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03-閑話1_ルミ

はい、聞いていますよ。

今日から私の仕事を手伝ってもらいます。

心配することはありません。

分からないことがあれば、ちゃんと説明いたします。

私の主な仕事は、クロー様のお世話です。

と、言っても難しいことはありません。

クロー様は何かして欲しいことがある場合は、必ず言っていただけますし、失敗しても怒ったりされません。

…そうですね、他のご兄弟様と比べて、とても仕え易いと思いますよ?

ご兄弟様はちょっと…ええと、そうですね。

ああ、ベルド様にお会いしたと?

…言わんとすることは分かるのですが、屋敷内でその様な発言は止めた方が良いですね。

クロー様はその様なことは無いと思いますよ。

そもそも、自分のことは自分でやりたがる方なので、こちらとしてはもう少しお世話させて欲しいくらいです。


…でも、昔からずっとその様に穏やかな性格だったわけじゃないんですよ?

今のように落ち着かれたのは2年前くらいからですね。

ある日、原因不明の高熱を出されて2日も意識が戻らないことがあったのです。

そして、目覚められてからは人が変わったかのように穏やかと言うか、優しくなられたのです。

それまではいつも不機嫌そうな表情をされていて、声を荒げることも多かったですね。

…ええ、医師にも高熱と、その後性格が変わったことの原因は分からないそうです。

たた、付きっきりで看病をしていた私に症状が現れることはなかったため、伝染する病気では無いと言われてます。

そうですね、一度、聞いてみたことはあるのですが、「諦めがついたから」、「頑張らなくて良いと思ったらスッキリしたから」と言っていましたね。

でも私は今のクロー様に変わられてからの方が、生き生きされていて良かったのではないか、と思ってます。

…今でも、あの日初めて言っていただけた「ありがとう」の言葉を思い出すと、感激で涙が溢れそうになることがあります。

もちろん、その後も数え切れないくらい言っていただいてるのですが、高熱から目覚められたばかりで、まだぼぅっとされてる中、それでもハッキリと言っていただいたあの言葉は、私にとって特別でした…


あぁ、話がそれましたね。

そうそう、クロー様なのですが、最近は昼過ぎまで町に行かれます。

その後、屋敷に戻られて当家の事務作業をされます。

…はい、事務作業です。間違えてませんよ。

…いえ、改めて確認と言われましても…クロー様は今年10歳になられますが…

何故と?…えー、2年前からクロー様は本格的に読み書き、計算の勉強を始められました。

そして、それからたった3ヶ月で計算を、半年後には読み書きも完璧になられたのです。

そこで、かねてよりお年で事務作業が辛くなっていた執事のセシルさんに代わり、クロー様がその作業の大半をなさるようになったのです。

ええ、セシルさんも驚かれてました。

1年ほどで、男爵家の事務を一手に担うようになり、セシルさんが作業内容のチェックをしても、指摘がほとんど無いと言うのですから。


そんなクロー様のため、お茶の準備をしておくのも、大事な仕事ですので覚えておいてくださいね?

…やっぱり楽そう、と?

話は変わるのですが、クロー様がお勉強をされていた際、私もいつも傍らに居ました。

いえ、クロー様に「側に居てほしい」と言われたら、居るしかないじゃないですか?

そして、私もついでに同じように教わっておりました。

この年までたいした勉強をしてこなかった私は、クロー様と同じことを覚えるまで倍の時間が掛かってしまいました。

ですが、セシルさん、クロー様のおかげで、今ではクロー様とほぼ同じく作業が出来るようになったのですよ。

…さて、私がクロー様の作業をお手伝い出来るようになったのは良いのですが、最近、別の問題ができまして…

町に出るようななったクロー様は、孤児院や金物屋と協力して、色々な商品を作られるようになったのです。

それが、どれも売れ行きが良いらしく、商業ギルドに行ったりと、とても忙しくなってしまって…

…何故逃げようとしてるのですか?

話はまだ終わってませんが?

そうですね、簡単に言ってしまうと、そういうことです。察しが良くて助かります。

では、これから事務作業の説明をしてゆきますね?

分からない所はいくらでも質問して下さい。

いえ、それは私だってクロー様と二人だけで作業してゆけたら良かったですが、クロー様の将来のことを考えると、商品開発をされるていった方が絶対良いじゃないですか?

かと言って、クロー様がされていた分の事務作業を私ひとりでやったのでは、時間が掛かってしまい、クロー様のお世話が出来る時間が無くなってしまうんですよ。

それなら、元々、セシルさんも事務に人手は欲しがっていたので、もうひとり人を雇おう、ということになったのです。

…それに、貴女も面接で「自分は商家の娘で、家の仕事もやってきた」と言ったそうではないですか?

私も最初に言いましたよね?

「私の仕事を手伝ってもらう」と。

…さぁ、もうつべこべ言わずに座って下さい。

覚えてもらうことはいっぱいあるんですからね?


「今日は遅れてゴメンね。作業進んでる?」

「はい。二人でほとんど進めておきました。」

「クロー様ぁ、ルミさんが厳しすぎるんですよぉ…」

「貴女はケアレスミスが多いんです!少し時間を掛けてでも見直しをしなさいと、何度も言ってるじゃないですか!」

「まぁまぁ、遅れたお詫びに今日は僕がお茶の準備をするから、二人とも少し休もう。あと、孤児院の子達とクッキーを作ったから、3人で食べよう。」

「あ〜ん、クロー様ぁ!愛してますぅ!」

「ハハハ、はいはい。」

「あ、こら!抜け駆けするんじゃありませんっ!」

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