐突に赤い光線を撃ち放つ。

 炎に包まれる町。灰燼と化す建物。泣き叫び逃げ惑う人々。偶然破壊を免れた監視カメラは地獄絵図の一部始終を記録し続けていた。

 やがて動くモノが町を焦がす炎だけになった時、ロカストから搭乗者―― エイリアンが降りてくる。

 地球の生物で例えるなら蜘蛛に近い姿だ。二m程の黒い体と黄色い模様。細い脚が十本伸びていて体中に鋭い体毛が生えている。緑に光るおぞましい八つの小さな目。醜い口を大きく開けると唾液の糸が引いていた。

 見えるだけでも数は百以上。

 一匹は高層住宅の外壁に使われている強化合成建築材の破片を一つ持ち上げまじまじ見ていた。

 一匹はレーザーで切断された車の中を覗き込んでいた。

 一匹は瓦礫の下敷きになった人間を見つけ、捕食していた。

 

 攻撃を受けたアメリカは実に速かった。全軍第一戦闘配備へと淀む事無くシフトし、即座に大統領はゴーサインを出した。

 制空無人戦闘機【AQ-5】は飛行するロカストに対し攻撃を開始。地上で侵略活動を続けるロカストに対しては二足歩行型戦略兵装【Titan-10】と、アメリカ軍最強の多脚型局地戦用兵器【AFL-10】を投入。

 各国ももちろん蹂躙されるがままではない。領土へと降りたったロカストへ全面攻撃を開始していた。

 だが、地球規模で見れば結果は惨敗だった。

 地球より優れた科学技術を擁し、完全なる統率がとれていたエイリアンに対し、地球側はあくまで国家単位で戦っていた。アメリカのようになんとかしのいだ国もあったが、多くの国が開戦から僅か数日で戦力の半分近くを削られていた。

 敗因は実に単純。機体連続運用可能時間の差であった。短時間ならまだなんとか戦えるのだが、ロカスト活動限界の約二〇一時間に比べ、地球側の機体は長くても十時間程度。設計想定上ありえない長時間の戦闘を強いられ、ことごとく潰された。

 

 侵略から十三日目。どの国も絶望の色が濃くなり始めた時、希望の光が各国に届く。

 アメリカがエイリアンの機体に搭載されているエネルギー変換システムの解析に成功したという知らせと、インドがエイリアンの意思伝達手段解読に成功したという吉報だ。

 これらは何一つ隠される事なく各国に伝えられる。その結果、途中まで解析していたドイツは飛躍的に成果を挙げ、擬似エネルギー変換システムの構築に成功。

 遅れる事数日、日本から変換システムの機体搭載成功の知らせが世界各国へと送られた。

 技術や情報の出し惜しみをする事なく本当の意味で協力した世界。皮肉な事にきっかけは地球外生命体からの侵略。人と戦いはやはり切れない関係のようだ。

 そういえば一つ珍しい事があった。人類最後の希望、変換システムの搭載について普段は全く話が合わない開発側である科学者と現場側であるパイロットが口を揃えて言ったのだ。


―― ヤツらを連想させる多脚型じゃなく、人の形をした二足歩行型に搭載して欲しい。


 兵器として上なのは言うまでも無く多脚型だ。だが人々は自らの運命を人型に託した。

 ある科学者は言った。神がなぜご自分の姿に似せて我々を創ったのか、今なら何となく分かる気がすると。歴史がこの後も続くなら、いつかこのこだわりを笑う人が現れるだろうか。


†◆†◆†


『警告します。敵勢力が最終防衛ラインを突破。到達予想時刻は二〇分後。数、一億二〇〇〇万』

 絶望的な戦力差を告げた人工音声の声がハンガーに静かなに響く。

「さぁ、それでは行こうか」 

 指揮官の言葉に頷くパイロット―― 現代の人形使いたち。

 悲壮なる決意と覚悟を胸に愛機へと歩き出す五四八人を、私たち整備班は祈る想いで見送った。

この度はお読みいただいきありがとうございました。


初の短編。そして2000文字指定。慣れない私にはとても難しいものでした。短くて物語にならないのです。

最初書き終えた時は2493文字。もう原稿用紙一枚分のオーバーです。そこから削って削って削って削ってなんとか2000文字になりました。

残る問題の内のひとつはこれで人形がテーマになっているかという事です。


最後に悩んだ末に削った文を掲載。


各国から様々な解析、研究結果が届き始めた。

アメリカからはエイリアン側の機体に搭載されているエネルギー変換システムの解析に成功したという知らせが。

インドからはエイリアンの意思伝達手段解読に成功したとの知らせが。 

イタリアからはエイリアンが好きなワインの銘柄が分かったとの知らせが。

これらは何一つ隠される事なく各国に伝えられた。



さて、次のテーマはなんなのでしょう。ドキドキしてます。それでは五枚会に参加されている他の方の作品を読んでまいります。

最後までお付き合いくださった方、本当にありがとうございました。

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