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第30章: 作戦会議

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この物語は毎週、公式YouTubeチャンネル Hirono Monogatari で公開されています。ぜひご覧ください!www.youtube.com/@hironomonogatari.

闇が世界を包み込むたび、英雄が生まれる。古の伝説が語るように、エルドリア王国の運命もまた、一人の戦士の手に委ねられようとしていた。南方の空は紅蓮に染まり、火山の怒りが大地を震わせる。荒れ狂う溶岩の奔流は、すべてを焼き尽くし、戦場を地獄へと変えた。しかし、その炎の中に立つ影がある。ダニエル――かつてはただの旅人であった青年は、仲間と共に剣を握り、戦うことを決意する。敵は強大、道は険しい。だが、この戦いの先にこそ、彼の宿命が待っていた。これは、勇気と希望の物語。英雄が歩む道の、始まりの一歩である。


夕暮れ時、セドリック卿はダニエルたちを作戦会議へと呼び寄せた。広間の空気は重く、誰もが何か重大なことが起こると感じていた。


— 新たな任務だ。

セドリック卿の低く響く声が、静まり返った広間にこだました。

— エルドリア王国の南部が深刻な脅威に晒されている。『憤怒の将軍』として知られるバルサスが、苛烈な猛攻を仕掛けてきた。南部の火山地帯を利用し、溶岩の爆発を引き起こして我が軍を次々と壊滅させている。


ダニエルは身を引き締め、これから語られる情報を聞き逃すまいと集中した。些細なことでも、これからの戦いの鍵となるかもしれない。


— 南部の地は危険だ。

セドリック卿は続ける。

— 活動中の火山が広がり、灼熱の熱波がすべてを包み込んでいる。そして、バルサスはその地形を利用して戦っている。やつは大地を揺るがし、敵の足元に燃え盛る裂け目を作り出すことができる。地下深くから溶岩が噴き出し、まるで業火の河のようにすべてを飲み込み、戦場を生きた地獄へと変えてしまうのだ。


彼は一度言葉を切り、その重圧が全員に伝わるのを待った。


— 南部には砦がある。

セドリック卿は続ける。

— ヴァルガルド砦だ。エルドリアとザルヴォス王国の国境に位置し、我々の防衛の要となっている。しかし、その防衛線も限界が近い。王国軍は甚大な被害を受け、バルサス軍の侵攻を止めることができていない。このままでは砦が陥落し、エルドリアは危機に陥る。戦争の勝敗すら決しかねない状況だ。


任務は明白だった。しかし、それがいかに困難であるかもまた明らかだった。


— バルサスは決して独りではない。

セドリック卿の声がさらに低くなる。

— やつには常に一体の魔獣が付き従っている。その魔獣はバルサスとの強い繋がりによって、尋常ならざる力を得ている。互いにエネルギーを共有し合い、まるで一つの存在のように戦う。そのため、魔獣は驚異的な耐久力を持ち、ほぼ無敵に近い。やつを倒すには、この繋がりを断ち切る方法を見つけなければならない。


ダニエルは仲間たちと視線を交わした。これは、今までのどの戦いとも違う――それは全員が理解していた。イザベルは強く拳を握りしめ、決意を固める。エリアナの鋭い眼差しは、すでに遠距離戦の戦略を練り始めていた。リィラは、戦いの最中に仲間を支え続けるには何が必要かを考えているようだった。


— 何か策は?

ダニエルが落ち着いた声で尋ねた。そこには揺るぎない決意が込められていた。


セドリック卿は頷く。


— ああ。バルサスと魔獣を倒すには、二人の繋がりを断つことが不可欠だ。魔獣はバルサスと離れれば離れるほど弱体化する。つまり、やつらを引き離すことができれば、勝機が見えてくる。


オルデンが口を開いた。


— つまり、バルサスを孤立させるのが鍵か。魔獣を引き離すことができれば、弱体化した隙を突いて仕留められるはず。


— その通りだ。

セドリック卿は頷く。

— プリンセス・エリアナとオルデンは、遠距離戦と近接戦の両方に優れている。二人が魔獣の足止めをすることで、バルサスとの距離を開けられるはずだ。ダニエル、お前とイザベルは弱ったバルサスに攻撃を集中させろ。そしてリィラ、お前の役割は仲間の支援と回復だ。戦いが長引けば長引くほど、リィラの力が鍵になる。


— 君たちはこの国の希望だ。エルドリア王国の未来は、君たちに託されている。ヴァルガルド砦だけではない。王国そのものが、この戦いの行方にかかっている。明朝、出発せよ。


その夜、オルデンは砦のテラスで一人佇むイザベルを見つけた。


— 考え事か?

オルデンは彼女の隣に寄りかかるように立った。


— ただ、整理してるだけ。

イザベルは夜空を見つめながら答えた。

— 任務のたびに、危険が増していく気がする。


オルデンは微笑を浮かべる。


— お前なら大丈夫だ。昔から誰よりも強かった。でも、強い者ほど、支えが必要なんだぜ。


イザベルはオルデンを見つめ、片眉を上げた。


— それって、ずっと私につきまとうってこと?


— まあ、そういうことかもな。

オルデンは笑みを浮かべる。

— でも約束するよ。絶対に、お前を一人にはしない。


イザベルは少し戸惑ったように視線をそらし、夜空を仰いだ。オルデンは昔から皆の兄貴分のような存在だったが、今の彼の言葉には、何か違う響きがあった。その違和感は、彼女の胸の中で静かに渦巻いていた。


同じ頃、エリアナは母であるセラフィナ王妃に呼ばれていた。


— エリアナ、今回は残りなさい。この戦いは危険すぎる。私は……お前を失いたくない。


— 私は戦士です。逃げることはできません。


セラフィナは娘の手を握りしめ、不安げな瞳で見つめる。


— お前の勇敢さは誇りに思う。でも、私はすでに多くの愛する者を失った……。エリアナ、お前は未来の王国を背負う存在なのよ。お願いだから、無茶だけはしないで。


エリアナは母の手を優しく握り返す。


— 約束します。ちゃんと自分を守ります。でも……私のすべきことからは逃げません。


深夜、リィラはそっとダニエルに近づいた。


— あの……戦いの時、私が……ダニエルを守るから。


ダニエルは微笑み、彼女の頭にそっと手を置いた。


— ありがとう、リィラ。お前を信じてるよ。


リィラは頬を赤らめながら、小さく微笑んだ。


戦いの夜は近い。それぞれが思いを胸に、夜の静寂の中へと溶け込んでいった。

物語はここで一つの区切りを迎えたが、旅は終わらない。戦火の中で誓いを交わした仲間たち、流した涙と汗、そして刻まれた傷跡――それらすべてが、彼らを次なる運命へと導いていく。エルドリア王国の未来はまだ不確かだが、ダニエルたちは信じている。どんな暗闇の中でも、希望の光は消えはしないと。そして、また新たな戦いが始まるだろう。彼らの物語が、これからも続いていくことを願って。次の章で、再びお会いしましょう。

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