変顔最強説。
「まったく!」
「もう許してあげなよ。」
玲ちゃんはお怒りだ。
勝手に二つ名を呼んだあの人が悪いとは思う。
「だってぇ。」
泣きそうな顔で私を見る玲ちゃん。
「だって、凛ちゃんを私自身で驚かそうと思ったのに。」
「そこ?!」
「うん。」
「マジかぁ~。」
私が想像していた所じゃ無かった。
凛ちゃん曰く、商売をしているから白付けで大勢の前で呼ばれる事は慣れているそうだ。
間が悪かっただけだった。
ちょっとあのオジサンに同情した。
「にしても、ここは凄いね。ありがと。」
「うん。」
アニメなどで見た景色が広がる部屋だった。
王宮の一室にも負けないんじゃないかな?
高級そうな家具が並び、ベットもソファもフカフカだ。
部屋も凄く広いのが5つもある。
私は感謝の言葉を紡いだ後に玲ちゃんをギュッと抱き寄せた。
玲ちゃんは始め戸惑う姿を見せたが、直ぐにギュッと抱きしめてくれた。
どれ位の時間をそうしていたか分からない。
ホッとしたのかもしれない。
私の眼から頬を伝う涙が流れていた。
「泣かないで。」
「うん。」
「怖かったよね?」
「うん。」
「今度こそ、ちゃんと・・・するから。」
「うん?」
「ごめん。こっちの話。あっ!見て見て。」
「何?」
聞き取れない言葉はあったが、玲ちゃんが指し示す方向を見る。
「うわぁ。きれい。」
「ねっ!綺麗だね。」
昔、100万ドルの夜景とか聞いた覚えがあったが、このプライベートルームから見下ろす街の夜景はとっても綺麗だ。
まだ時間は八時ぐらいだから、人の動きも見える。
街に住む人の営みも垣間見る事の出来る夜景は一生忘れる事は出来ないと思う。
どれくらいの時間を費やしたか分からないけど、長い時間を夜景で楽しんだ気がする。
「凄く濃い一日だったなぁ~。」
「ふふふ。そうだろうね。私もそう思ったスタートだったから。」
「でもさ。私は一人じゃないから良かったよ。玲ちゃんは一人だったでしょ?」
「ううん。ちゃんと助けてもらったよ。」
「そうなんだぁ。良かった。」
「ふふふ。本当に凛ちゃんは優しいね。」
「そう?」
「うん。さぁ、お風呂に入ろう?」
「あの大きな風呂ね?」
「うん。一緒に入ろう。」
「いいね。入ろう。」
私達は大きなお風呂を堪能した。
お湯は丁度良い温度に調整されていた。
シャンプーやリンスに石鹸があったのは嬉しかった。
ラノベ等では無いとされる世界もあるから、本当に良かった。
お互いにお互いの身体や頭を洗い合い、楽しく過ごした。
大理石に囲まれたお風呂の浴槽はとても大きく、所謂ライオンの口からお湯が出ているという豪華なお風呂を満喫した。
本来のプライベートルームでは、給仕などをしてくれる専属メイドが付くらしいが、玲ちゃんが断った。
「二人きりの方が落ち着くでしょ?」
王族や貴族ではない庶民の私には専属メイドは敷居が高過ぎる。
そこを玲ちゃんが配慮してくれたみたいだった。
電話は無いが、連絡手段が全くない訳では無い。
アニメで見た事がある様な、筒が応接間にある。
その横には紐がありそれを引っ張ると、筒から声が聞える。
伝声管と呼ばれる金属などの筒を利用した通話装置がある。
これを利用すると、直ぐに客室係が飛んでくる様になっている。
現代を知っている私にとっては少し不便だと感じるけど、この世界では進んだ技術だ。
最新設備だというのだから、どれだけ豪華な部屋かが分かるというモノだ。
風呂から出て、伝声管を利用して飲み物を用意してもらった。
甘い果汁水だった。
そして私達は一緒のベットに入った。
ベットはクイーンサイズを更に大きくしたようなベットで、特注品のようだ。
「これなら10人ぐらいは一緒に寝る事が出来るね。」
「そうだね。」
本当に大きなベットで中央部に行くのも大変だ。
「うわぁ。フワフワ。」
「最高。」
少しの間ベットの感触を楽しんだ私達は、キャッキャキャッキャと騒いだ。
やっぱり楽しい。
玲ちゃんと居ると安心できる。
異世界で一緒だったという玲ちゃんの話も信じられるから不思議だ。
魂で繋がっているのかな?
ちょっとくさいかな?
いや、重たいか?
「で、明日からどうする?」
「う~ん。どうしたら良いのだろう?」
「何かしたい事とかある?」
「・・・特に思い当たらないよ。」
「じゃあ、やっぱり冒険者登録しよっか?」
「定番すぎるけど、強くなる必要もあって、生活する為に稼ぐならそれしかないかな?ねぇ玲ちゃん。」
「何?」
「日本に、地球に帰れるかな?」
「・・・わからない。今まで私は凛ちゃんを探すので手一杯だったから。」
「そっかぁ。ごめんね。なんか。」
「ううん。私の方こそごめん。ちゃんと答えれなくって。」
「玲ちゃんは謝らないで。今、生きているだけでも充分だよ。」
私は玲ちゃんに視線を合わせて、慌てて言葉を紡いだ。
玲ちゃんは一瞬だけ苦々しい顔になり、そして今日二度目の申し訳なさそうな顔になった。
この顔をみたら、仕方がない。
私も本日二度目の行為に踏み切った。
「ふふふ。もう。凛ちゃん!」
「だっで、そんあがおになっでるんだぼん。」
(だって、そんな顔になってるんだもん。)
「もう。ふふふ。」
「あははは。」
二人して笑って、その後は今日の事を振り返って楽しく過ごして、一緒に寝た。
変顔は最強なのだ!
次回更新は
2021年10月9日12:00
よろしくお願いします。




