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呪いのG☆D★KILLER ~彼女は彼女の為に。~  作者: ボンバイエ
第一章 見知らぬ人。見知らぬ場所。
30/31

失ったモノ。

予定通り更新。


「気持ち悪い空間ね。」


『そこはどうかんだねぇ~。』


お道化た様子で“博愛の悪魔ハピネス”が同意する。

白と黒が混ざった空間。

絵具や自然界では白と黒が混ざり合うと灰色になる。

しかし、自然界の法則は当て嵌まらないようである。


『それにしれも、やるもんねぇ~。』


「ギリギリだったじゃない。」


『ふふふ。私の時限魔法に抵抗出来る子も珍しいねぇ~。』


時限魔法には二種類ある。

遅効性の魔法と時間をかけて練り上げる魔法だ。

“博愛の悪魔ハピネス”が仕掛けた魔法は練り上げた上に遅効性の魔法であった。


「ふん。私が鍛えたのだから当たり前よ。」


『ふ~ん。色々言いたい事は有るけど、まぁ良いねぇ~。私の攻撃を耐えたのだろうから良しとするねぇ~。』


事実“博愛の悪魔ハピネス”の興味は耐えた少女から失われつつあった。


「貴方の所為で、こうなってしまったじゃない。」


『しかしねぇ~。君が使い手だとは知らなかたからねぇ~。』


「ふん。だから証明すると言ったじゃない。」


『そうだねぇ~。それについては私が悪いねぇ~。でも、私は悪魔だからねぇ~。』


“博愛の悪魔ハピネス”からお道化た様子の中から形容しがたい不気味な様子が相手を飲み込んでいく。


「くっ!」


『ふふふ。これ位にしておきましょうねぇ~。』


ズズズっという感じで広がっていた形容しがたい不気味な『それ』は失われていく。


『で、証明というのは何かねぇ~?』


「これよ。」


『ほぉ。これは驚いたねぇ~。君はよく生きていられるねぇ~。』


指し示した証明を見た“博愛の悪魔ハピネス”は驚きを隠せなかった。


『人間族である以上は耐えられないハズなのだがねぇ~。』


普通の人間族は邪神の邪痕であっても耐える事は出来ない。

よって人間族から邪神の使徒になるモノは短命を条件に何かしらの悪魔との契約を成す。

しかし、目の前に居る玲という女からは悪魔の匂いを感じないのである。

邪神の匂いすら感じなかった。


『特別という訳ねぇ~。あの方が面白そうとでも思ったのかしらねぇ~。』


ブツブツと独り言の様に話す“博愛の悪魔ハピネス”は、玲の存在すら意識から離れそうになっていく。

ふと、そんな自分に驚く“博愛の悪魔ハピネス”はじんわりと背筋に冷たいモノが流れる感覚を得る。


『まさか?!君は『それ』だけではなく他にもあずけられているねぇ~?』


「ふふふ。ご想像に任せるわ。それよりもアナタも分かっているわよね?」


『わかっているわねぇ~。邪魔して悪かったねぇ~。』


素直に“博愛の悪魔ハピネス”は謝罪を口にした。

存在値としては、自分に劣る相手であるが二人に共通するあるモノが敵愾心を失わせる。


「では、ここまでの事は以上で決着にしましょう。」


『そうねぇ~。で、ここからどうやって出るかしらねぇ~。』


「本当よ。どうすれば良いのかしら。」


この特殊な空間を形成した二人でさえ、解除する方法を直ぐには思いつかなかったのである。


『難しいわねぇ~。』


「いつ帰れるのかしら?」


一人一人が呟くように零した言葉だけが、空間を満たした。



◇◇◇◆◇◇◇



ペロペロという音が耳元で聞こえる。

私は、何だろうかと目を開けた。

目の前には白い獣の顔があった。


『気がつかれたか凛殿。』


「サラちゃん?」


『凛殿。済まぬな。悪いが起こさせて貰った。』


「ううん。大丈夫。ありがとう。」


私はサラちゃんにお礼を言って体を起こした。

気を失った所為か、発狂しそうだった感情は落ち着きを取り戻していた。


『凛殿。時間がないので単刀直入に言う。』


「なに?」


私はサラちゃんへの視線を向けた。


『主は当分この世界へは戻れないと思う。戻るのにどれだけの時間を必要とするか分からぬ。』


「そうか。でも生きているんだよね?」


サラちゃんの目は優しさを帯びていた。


『うむ。それは間違いない。今も我との間に絆が存在している。だが、この先はどうなるか分からぬ。』


「どうして?」


『“博愛の悪魔ハピネス”と自称する者と一緒に別空間に閉じ込められているからだ。』


「そっか。でも玲ちゃんなら大丈夫だよね?」


『そう信じたい気持ちはあるが、奴は相当の力を持った存在であった。主でも万が一という事もあり得る。』


「そんな・・・。」


言葉に出したものの、記憶を辿ると“博愛の悪魔ハピネス”が圧倒的な実力者であるのを思い出し、最悪な予想を頭でしてしまう。

私の最強の庇護者。

その最強の庇護者が居なくなる事の恐ろしさを感じてしまい体が震える。


『そんなに心配するな。きっと大丈夫であろう。それよりも。』


一旦言葉を止めたサラちゃんの口の端から血がにじみ出す。


「サラちゃん?!」


『大丈夫だ。そんな事よりも凛殿ことが心配だ。折角生き抜いたのだ。この先も生き抜いて欲しい。それを主も楽しみにしておろう。』


「そうだね。そうだよね。うん。わかった。生き抜いてみせるよ。」


『ふふ。その答えを聞けて我は満足だ。もうすぐここに我の眷族が迎えに来る。一緒に出るが良い。』


「うん。サラちゃんはどうするの?」


『我は疲れた。ここで眠るとしよう。』


「えっ?」


ズンと横に倒れたサラちゃん。


「うそ?!」


そのサラちゃんの身体は前足と顔と上半身を残して他は消失していた。

えぐり取られたというよりスッパリと切れて無くなっていた。


「サラちゃん!!」


私は横に倒れたサラちゃんを揺すりながら大声を上げるが、サラちゃんからの返事は帰ってこなかった。

私は、サラちゃんの死を目の前に、ただただ、大きな声を上げて泣くしか出来なかった。


次回更新は

明日、2021年10月31日(日曜日)12時

よろしくお願いします。

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