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07_来たぞ王都

は〜るばる〜来たぜ、王都トロリス。

季節は秋。

この時期、王都では国王主催の剣術大会が催される。

大会には多くの貴族も招待されるため、自然とこの時期は貴族の社交シーズンとなる。

セーム様もこの時期は複数の貴族家のパーティに呼ばれており、王都滞在中はほぼ毎日パーティへ出席する予定となっている。

それに加えて、昼間に王宮へ出向いての会合などもあり、なかなかハードスケジュールだ。

当然、セーム様に付いて回ることの多い僕も、それなりに忙しい事になる予定だ。

…ただし、最後まで忙しいままかは、これからの僕の行動が成功するか否かで変わって来る。

そう、僕はこの王都滞在中にいろいろな事に決着を付けるつもりでいる。

それなりに準備もしてきた、その結果がもうすぐ分かる。

馬車に揺られ、近付く王都を眺めながら、僕は緊張を増してゆくのだった。


セーム様に引き取られて半年あまり。

その間に2回、王都を訪れ、計3回パーティに出席した。

セーム様は「護衛として」と仰っていたが、緊迫した事態などそうそう起きるはずも無く、僕はただひたすらセーム様の側に付いているだけだった。

…だったのだが、初回のパーティの半ばから、一人の女性に気に入られて、ずっと話し掛けられ続けてしまった。

セーム様に視線を向けても、助け舟を出されることもなかった。

それで、後からその女性の素性を聞くと…


──王妃様だった!


いやいや、王妃様が一介の貴族の主催するパーティに来ることなんてあるの?

あるらしい。

王妃イリス様は、数年前に幼い子息を亡くされたそうだ。

年齢的にこれ以上、子供を儲ける気も無く、かと言って閉じ籠もっているのも、気が塞ぐだけ。

ということで、イベント事には積極的に参加されているとのこと。

亡くなられた王子は、生きていれば丁度僕くらいの年齢になるという。

なので、王妃様は僕に興味を持たれたし、セーム様も自分の護衛より王妃様のお相手をさせる方を優先させたと。

なるほど。

…でも、最初に挨拶された際に「ナントカ子爵夫人」と名乗られたと思うのですが?

それは国王が持つ爵位の一つ、王妃としての正式な立場で参加するのでなければ、「子爵夫人」を名乗ると。

へ〜、知らなかった。

あ、「子爵夫人」として参加している際は、「王妃」であることを言わないのが、暗黙のマナー?

だから、僕にその場で説明が出来なかったんですね。

でも、知らせないでもし、失礼なことを言ったり、態度をとるんじゃないかと心配とかは──

──聞いてた感じ、問題無かったと。

良かった。

これから問題起こそうというのに、関係無い所で無駄に目を付けられたくはない。

…え?灌漑事業について?

僕、そんな話してました?

…確かに、「川を真っ直ぐにしてしまえば、雨季の氾濫は抑えられる」みたいな話はした気がしますけど…。

前世では、江戸時代にも公共事業として行われてたような事ですよ?

そんなに驚かれます?

──え、その他もろもろ気になった点がある?

…やってしまった。


かくして、僕はセーム様の「護衛」に「相談役」も兼ねることとなった。

基本的には、話を向けられた時に答えるだけなのだが、僕が結構答えられるので面白くなったのか、他貴族家絡みの話もされるようになった。

もちろん、答えられない事もあったが、20数年の社会人経験に当てはめて考えると、案外答えられるものだ。

中には、「二人の息子に不満が出ないように遺産を分けたい」という「ラノベかよ!」と思う相談も本当にあった。

世界は違っても、人間の悩みなんて変わらないのだなあ、と思う。


印象に残った話としては、副宰相様の派閥内での内乱未遂、というのもあった。

僕が2回目に王都に来た際に、セーム様が謁見したのだが、その場で愚痴のように話されたそうだ。

自分の領内が上手く回っていないようだと。

…まぁ、それを聞いても、僕にはどうしょうもないと思ったのだが、別件のついでで行商人に話を聞きまくった。

その結果…予想より不穏な内容に気づいた。

まだ疑い段階なのだが、最悪、内戦準備までしてる可能性がある。

内戦なんて、もちろん仕掛けた方が罪に問われるものだが、領主(この場合は副宰相)を捕らえた上で、反乱の疑いでも掛けてしまえば、簡単に言い逃れも出来るだろう。

別に副宰相様がどうなろうと気にしないのだが、内乱などが起きれば、どうしても人の関心はそっちを向くだろう。

そうなると、例え親父君の件が発覚しても、事件が有耶無耶にされてしまうかもしれない。

せめて副宰相様には、剣術大会あたりまでは健在で居てもらわなくては、こちらも困るのだ。

なので、作りましたさ本気の資料!

エクセルも関数も使えぬ、付箋も無い、そもそも紙すら貴重な世の中で、なんとか渾身の資料を作成した。

布を短冊型に切って台紙に縫い付けて付箋代わりにしたり、巧妙に領間の税を上げられてる品目を基準単位毎の額に計算し直したり、領軍間で揉め事が起きてる地域が、地理的に重要な地点であることを地図上で描き示したりした。

その甲斐あってか、セーム様も資料を見て大至急で副宰相様に取り次いで話してくれた。

話の結果、副宰相様も事態を重く受けとめ、対処されるそうだ。

そもそもの原因は、副宰相様が進めよとしている行政改革にあるらしい。

その改革のせいで既得権益を損なう貴族が主体になっているのではないか、との見立てとのこと。

…それを聞くと副宰相様には、是非、頑張っていただきたいと思う。

でも、副宰相様の元で働く気はありませんから。

なんでも、資料を見た副宰相様が「この資料を作った者を配下に迎えたい!」と懇願されたそうだ。

ちょっと本気でやり過ぎたか…。

資料の作成者の素性は明かさないで欲しい、とセーム様には伝えてあったので、しつこくされることは無いと思いたい。

もうすぐ「犯罪者の家族」の烙印を押される者が、部下に居たら迷惑だろうし、堅苦しいだけの仕事なんてする気も無いんだよね。

ただ、前世で培った資料作成のスキルが多少なり活かせたのは、ちょっと嬉しかった。

前世の自分が、無駄では無かったと少しは思えたのだった。


余談だが、その夜のパーティでは到着早々にイリス様に捕獲され、放してもらえなかった。

まあ、イリス様は義母ミーナと同年代の美人で、全然嬉しいのだけど。

自分でもデレデレしてた自覚がある。

そして、また余計な事まで話してしまった。

以下がその一例である。

『え〜、そうですね〜。

僕は家で出納整理をやっていて、領の財務資料を見たこともあるんですけど、国の統一規格があるともっと効率的だな、と思ったことが結構ありますね。

例えば、箱の大きさが国中で統一されてると、便利だと思うんですよね。

大きさが決まっていれば、同じ果物なら一箱の中に入る量はだいたい同じになりますよね?

そうすれば、いちいち箱毎に個数を数えたりする必要も無くなるかもじゃないですか。

また、箱の大きさが同じなら、それを積み込む荷馬車や荷車の横幅も、箱何個分で統一できますよね?

そうなると、街道なんかの道幅も、荷馬車2台がすれ違える幅に合わせた幅で整備すれば良くなるんです。

無駄に広く整備して、その分お金が掛かったりすることも無くなりますし、道幅が狭くて広げる必要のある箇所も、基準通り測定すれば過不足無く拡張できるようになりますよ。

貴族も馬車の大きさの上限を「荷馬車と同じ」に定めれば、今のように無駄な「大きさ自慢」をする意味が無くなって、「豪華さ自慢」だけにお金の使い方を専念出来るようになって、楽だと思うんですよ。』

…そして翌日、その時の事でセーム様に詰められるまでがテンプレになりつつある。


あと、この間にあった出来事として、ルミとカイルさんの仲が良い感じになった事が挙げられる。

個人的に思うところもあるが、カイルさんは真面目で優秀な人だし、反対する理由は無い。

何より、これまで僕の世話で後回しにしていたであろう、自分のプライベートについて、ルミが考えられる余裕が出来たことが嬉しい。

可能ならこのまま二人が所帯を持って欲しいと思っている。

…ただ、ちょっと嫉妬する気持ちもある。

でもそれは、母親や姉に好きな人が出来た時のような感覚が近いんじゃないかと思う。

それに僕の今の目標は、一人旅をして世界を見て回ること。

それにルミは巻き込めない。

ずっと屋敷住まいをしていたルミに、いきなり旅暮らしをしようとは言えない。

それに、やはり危険はどうしても付いて回ることになるし、そんな生き方は自発的な理由以外でさせるべきでは無いと考える。

ちなみに、カイルさんと剣術の練習をすると、毎回完膚なきまでにボロボロにされてしまっている。

あの時の一戦はまぐれだと白状しても、手加減してくれないんだよね、ちくしょう。

ま、それがカイルさんなりの師匠心だと、最近では分かって来たので、不満を言ったりはしないのだけど。


そんなこんなで、いろいろあった半年。

その裏で準備も進めてきた。

故郷のみんなの恩に報いるため、ナズナ師匠、ツウィルさんとの約束を果たすため、いざ行動の時!

まずは剣術大会、てめーからだ!

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