”博愛の悪魔ハピネス”。
予定通り更新。
『これだから人間風情と居ると駄目ですね~。』
私達の前に黒い渦が突如発生した。
禍々しいその黒い渦から何かが出てこようとしている。
さも悠然と、さも当たり前のように出て来る存在。
黒い渦が禍々しいのではなく、その出て来る存在こそが禍々しい事に気付いた私の膝はガクガクと震え出した。
『人と言うのは愚かな存在ですねぇ~。目にして初めてその偉大さに気付くとは・・・。早くに気付いておれば、違う対応も出来たでしょうにねぇ~。くっくっく。』
こいつはマズい。
そう直感したのか、頭の中の警報が鳴りっぱなしです。
玲ちゃんよりも強い存在ではないか?
という考えが頭を占めていきます。
逃げなければいけない。
そう思うのに体は動いてくれません。
それは、皆も同じ様でした。
『だいたい。名乗る必要なんかないわよねぇ~?』
ガクガク震えながら、【黄龍の牙】のメンバーの足元には水分が溢れて水溜まりを作った。
『どうせ、死ぬんだから。うふ。』
その禍々しい存在が『パチン♪』と指を鳴らすと帰還用ワープゾーンの前にいたメンバー達の頭が吹っ飛びました。
ドサリと崩れる様に胴体は落ち、頭だけが転がる。
『へぇ。生き残った存在が居るわねぇ~。』
私はそばに居たポーラさんを抱きしめて庇いました。
唯一それだけが出来た事です。
他のジャックさんやハイホーさんにケブライさん、ビッセルさんにアーチさんの頭が目の前に転がっています。
『あらあら。これはまた面白い子が居る者ねぇ~。』
「くっ!」
首から血が噴き出している訳でも無く、ドサリと崩れ落ちた胴体と血が出ない首。
どうやったのか、全く分かりません。
『生き残ったご褒美をあげないといけないわねぇ~。』
クルリとその場でターンを決めると被っている帽子をとり、恭しく頭を下げた。
『僕は君達が言う所の“悪魔”であり邪神の使いだねぇ~。“博愛の悪魔”ハピネス。よく覚えておくが良いねぇ~。意味があるかわからないけれどもねぇ~。だって、平等に接しないとだめだろう?くっくっく。』
殺意が溢れているとはこの事を言うのだろう。
殺すという気持ちが自称“博愛の悪魔ハピネス”から伝わってくる。
「そう。平等にね。」
『なんだい?不服かい?』
「同じ技を使って殺せなかった者と殺せた者。そこは平等に受けた結果じゃない?」
『ふむ。一理あるねぇ~。君の名前は?』
「玲よ。覚えて貰う必要は無いわ。」
『ふむふむ。中々面白いね。君ほどの力があれば、他のメンバーを救えたのではないかい?』
「無理はしない主義よ。で、“博愛の悪魔ハピネス”様はこのまま退席してもらう事は出来ないのかしら?」
『ほぉ。私に退場しろと?』
「いえいえ。退場では無いわ。退席よ。帰って頂く事はできないかしら?って事よ。」
『何故だい?何故私が帰らなければいけないのかねぇ~?』
首を傾げる禍々しい存在“博愛の悪魔ハピネス”。
私はようやく落ち着いて観察する事が出来る様になった。
玲ちゃんの言葉が圧倒的恐怖と拒絶感を和らげてくれているのかもしれない。
子供の様な大人の様な姿はピエロのようにも見えるし、貴族のようにも見える。
服から出ている顔は幼さを残した青年。
白い顔を半分の仮面が覆っている。
「ふふふ。帰って頂きたいのよ。私にも都合があるから。良いでしょ?“博愛の悪魔ハピネス”様。」
『ほぉ。この私に君の都合で譲れと言っているのかねぇ~?』
「譲れだなんて、そんな傲慢な事は言えないわ。お願いしているだけですよ。」
『くっくっく。邪神の使徒と分かっていてもその態度かねぇ~?』
「邪神の使徒だと分かったからですよ。」
『ほぉ。では君は繋がりがあると?』
「ええ。」
『証明はできるのかねぇ~?』
「ふふふ。良いでしょう。では場所を移しましょう。」
『ここですればいいではないかねぇ~?』
「それでは意味がなくなるわ。分かっておいででしょ?」
『ふむ。良かろう。私の平等はなされたからねぇ~。君の話に乗ってあげようねぇ~。』
「それは契約で良いですね?」
『抜け目ないねぇ~。良いだろう。契約だ』
玲ちゃんと“博愛の悪魔ハピネス”の間に強い光が差し込んだ。
その瞬間に私の脳に玲ちゃんとサラちゃんの声が聞えた。
『サラ。後は頼んだわよ。全速でこの場から退避して。』
『承知。』
それはホンの一瞬の間に交わされた言葉。
『だけどねぇ~。契約前に発動しているスキルや魔法はかいじょできないからねぇ~。』
「なっ?!」
ブワン!という感覚が私を襲う。
私の腕の中にいたポーラさんの身体が徐々に小さくなっていく。
既に意識は切り離されている様で、白目を剥いており口に出てはイケナイモノが溢れ出し始めた。
私は抵抗する為に魔力を体中に巡回させる。
身体全体に襲い来る圧力。
ポーラさんの身体はバスケットボールほどの大きさまで圧縮されてしまった。
「くっ!もう許さない!!」
『何が許さないのかねぇ~?!』
「サラ!」
『承知!我が眷属よ。集え!!』
「空間隔離!!」
辺りの声だけは聞こえる。
私は誰かに掴まれ壁際へと運ばれた。
運ばれた瞬間にふと私の全身を襲う圧力が開放された。
解放された安堵感からなのか、私の意識は遠くへと飛んでいった。
最後に見えたのは部屋の中央に渦巻く黒い渦と白い渦が重なり合い混ざり合う様子だけだった。
次回更新は
明日、2021年10月30日(土曜日)12時
よろしくお願いします。




