異世界。
玲ちゃんが語ってくれたこの世界の話は本当に頭が痛くなる。
ラノベとかでは結構有名は話らしいのだが、転移させられたのだろうとの事だ。
私も、アニメになっているのは話題になっていたから知っている事はいくつかある。
が、私自身がそういう事になるとは思いもしていない。
「マジか~。」
魔法があり、魔物がいる。
これは俗にいう魔素というモノが関係している様だ。
この世界に在って、地球に無いモノ。
その存在によって世界の様子も文明の発達の仕方も違うらしい。
「玲ちゃんは。この世界の事をよく知っているの?」
「う、うん。凛ちゃんを探す為に、色々調べた。」
「そっかぁ~。本当にありがとう。」
玲ちゃん。本当に私は恵まれている。
親友だったのかな?じゃなきゃ異世界にまで探しに来ないよね?
「でも、どうやって地球からこの世界に来れたの?」
「・・・気がついたら、ここに居た。だから、分からない。」
「そっかぁ、私もどうしてここに居るか分からないから同じだね。」
「う、うん。」
玲ちゃんの方が、私よりも先にこの世界に来ていた様だ。
で、私と違い、色々と覚えている。が、転移した経緯は分からない。
「はぁ~。前途多難よね?これからどうしたら良いのかな?」
「この世界で生きながら、帰る方法を探す。」
「玲ちゃんは前向きだなぁ~。」
「そうかな?」
コテと頭を横に倒す玲ちゃんはカワイイ。
私ってば、こんなカワイイ子と一緒に居たのか~。
劣等感を持たずに居る事が出来たのかな?
「どうかした?」
「ううん。」
おっと、変な事を考えちゃった。
でも、玲ちゃんが私の事を知っている人であるのは間違いないと思う。
凄く話しやすいし、あんなに強いのに怖く感じないのは、頭のどこかで理解しているのだと思う。
「あのさ、私達の関係は友達?それとも・・・。」
ちょっと寂しそうな顔になる玲ちゃんは私の言葉の続きを待っている。
「・・・親友だったのかな?」
「うん。親友だったし、今の私はそう思っている。」
「ご、ごめんね。本当に覚えて無くて!傷つけてしまったら、本当にごめん!」
私は両手を合わせて謝罪する。
一瞬、戸惑った表情を見せる玲ちゃんはシッカリと私の眼を見て答えてくれる。
「いいよ。覚えていないのは知っているし、仕方がない。だから謝らないで。」
「でも、うん。わかった。ありがとう。」
「うん。それで良い。」
それから私は玲ちゃんから、地球での話を色々聞いた。
私達がどういう事をしてきた。とか、私達が行った先で起こった出来事などの話。
それから、同級生の話。
私には新鮮に感じる事である筈なのに、懐かしさを覚えた。
やはり、玲ちゃんは私の親友なのだろう。
私の事をよく知っているし、共感できる。
「でね。その時に私達は手を握って走り出したの。」
「ヤバいね~。」
「うん。でもね、そこから私達の物語は始まったの。だからいい思い出。」
「絶対、息切れたよね?」
「うん。私達はぜぇぜぇ言って笑い合った。」
一瞬の間。その間に頭の中はその時のイメージが流れる。
変な外人から逃げる女の子二人。
「あははは。」
「ふふふ。」
笑いがこみ上げてくる。
私達は本当に楽しく過ごしていたんだろうな。
笑い声が止み、静寂が支配する。
「戻りたいね。」
「うん。戻りたい。」
どうやったら、元居た世界に帰れるのだろうか?
あの時に戻りたい。何故か、そう思った。玲ちゃんの事を思い出した訳じゃないけれど、戻りたいと本当に思った。
「どうしたら、戻れるかな?」
「・・・強くなる必要がある。」
「えっ?」
「玲ちゃんは強くなる必要がある。強くならないと、この世界では生きられない。先ずは生き残る事。その為に、強くなる事が大切。」
「そっか、そうだよね。先ずは生き延びる事が大切だよね。」
「うん。」
玲ちゃんの言う通りだ。
生きていかなければ、帰る事が出来ない。
そして、この世界は元の世界より厳しそうだ。
魔物が居る世界なのだから。
「わかった。玲ちゃん。私は強くなるよ!」
「うん。」
ニコリと笑う玲ちゃんの顔はやっぱりカワイイな。と改めて思った。
「とりあえず、近くの街に向かう。」
「うん。わかった。」
玲ちゃんの指針に従って動く事になった。
先ずは近くの街に向かう。
そこで冒険者登録をして身分を手に入れる。
冒険者として活動し、強くなる事と生活費を稼ぐという事になった。
「ぼ、冒険者?!」
「うん。」
まさか私自身が、転移・転生系の主人公が目指す、あの『冒険者』を目指す事になる日が来るとは、人生は何が起こるか分からない。
「でも、私は何も出来ないよ?」
「大丈夫。私が凛ちゃんを守る。」
「わかった。玲ちゃんがそう言うなら大丈夫だね。」
「うん。」
うっ、玲ちゃんが頼もしい。頼もし過ぎる。
凄く安心感があるなぁ~。
「街まではどれくらいかかるの?」
「ここから一番近い街は、徒歩で二日かな?」
「二日も掛るの?」
「大丈夫。少し待って。」
そう言って、玲ちゃんは少し離れる。
『我は汝の主である。我の呼びかけに応えよ。サラ!』
大きな幾何学模様が玲ちゃんの前に出現する。
ズズズ~って感じで何か靄が浮かび上がった。結構デカい。
『ご主人様。お呼びでしょうか?』
『うん。先ずは挨拶して。私の親友に。』
『なんと?!親友様?!わかりました!!』
スッと靄が無くなった。
そこには大きな犬?いや狼か?が鎮座していたのだった。
「嘘でしょ?!」
私の声が木霊したのは言うまでもない事だと思う。
次回更新は
2021年10月5日12:00
よろしくお願いします。