桃太郎外伝:その後の鬼ヶ島
「なんじゃあ、これは…」
「ひどいですね。辺り一面、血の海じゃないですか。もしや、全滅している…?」
戦後すぐの鬼ヶ島に、一台の黒い宇宙船が降り立ち、中から出てきた二体はその惨状に目を疑った。
「どうなっているんだ…なんで先に来た仲間たちが、先行隊が殺されている?」
「長官、見てください。この辺にある死体には、すべて何者かが長い刃物で切り裂いたと見られる傷がついています。」
「なんだと?」
「こちらは足に激しい噛み跡がありますね、相当強く噛まれたのでしょう、くっきりと残ってます。これも、あれも…それから、複数の死体に打撲や顔のひっかき傷がありますね。目や鼻、口が引くほど損傷している。何かの生物がかなり暴れていたようです。見るも無残な死体となっています。あとは、あの辺りの死体ですね。ええと、ああ、こちらもひどい。完全に目が潰されています。何かに突き刺されたのでしょう。原型が残らないほど破損しています。前が見えず海へ飛び込んでしまったのか、海の上で浮いている者もいます。それ以外は刃物を持った者にトドメを刺されていますね。しかも、中には眉間を貫かれた者もいます。本当に、なんて惨たらしい…」
「クソッ、よく見れば門も破壊されてやがる!畜生め、一体、誰がこんなことを!」
「しばしお待ちを…なるほどです。監視カメラのデータによると、桃太郎と名乗るこの星の住民とそのペットがやったみたいです。カメラにしっかりと「俺は桃太郎だ。」と名乗る様子が映っていますね。」
「何?つまり、この星の先住民どもがやったということか?ふざけるな!人類だが、なんだが知らないが!このオーガ星人の基地に侵入し、挙句、蹂躙するとは生かしておけぬ!」
「ええ、酔っぱらって軍事技術を使う前に殺されてしまった仲間のためにも、必ずや桃太郎とやらは殺し、この星を我らがものにしなければ。ただ、長官。この星を侵略するには、数が足りません。」
「ううむ…仕方ない。本来は先行隊と共に行うはずだったからな。彼らが先に現地で物資を調達していたが、それも取り返されている…口惜しいが、一旦、本星に戻って立て直すとしよう。だが、この恨みは必ず晴らすぞ!」
「はい、長官。勿論です。」
その後、二体のオーガ星人は、島中に放置された仲間の死体を船内に運び込むと、後悔と恨みを持ったまま故郷への帰路に着いた。
その数百年後、突如としてオーガ星人は大軍で、地球に侵攻を開始した。
復讐戦をとばかりに襲い掛かった彼らは、地球中を大混乱に陥れ、数十年続く宇宙戦争が始まってしまった。