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日々(まいにち)

作者: miyabi

高校生までお手本のように、絵に描かれたように、生きてきた。が、卒業と同時に色覚異常。モノクロの世界に引きづり込まれ夢(地獄)の中を生きていると思っているうち、今日を気にかけなくなった。そんな事を…アラームが鳴っている。

午前四時目を覚ます。いつも通り起き、いつもと同じニュース番組を見ながら、味気のない無塩バターを乗せたパンを噛み締めるように食べる。先の広がった歯ブラシを使い電気のついていない暗い家を出た。この時間帯は外もまだ暗い、当たり前である。まるでまだ赤子の目が見えず手探りでもがくように。足を出す。赤子の丸々とした焼きたてのパンのような暖かい手と違い、視界の中にある、落ちていると表現した方がただしいような、今にも折れそうな肉のついていない足が次々とコンクリートを踏みならしバス停へ向かう。憂鬱、今世界中でこんなブルーな言葉が似合うのは私だけだ。と、またもや足元を見ながら、なんの根拠もなく思った。と同時にいまなら何も後悔せず死を手繰り寄せることが出来る。と、これは確信に近く思った。いや、生きているのかすら怪しくも感じられた。気づけばバスのなかだった。運転手とニ人きりの空間。まるで地獄への観光バスのようだった。というよりこの状況自体が地獄そのもののように感じられた。何駅か通った後、バスが停まり吐き出された。また地獄から逃げてしまったのだ。仕方がなく、食べ終わった手羽先のような足を前に出す。しばらくして踏切が見えた。空間も見た目も朱に交わった地獄が通り過ぎる。今日は湿度が高いせいか線路の焦げるような香りが色濃く漂い、腹の中のパンに灰色の味をつける。たった五歩、六歩進んだだけで食べ終えたはずのパンに味をつけられた事で気持ち誇らしく感じた。その矢先、会社についた。誇らしく感じられた黄色い気持ちは自らによって破られた。上の方を見上げ会社の看板を確認する、空はブルー色。長く嫌に感じる出社という行動に終わりが来てしまった。来てしまったからには仕方がないと唾を飲み込み地獄へと足を漬ける。太陽と同時にだんだん沈んでゆき結果、黒い画用紙に投げ出された。なるがまま転がり(つまり地獄を通らず徒歩で帰った。)赤い屋根の錆びれたアパートで止まった。そのままどこかへ転がる事も考えた。行く先々がオレンジに燃える地獄しか想像できなかったため大人しく1Kのすみかに自分をねじ込んだ。ところが本心をつつけば地獄の柑橘系の色をした炎に頭の頂点まで浸かっていたいという気持ちがシャボンの泡の如く流れ出た。が所詮シャボンの泡であった。重いドアを開ける。暗闇に身を投じて何日も炊飯器に入ったままの飯に挨拶だけし色のついていないベットに倒れ込む。そういえば今日は何月何日だろう。カレンダーのある色づいた生活など高校生までであった。そこからはモノクロしか見ていない。まぁいいや。明日も色の変わらない、弱い男の日々が続く。

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